「積水アリス地面師詐欺事件」

だみんちゃん

プロローグ 「不思議の国からの復讐者」

## プロローグ 「不思議の国からの復讐者」


2025年6月、梅雨の晴れ間が覗く東京・五反田。

高層ビルが立ち並ぶこの街で、一つの大きな取引が進められようとしていた。


「本日は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます」


高級オフィスビルの最上階、応接室に響く落ち着いた声。

窓からは東京の街並みが一望でき、遠くには東京タワーの姿も見える。

テーブルを挟んで、スーツ姿の男女が向かい合っていた。


一方には、VTuberとして知られるだみんちゃん。

もう一方には、不動産会社の代表を名乗る中年の男性。

そして、その周りを取り巻く複数の関係者たち。


取引の対象は、五反田駅から徒歩5分。約2000平米の一等地。


取引額は63億円。


「では、最終確認に入らせていただきます」

だみんちゃんの顧問弁護士が、厚い書類の束をめくる音が静かに響く。


しかし、この場にいる誰もが知らなかった。

彼らの上を行く存在が、既に完璧な罠を仕掛けていたことを。


その存在の名は、積水アリス。

不思議の国から来たという謎めいた少女は、この瞬間も五反田の某所で、モニターを通して事態を見守っていた。


「ふふ...地面師の皆さん、お疲れ様です」


白いウサギのぬいぐるみを抱きながら、彼女は薄く笑みを浮かべる。

画面には、応接室の様子が映し出されている。

完璧な偽装を施した詐欺グループ。

しかし、その裏で積水アリスは更に巧妙な策を練り上げていた。


15歳。それは彼女が全てを失った年齢だった。

地面師の詐欺に遭い、不思議な国のお家を失う。

不思議の国で平和に暮らしていた少女の人生は、一瞬にして暗転した。


「詐欺師を騙す詐欺師...クロサギ。それが私の選んだ道」


積水アリスは立ち上がり、窓際に歩み寄る。

雨上がりの空に、虹が薄く浮かんでいた。


彼女の復讐は、既に始まっていた。

地面師グループが用意した偽装書類の裏に、より巧妙な罠を仕掛け。

銀行口座の流れを完璧にコントロールし、資金の行方を操作する準備は整っていた。


「トカゲのビルさん...私は必ず、全ての地面師から、人々の大切なものを取り戻してみせます」


腕時計が午後3時を指す。

取引の大詰めの時間が近づいていた。


積水アリスは再びモニターに目を向ける。

画面の中で、だみんちゃんが最後の署名を済ませようとしていた。

63億円の支払いが完了する瞬間。

その時、積水アリスの罠が発動する。


「さぁ、ショータイムの始まりです」


彼女は白いウサギのぬいぐるみを優しく撫でながら、静かに微笑んだ。


これは、不思議の国から来た少女による、

       現代の東京を舞台にした復讐劇の幕開けだった。


地面師たちは、まだ知らない。

彼らの前に立ちはだかる"積水アリス"が、どれほど恐ろしい存在なのかを。


梅雨の晴れ間に浮かぶ虹の向こうで、新たな戦いの序章が、今まさに始まろうとしていた。

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