第14話 一つだけに集中して

 結衣さんに真奈を見つけてもらおう、その間に傷の手当しないと·····。

 俺は父さんに手当てをしてもらう為に一階に行く。


「父さーん·····?」


 あれ、いないのか·····?

 柱に縛られていたはずの町長もいない····。


 俺は受付カウンターの近くにあった救急箱を見つけ、自分で治療することにした。


 とその時、角部屋の方面から怒鳴ってる声がかすかに聞こえてきた。

 俺はそっと耳をすませる·····。



「そろそろ知ってることを話してください!!」

「言うわけないだろ!! 早く鬼に潰されればいいんだ!!」



 あぁ、父さんは今、町長の事情聴取をしているのか。


 治療もなんとなくだけど終わったし、後二人を待つだけ·····。



 と、重い足音がたくさん近づいてくる。



「なんだなんだなんだ·····?!」


 窓の外を見ると、沢山の足音とともに、赤鬼が町役場を囲むように並んでいる姿が見えた。

 幸い、町役場の敷地内には入ってこれないみたいだ。


 状況を整理しながら俺が作戦を考えていると·····。


「おーい、たくとくーん」

「··········」


 真奈と結衣さんが階段から走って俺のところに来た。

 と、真奈が。


「ごめんなさい! 傷つけて いなくなって心配かけて·····ほんとごめんなさい·····!」


 真奈は深々と頭を下げ、俺に謝ってきた。


「ゲンコツ一発で許してやるっ」


 コツッ·····


 俺は頭を下げた真奈の頭に軽くゲンコツをした。

 真奈は頭を上げる·····。

 涙を流しながら。


「ご、ごめん! そんな強くしたつもりじゃなかったんだけど!」


 真奈は涙を拭いながら笑顔を見せる。


「··········ありがと」


 その笑顔に一瞬ドキッとしたが、俺は目を逸らして気持ちを落ち着かせる。


 それを見ていた結衣さんが話を切り出す。


「そうだ、真奈ちゃんと私が見た共通の夢があるんだけど·····」

「なんですか?」


「その、最終的に町が黒く染められて、全部が無になる夢を見たの·····それがホントに起こるかもしれないってことなの·····」


 黒く染められて無になる·····?

 この情報だけでは対策することができないので、頭の片隅に入れておくだけにしとこう。


「わかりました····他にも分かったら教えてください·····それより、今はこの鬼たちをどうにかしないと·····」


 そこで真奈が俺たちに聞いてきた。


「ねぇ、これって何鬼·····? 私この鬼ごっこの種類は知らないかも」


 たしかに俺も全く知らない。

 ケイドロでもないし····あ、囲い鬼とかあんのかな·····でもこんな鬼畜な遊びやるかな·····。


 みんなで考える中、結衣さんが少し自信なさそうに言う。


「もしかしたら今作った鬼ごっこなのかな·····? すごく鬼側だけ有利だし····いかにも子供が考えましたって感じしない?」


 たしかに結衣さんの言うとうりかもしれない。

 子供一人捕まえたのがキッカケになったのかは分からないが、子供達が鬼ごっこに勝ちたいという意思が伝わってくる。


「どちらにせよ、どこからも逃げれないよな····一体どうすれば·····」


 俺の独り言を隣で聞いていた真奈が、鬼の右手を握りしめながら提案する。


「私の鬼の力はたっくんを守る事だけに使う·····もう私の中にある感情でたっくんを傷つけないと誓う·····だから·····」


 真奈は玄関のドアの前に行き、鬼の右手でドアを触る。


「だから····このまま正面突破しよう!」

「え、え·····?」


 困惑する俺に対し、結衣さんはニコニコしながら真奈の所へ向かう。


 なにがどうゆう話でそうなったんだ·····?

 俺を守る為だけに使う·····とは·····?


 俺もとりあえず真奈のところに行き説明を求める。


「えと、つまりどうするの?」

「私と結衣さんで、走り抜けるたっくんを守る、それだけっ!」


 そんなことが出来るのか·····?

 俺は不安になりながら続けて質問する。


「結衣さんはわかる·····でも真奈はまだ右手の力を使うのは危ないんじゃ·····?」


 そんな俺の質問に、真奈は自信満々の笑顔をしながら答える。


「もう大丈夫! この力はたっくんの為だけに使うって誓ったから!」


 なるほど·····力を使う目的を一つだけに絞って扱いやすくするという作戦か·····!

 多分そうだと思う!


「もしかして、練習したのか?!」

「してないっ! だから一発勝負だよっ!」


 まじかよ。

 とりあえず他に選択肢は無さそうなので、俺はこの作戦に乗っかることにした。


「じゃあ私がドア開けたら、たっくんは本道りに行って右に曲がって走り続けて!」

「おけ·····え、なんで右? 交番がある左じゃないのか?」


 真奈はニヤケながら答える。


「小学校の屋上に二人目の子供がいかもしれないでしょ! ちょっと遠いけどっ!」

「て、天才か·····?!」


 小学校····真奈が青鬼に連れてかれた川沿いにあるんだよな·····。

 嫌な思い出がある場所だが、真奈の指示に従ってそこまで行こう·····。


「結衣さん、真奈·····死ぬなよ·····」

「絶対たっくんの後を追いかけるから、心配しないで」

「私は鬼に狙われないはずだから心配しないでっ」


 あ、忘れてた、結衣さんは角もあるちゃんとした緑鬼だから狙われないんだ。

 緑色は腕と足だけだけど。


「じゃあ開けるね·····」


 町役場の敷地のギリギリに並んでる赤鬼。

 どう頑張っても鬼とぶつかる事になるな。


 よし、俺は走る事だけに集中しよう、後のことは二人に任せた。




「走って!!」



 俺は真奈の合図で走る。


 いつでも金棒を振り下ろせるように待機している大きな赤鬼に向かって·····。

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