第44話

 神様は残酷だ。なぜ、なんども彼の死を見せつけるのだろう。

 うう、と漏れる嗚咽を必死で抑え、彼の手を探す。

 かけ布団に入った彼の手を握ると、ぎゅっと握り返された。


 え!?

 私は驚いてとびのいた。

 彼のまぶたがゆっくり開き、私を見た。


「ゾンビ!? 成仏して!」

 思わず叫ぶ。


「失礼だな」

 カズは苦笑した。

 私は梶尾さんを見た。


「昨日、やっと目が覚めたんだよ」

「ええ!?」

 驚きすぎて涙が引っ込んだ。

 梶尾さん、すごい誤解させる説明してきたよね?


「ジュース買って来るから」

 梶尾さんがそう言って部屋を出て行った。気をきかせてくれたのだろう。

 私は呆然と見送り、それから、カズを見た。

 カズはにっこりと笑って私を見つめ返す。


「ずっと君を想っていた。君を置いてなんていけない」

「嘘つき!」

 私はとっさに彼に怒った。


「死んだって言ったくせに!」

「俺も死んだと思ってたんだよ!」


「嘘つき、ボールペンって言ったくせに!」

 言いながら、彼の手にすがる。

 温かかった。ごつごつした感じも相変わらずだった。手首に包帯が巻かれていたし、手にも擦り傷はあったけど。

 でも、確かに彼の手だ。


 前言撤回。

 神様ありがとう!

 彼は繋いだ手をほどくと、私の頭を優しく撫でてくれた。


「俺を名実ともにパパにしてくれる?」

「あなた以外に誰がいるっていうの」

 また涙があふれた。

 私が泣き止むまで、彼は優しく頭を撫でてくれた。

 窓からは、明るい日差しが差し込んでいた。



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