妹がやってきた

数金都夢(Hugo)Kirara3500

わたしは妹が本当は誰だったのかを知って号泣した

 ある日の授業中、わたしは先生に突然名指しされた。聞かされた内容は講義内容とかテストの点数とかではなかった。

「ママが危ないからすぐ病院に行って」

わたしは校門に来たタクシーに飛び乗って病院に急行した。

わたしは時間があるときはずっと看病してきたママになんとか思いを伝えながら彼女の手をずっと握っていた。


 次にママに会ったとき、彼女は公民館のホールの奥に止まっている台車に載せられた半開きの鉄の箱の中で、子宮頸がんをわずらっての長い闘病生活を感じさせない表情で眠っていた。そしてママはその箱ごと芝生に掘られた穴の中に吸い込まれていった。


 それからしばらくして、うちに中学生くらいの年齢の見た目の妹がやってきた。

パパは「養子を引き取ったんだよ」という以外言葉を濁した。パパの顔をよく見るとなぜか目が赤くなっていた。

彼女の見た目は数年前のわたしそっくり。だけど彼女が何かを食べているのを一度も見たことはなかった。

わたしはそんな妹と一緒に勉強して遊んだ。

わたしは大学に入ってからも妹の補習や受験勉強にも付き合った。

わたしが卒業して大都会の会社に就職した後も地方都市の大学に通っている妹は実家に残った。


 それから一年後にわたしは実家に帰った。その時、パパから渡されたママの遺言書を読んで洗面器―杯分くらいの涙を流した。

それを見た妹は「どうしたの?」とわたしに聞いた。

わたしは彼女に真意を気づかれないようにするつもりで、

「ううん、なんでもない」

と答えた。

でもそのとき妹に、それが入っていた封筒を見られてしまって、

「私は本当は誰なのかやっとわかったみたいだね」

と、笑顔で言われたのを聞いてわたしの目から再び涙があふれた。

「勉強もね、むしろ私から教えたかったくらいなのよ。だけど子供の姿をずっと演じてた」

わたしが幼稚園に行く前の小さい子供だった頃、事情を全く知らずにママに、

「わたし、妹がほしいの」

と口癖のように言っていたのを本当に申し訳なく思った。

もしわたしがそんなことを言わなかったらきっとママは本来あるべき姿で機械の体をもって帰ってきたんだと思うと。



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