第32話 大西洋の情勢と前哨戦
日本艦隊の派遣決定
晃司と忠和が海軍兵学校から大和に帰還して約一週間後、日本海軍に重大な報せが届いた。
イギリスから、連合軍がフランス攻略の準備を完了し、日本の艦隊派遣を要請してきたのだ。
作戦室で山本五十六大将が口を開いた。
「私は日本防衛の任務を外れるわけにはいかない。今回は南雲忠一中将を日本艦隊の司令長官として派遣する。晃司、忠和、お前たちも南雲中将の旗下に入れ。旗艦は赤城だ」
晃司は少し表情を曇らせた。
「山本長官は、やはり参加されないのですね」
山本は苦笑を浮かべる。
「行きたいのはやまやまだ。しかし、中国やオーストラリアの動きも見逃せない。この国を離れるわけにはいかん。お前たちが俺の代わりに働いてくれ」
忠和は気を引き締めた。
「自分たちは、赤城にて南雲中将の命令に従い任務を遂行します」
「期待しているぞ。存分に力を発揮してこい」
赤城にて
赤城の艦橋で南雲忠一中将が二人を迎えた。
「岡本少佐、君の作戦立案力は既に知っている。そして渋野中尉、君の実績もニコバル作戦での活躍で耳にしている。存分に力を見せてくれ」
晃司は冷静に応じた。
「ヨーロッパの状況が史実通りか確認しつつ、的確な作戦を提案します」
忠和も頷く。
「今回も史実に沿った情報があれば、作戦成功に大きく寄与するでしょう」
ノルマンディー攻略と連合軍の協力
南雲率いる日本艦隊が大西洋に到着すると、連合軍がフランス攻略に向けて動き出していた。
イギリス、ソ連、カナダ、オーストラリアの各艦隊と共に、日本艦隊も連携し、ドイツ軍の守るフランスのノルマンディーへと進軍する。
当初、連合国側はアメリカの不参加や作戦準備不足のため、ノルマンディー上陸作戦を延期していた。だが、ドイツ軍の防御体制が手薄なノルマンディーに注目し、戦略的効果を期待してこの作戦に踏み切った。
ドイツ海軍は、Uボートを配置して大西洋の防御を固めようとしたが、大型艦艇はすでに北海に移され、小艦艇がわずかに残るのみだった。
忠和の提案
忠和は艦橋で南雲に進言した。
「長官、現地での対応を円滑に進めるため、高橋伊望中将の元に私を派遣してください。作戦を直接支援し、戦闘を優位に進めたいと思います」
南雲は顎に手をやりながら頷いた。
「確かに、君のような人材が前線で指揮を執るのは有益だ。岡本少佐、君もそう思うか?」
晃司は即座に応じた。
「高橋中将は私たちの正体を知っています。忠和の情報も最小限の説明で納得していただけるでしょう」
「よし、そうしよう」
南雲は高橋中将に宛てた書面を忠和に手渡した。
大西洋の戦い
南雲の指示で忠和が移動すると、日英連合艦隊とドイツ艦隊の戦闘が始まった。
零戦による挟撃戦術でドイツ軍の戦闘機を掃討。その後、ドイツの海上戦力に集中攻撃を加えた。
忠和と晃司が立案した作戦通り、ドイツ軍に大打撃を与えることに成功した。
戦闘後の評価
忠和が赤城に戻ると、南雲が笑みを浮かべた。
「素晴らしい成果だ。君たちの作戦は見事に功を奏したよ」
晃司は控えめに言った。
「史実が残っていたおかげです。それに、一花の知識も大きな助けになりました」
忠和も続ける。
「彼女の情報があったからこそ、戦略を立てやすかったのです」
南雲は感心した様子で頷いた。
「園田中尉の知識がここまで活きるとは。それに君たちの作戦立案能力も素晴らしい。この先も頼りにしているぞ」
晃司と忠和は頷き、次なる任務に備える決意を新たにした。
フランス解放に向けた戦いは、いよいよ本格的な局面を迎えようとしていた――。
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