第2話 世界の影

西暦1943年1月。冷え込みの厳しい冬空が広がる中、歴史は新たな局面を迎えようとしていた。


半年ほど前、岡本晃司と園田一花が未知の力により時空を越えてこの時代に転移して以来、彼らはそれぞれの任務に追われながらも、1940年代の混沌とした世界情勢に巻き込まれていった。


ヨーロッパの戦火

この時代、ヨーロッパは混乱の只中にあった。ドイツのナチス総統アドルフ・ヒトラーは、その野心的な政戦略を駆使してヨーロッパの大部分を手中に収めていた。イギリスは富国強兵に力を注ぎ、フランスやオランダなどの諸国はドイツの占領下に置かれていた。


ドイツはその膨張政策を止めることなく、ヨーロッパ各国に攻撃を仕掛けていた。特に、当初同盟を結んでいたソビエト連邦とは現在、激しい独ソ戦争の真っただ中にあった。ヒトラーはモスクワへの進軍を目指したものの、ソ連の過酷な寒波と広大な土地の制約により侵攻は難航していた。


一方のソ連は、地形と気候を活かした防衛戦を展開し、ドイツ軍をじわじわと消耗させていた。戦線は膠着状態に陥りながらも、両国の消耗戦は続いていた。


アジアの変転

アジアもまた、複雑な政治的動きに支配されていた。中国では、中華民国の蒋介石が表向きには国民党政府を率いていたが、その実態はソビエト共産党の影響下にあった。蒋介石の後継者と目された張学良が、蒋を捕らえて国共合作を強いる形となり、中国共産党が事実上、国民党の内部に浸透していた。


蒋介石はその息子・蒋経国がソ連に人質として取られていたため、ソ連の要求に従わざるを得なかった。これにより、ソ連は中国共産党を通じて間接的に中国を支配し、対日抗戦を煽る戦略を進めていた。


その一方で、日本はこれらの複雑な動きを察知し、アメリカやイギリスと協力して情報収集を進めた。特に、蒋経国がソ連に抑留されている事実を突き止めた日本は、この情報をアメリカに提供することで外交的な主導権を握ることを試みた。


近衛文麿の影謀

この時期、日本の元首相・近衛文麿が密かに動き出していた。彼は中国共産党の毛沢東と結託し、中華人民共和国の樹立を支援していた。毛沢東はスターリンからの支配から逃れるため、アメリカから密かに武器を調達し、独自の勢力を確立しつつあった。


近衛はその影響力を用いて中華人民共和国を枢軸国陣営に引き入れ、資源供給と軍事支援の見返りとしてドイツとイタリアからの協力を取り付けた。これにより、アジアの勢力図はさらに混沌を深めることとなった。


列強の思惑

アメリカは名目上、中立を保ちながらも、アジア情勢の行方を注視していた。日本やイギリスとの連携を強化する一方で、ソ連と中国共産党の動きを封じ込める策を講じていた。


一方、ヨーロッパではイギリスがソ連と連携し、富国強兵の準備が整い次第、ドイツへの挟撃を画策していた。戦局は徐々に、連合国と枢軸国の対立構図を明確にしつつあった。


彼らの新たな運命

岡本晃司と園田一花も、この激動の時代においてそれぞれの使命を果たしていた。彼らは現代の知識を武器に、この世界の中で暗躍する勢力や陰謀の解明に努めていた。晃司は日本軍の士官候補として活動し、一花は情報分析官として連合国側の動きを支援していた。


ある日、二人は共に新たな任務を命じられる。ドイツの動きを封じるための極秘作戦に参加することになったのだ。この作戦が成功すれば、戦局が大きく変わる可能性を秘めていた。


この時代の闇は深く、力の均衡は脆い。しかし、彼らの存在が未来の世界にどのような影響を与えるのか。それは、これから紡がれる物語の中で明らかになるだろう。

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