大阪浪島のバカップル

ぺぺろん。

子どもほしい



「なあ、子どもほしい」


夜の居酒屋バイト終わり、帰り道のコンビニ前。

アイスを食べながら歩いてた由奈が、急にぶっ飛んだことを言い出した。


「は?」


隣を歩いてた陸は、思わず足を止める。


「子どもほしい」


由奈は真顔だった。


「いきなり何言ってん?」


「せやから、こどもバケツいっぱいほしい」


「それプリンたくさん食べる時の表現やん」


「私、今二十歳やん?」


由奈が言う


「うん、知っとる」


「せやろ? ほんなら、そろそろ野球チーム作れるくらい子どもほしいなぁって」


「ええええ……」


陸はアイスの棒を口にくわえたまま、由奈をガン見する。


「ちゃんと先発、中継ぎ、抑え揃えて、先発は中3日ローテーション組めるくらい子どもほしい」


「なんのペナントレースに参加するつもりやねん」


「せやから、今から作り始めんと間に合わへんやん」


「いやいや、俺まだバイトやで?」


「ちっ!」


「おい、舌打ちすな」


「ほな、早よ就職しろや」


「お前、フリーターに言うたらアカンことを簡単に言うな」


「陸の遺伝子を地に満ち溢れさせたいのに……」


「お前、父なる神か」


由奈は腕組みして考え込む。


「まぁ、就職せんでもええけど、せめて投資始めたら?」


「話飛びすぎやろ!!」


「だってさぁ、子ども10人くらい育てるなら、まあまあな資産は要るやん?」


「なんで両手いっぱい前提なん?」


「5対5で湘北対山王再現したい」


「ゴリ役の子が可哀想やろ!!」


陸は思わずデカめのツッコミを入れた。


「とりあえず結婚してからの話やろ、そういうのは」


「ほな結婚する?」


由奈が頬に手を当てて言う。


「待て待て待て待て」


陸は両手を前に出して、全力で止める。


「お前、結婚とか軽々しく言うなよ」


「えー、だって遺伝子を……」


「俺のヒトゲノムの話はええねん!!!!」


由奈は頬を膨らませる。


「ほな、せめて就職して?」


「あかんそれが1番辛い。やっぱヒトゲノムの話続けよか?」


「だってさぁ、子ども育てるのってお金かかるねんで?」


「知っとるわ……」


「うーん、ほな、とりあえず子どもは5年後くらいにしとこか?」


「いや、そもそも結婚するしないの議論がまだやんけ」


「いや、するやろ?」


「……いや、そらいつからするけど?」


「陸の子どもめっちゃ可愛いに決まってるやろなぁ」


「まぁ……そやな……」


「な? ほしいやろ?」


「……うーん……」


由奈がキラキラした目で見てくる。


「……まぁ、そのうち?」


陸がそう言うたら、由奈は満足げに頷いた。


「よっしゃ、そのうちってことで決定や!」


「決定すな」


「楽しみやなぁ、未来の野球チーム」


「だから、なんのペナントに出る気やねん……」

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