友達じゃないと見られない
からから
友達じゃないと見られない
彼を振ったのは私の方からだった。別に深い意味があったわけじゃない。ただ、一緒に過ごしていても友達と変わらないなと思ったから振ったのだ。一緒にいて楽しいだけなら友達でいいじゃん。だから友達に戻ろうと言って振った。その時の彼のつらそうな顔は覚えている。
でも、しょうがないでしょ。もう友達としか見れないのに付き合い続ける方がひどくない? 私に縛り続けるくらいならとっとと次の恋に進んだ方がいい。そう思っていたのに、これは一体どういうことだろうか。
「やっぱり美月が忘れられません! 俺を友達だと思ったままでいいからもう一度付き合ってください!」
「……はあ」
目の前には私に向かって腰を九十度に曲げながら告白してくる透がいた。
振った後、友達に戻って何回か遊びに行った帰りにこれである。私だって最初は気遣って二人きりでは出かけなかった。でも何回か数を重ねて、もう大丈夫かなと二人きりで出かけた初回にこれだ。ため息だって吐きたくなる。
「いや」
「そこを何とか!」
「いやいや、友達にしか見れないヤツと付き合いたくないでしょ」
「それが美月だったら話は違うから! ってことは俺が良ければ美月は付き合ってくれるの!?」
「全然付き合わないけど」
「そんなぁ~!」
ショックを受けて頭を抱えながら地面に座り込む。こういう風にリアクションがオーバーなところが面白くて楽しいから友達の距離でいたいのに。
「ね、透」
「はい!」
バッと顔を上げて私を見上げてくる。その瞳は一筋の奇跡を望んでいるみたいで、真っ直ぐで、キラキラしていて不覚にも綺麗だなと思った。
「新しい恋人出来たら教えてね。私、その子と友達になれそうな気するから」
「い、いやだぁ~!!!!!」
私の言葉によって一瞬でキラキラしていた瞳に涙がにじむ。今にも零れだしそうなそれを見て、私は楽しくて笑い出してしまう。
ああ、私は透の付き合っていた時の幸せそうな顔より、友達に戻った今の泣きそうな顔が大好きなのだ!
友達じゃないと見られない からから @kirinomi
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