第11話 合流

「……………ん?」


「??どうかしましたか?」



 風呂上がりに身体を拭かれるのを待っていた“叔父上”様の手にバスタオルを持たせ『自分の事はご自身で出来る様になって下さい!』と伝えた。


 今後の為にもこれとても大事!


 フリーズしていないで、さっさと身体を拭いて服を着てくれ。


 それなのに“叔父上”様が、自分の手や足、顔を触って驚いている。まだ髭を剃ったのを気にしているのか?



「……傷が……治った?……治ってる!」


「えっ?!治せるんですか?!!」


「いや、私は治せん!!」



 ガクッと、崩れやすくなった俺の膝がまた折れた。治癒が出来るのかと期待したじゃないか!


 髭のなくなった顎に手を当て“叔父上”様が、暫く考え込んで話を続けた。



「……きっと、あの『オンセンノモト』が私の傷を癒したのだと思う」


「はぁ?あれはただの『温泉の素』ですよ?血行が良くなったり、多少肌に潤いを与えたりはしても、それ以上の効果は……」


「“ただの”ではないのだよ。良く考えてみたまえ。『オンセンノモト』はこの国はおろか何処を探しても見つけられない『異世界の品物』だ。その効果はきっと君達が召喚されてスキルを得た様に、その性質に変化を齎したのだろう。だだ、この事に彼奴等が気付いたら、間違い無く君を留め置こうとするだろうな……。それに、先に飲ませて貰った『痛み止め』と『不思議水』。この2つも、君の認識と異なる効果が出た可能性が高いぞ。私の今の状態がその証明だ」



 ええ〜……と………って事は、『ばぁちゃんち』にしろ『我が家』にしろ、元から部屋にあった物は本来の効果が異世界仕様に変わってるって思わなきゃ駄目なのか?


 あれ?まさか食い物は平気だよな?!俺だけじゃなく、2人にも食べさせてるのに!



「あ、あの…実はもう1つの部屋に一緒に来た子供達を待たせているんです。時間もだいぶ経ってるんで、体調が回復したなら移動しても良いですか?」


「そうだったのか?子供達だけでは心配だろう。私は大丈夫だから、直ぐに移動しよう」



 まだ、細い手足でヨタヨタと力が足りずに覚束ない様子だが、壁に手を付ければ1人でもゆっくり歩けるくらいに“叔父上”様は回復していた。


 あんなに衰弱していたのに………。

 しかもめっちゃ臭かっのに、綺麗に洗って髭を剃ったらイケオジに変身したしよ。

 悔しい事に、着てるのが俺のTシャツとスボンでも、格好良く見える……あ、スボンの丈がだいぶ足りない……………。


 多少モヤッとしたが、治ったのは良い事だ。それに、風呂に時間が掛かってしまったから、大樹くん達も流石に起きてるはず。早く『ばぁちゃんち』へ移ろう。


 ドアから外を確認して、“叔父上”様を先に移動させ『我が家』を閉じた。


 『ばぁちゃんち』は入口から家まで畑があって、手を添える場所が無いから、“叔父上”様を支える様にゆっくりと家へ向かう。



「おじちゃん!!おかえり!!」


「おかえりぃ!」


「チュチュッ!」



 2人が駆け寄って来たが、俺が支えている“叔父上”様を見て立ち止まる。

 

 知らない人の登場に、自然と警戒したみたいだ。



「……おお、利発そうな子等だな。君の親族の子か?」


「いえ、召喚された後に知り合った子達です。お兄ちゃんの方が大樹くん、弟が幸樹くんです。ああ!俺も名乗ってなかった!!挨拶が遅くなってすみません、俺は箱守 優志……呼びにくいなら、“ゆうし”でも“ゆう”でも好きに呼んで下さい。あと、大樹くんの肩に乗ってるのが、ハイドラットのチュ太です」


「丁寧な挨拶痛み入る……。私はノックス・フリートジル。この国の現王の弟ではあるが、今は大した権力を持ってないんだよ。だが、君等の為に出来うる協力は惜しまないつもりだ」



 おおお……“叔父上”様、やっぱり偉い人だった。って事は、あの演説王子が現王の息子か?

 そんな権力持ったヤバいヤツとは速攻でさよならしたいぞ。


 例え今の“叔父上”様に大した権力が無くても、今いるこの場所の事はよくご存知でしょ?

 可能なら、今日の内に逃げ出したいんだ。


 先ずはその協力をお願いしよう。



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