男性への取材の音声をまとめたもの
これは当時付き合ってた彼女と夜景を見に行こうって話になって、自分は地元だったんですが彼女は大学でこっちに引っ越してきた子で地元では有名だったその展望台に連れてってあげたんです。わかると思いますけど、場所としては車で山を少し登ったところにあり、高さ300mぐらいある廃れた展望台で、まぁカップルや男女数名がよく訪れる人気なスポットでした。
そこから見る景色は街の灯りが宝石ようにキラキラと輝いて見える場所だったんですよ。
彼女もそれを見てとても綺麗と目を輝かせてたのを覚えています。まぁ自分は見慣れていたんですけど。
11月頃のことだったので山の方っていうこともあり、肌寒くなってきたので、彼女にそろそろ帰ろうといって展望台を後にしようとしました。立ち位置から離れ階段に向かおうと、夜っていうこともあり階段から落ちる危険性もあるためスマホのライトを登った時と同じようにつけたとき、誰かが昇ってくる音が聞こえてきたんです。夜景を見に来た人かなっとまぁそれしかいないか思い、昇ってくる音が段々と近づき、昇り終えたその人の姿が見えました。
1人の女性でした。体型は細く、髪は肩ぐらいまで伸ばしており、赤っぽい服装でスカートを履いてました。夜景スポットに1人で来る人は珍しいなと思ったんですが、仕事とかのストレス解消とかにもなるんかなっと最初は思ってたんです。でも妙だったんです。その人両手に花束を抱えていたんです。白をイメージとしたように作られた花束で、夜っていうこともあり、白く光ってるように感じました。だれかからもらったものなのか、退社祝いとか、プロポーズとも思ったんですが、なんか変だなって感じました。隣にいる彼女も不思議そうに見ており、その女性は自分たちのいる方向にゆっくりと歩き始め、自分たちに目もくれず通り過ぎ、さっきまで自分たちが景色を見てた位置で止まり、後ろ姿ですが景色をじっと見つめてるようでした。20秒ぐらいたってその女性下を向いたんです。そして、体をかがませて持ってた花束をそこにソッと置いたんです。
そして、手を合わせ始めたんです。それは墓参りでよく見る光景のように、亡くなった人を祈るように。
自分は驚いて、戸惑いました。誰かここで亡くなった人がいるのかと、
いや地元でもそんな話きいたことはなく、あったとしたら田舎のすごく小さい町なのですぐに広まるはずです。彼女も自分の服をぎゅっと握り怯えだして、自分も今すぐこの場所から立ち去りたかったのですが、どうしても気になり、女性に話しかけました。
「誰かここで亡くなったんですか?」
少し沈黙が続き、女性が喋りました。
「いいえ、誰もいませんよ。」
「いや、まだ誰もいませんよの方がいいですね。」
ボソッと笑い混じりに喋りました。それは今か今かと楽しみにしているような口調で、自分ではよくわかりませんでした。彼女も怖がりながらも不思議そうな顔をしてました。
そして、その女性は拝んでいた手を下ろし、すっと立ち上がり背中は動かさず横顔を自分たちのほうにむけました。
「こうすれば私、寂しくなくなると思うんですよ。」「だからーーーーーで、す。」
最後は何を言ってるのか聞き取れず、耳にノイズが入ったような感じで、何故か自分は反射的にスマホのライトを女性の顔に向け、その女性の顔をしっかりと見てしまいました。その横顔は、人間離れしてる笑みで、口を無理やり横に尖らせ、ピクピクしており、目はとても黒く、闇そのものをふつふつとイメージさせるような目をしてました。その時ふと思ったんです。
あっ、この人、生きてないなって
それを感じた瞬間、彼女の手を強く掴み一目散でその場を離れ車に乗りこみ、下まで降りました。
そこから気が動転しており、山を下っている記憶が曖昧でコンビニまで到着し助手席にいる彼女といったん状況を理解しようと話そうと思いましたが彼女がすごく怯えており、話すことなく家に送り届けました。
その後は彼女とはしばらく付き合ってはいたのですが、この話は一切しないようお互いで言ったのではありませんが話してはいけないみたいな暗黙のルールみたいな感じで、二度とあの展望台には行きませんでした。
その後、彼女とも別れ、大学も無事卒業し、地元で就職っていうのも嫌だったんで、東京で就職をはじめ無事正社員になり、仕事を覚えるのに必死な毎日でした。会社もお盆休みにはいり、実家に帰省することになったんです。すると両親からあることを伝えられました。
「夜景が綺麗なスポットで有名だった展望台あるじゃない」
嫌な記憶が蘇りました。少し動揺しながら
「うん」と返事をしたら
「あそこ自殺が多発してるらしいわよ」
それを言われた瞬間誰かが指で背筋をすっーとやられたように体がゾクッとなりました。
その時はじめて、私はあの展望台で自殺者がでていることを知りました。自分が東京に行ってる間にも15人以上の人達がそこから飛び降りをしていると言ってました。
それを聞き、少し時間が経ちふと女性が言ったあの時の言葉が脳裏に横切ったとき耳元で、
「今は寂しくありません(笑)」
あの女性の声が聞こえたんです。とても嬉しそうな、
そんな経験もあって、自分わかったんですよ。
最初は自分も自殺の名所って、その場所で自殺があったことで、自殺願望者がそこに立ち寄り自殺をし、それが拡散されることで生まれると思っていたのです。
でも、決してそうではないんですよ。
そこに何か自殺があったような細工をしただけでも「あっーここで自殺した人いるんだ」っていう情報が拡散され、自殺志願者が訪れるようになるんですよ。
彼女も寂しい気持ちからこんなろくでもない考えを思いついたんだと私は思います。
ほんとに勘弁して欲しいでよ。
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