第6話 村長の誇り

(村長視点)


道場の床に響く重い足音。


漆黒の影を纏う者たちが、静かに、だが確実に迫ってくる。


「貴様の持つ白紙の本──それを差し出せ。」


村長は目を細め、木刀を握り直した。


「……なるほどな。目的はレオか。」


彼はすでに裏口へと駆け出しているはずだ。


ならば、自分の役目はただ一つ──


「ここで、お前たちを止める。」


虚無の手下が低く笑った。


「愚か者だ。貴様ごときが我らに勝てると?」


「勝てるかどうかじゃない。勝つんだよ。」


村長は深く息を吸い込み、木刀をゆっくりと構えた。


虚無の手下たちは一斉に動く。霧のように広がり、周囲を包み込む。


その瞬間──


村長の口が、呪文を紡いだ。


「ルミナス・フォース──」


木刀が輝く。


まばゆい光が刃を包み込み、道場の中を照らし出した。


「何ッ……!?」


虚無の手下たちの動きが止まる。


「光は影を祓う。」


村長の木刀が、剣へと変わった。


光の剣。


虚無の手下が慌てて距離を取る。しかし──


「遅い。」


村長は一瞬で踏み込み、剣を振り抜いた。


光の刃が虚無の手下を裂く。


「グァァァァァ!!!」


黒い霧が弾けるように消え去った。


「バカな……!」


生き残った手下が後ずさる。


「貴様、光の魔法を……!?」


村長は静かに剣を構え直す。


「お前たちの力はよく分かった。確かに強い。だが──」


剣の光がさらに強く輝く。


「影に飲まれるほど、私は弱くない。」


最後の手下が逃げようとした瞬間、村長の剣が放たれた。


光の閃光。


虚無の手下は、声を上げる間もなく消滅した。


──静寂が訪れる。


村長は、光を放っていた剣を見つめ、ゆっくりと息を吐いた。


「……レオ。お前は、どうする。」


彼は静かに呟いた。


光の剣が消え、ただの木刀へと戻る。


村長はゆっくりと道場の扉を開け、夜空を見上げた。


「行け、レオ。お前の旅は、まだ始まったばかりだ。」

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