第54話 アリーシア魔眼吻合
「ジョイナス王太子!無事ですか?」
「エクロート?返事をしろ」
私達はオークの森の変貌に啞然としていた。森の入り口辺りで大声でふたりを呼んでみるが返事すらない。
「アリーシア行けそうか?」
リント隊長はすでに抜刀して魔剣を掲げている。
「もちろんです。私浄化を始めますから、そうだ。ガロンに空から浄化してもらいましょう」
私はガロンに呼びかける。
「ガロン~森を浄化して」
「ぎゅうぅ、るぎゅぅぅぅ~」(任せて~行くよ~)
「ガロンも浄化するそうです」
「ククッ。いやすまん。こんな時だが何だか息ピッタリだと思って…」
「ええ、私だって驚いてますよ。あんな大きな赤竜と相棒なんて…どうせなら隊長との方がどんなにいいか」
「アリーシア今なんて?」
「やだ私ったら…私リント隊長好きです。ずっと言おうと思ってたんですけど何だかチャンスを逃しちゃって…」
隊長は一度転びそうになった。そして一度きちんと姿勢を正して聞いた。
「今なんて言った?俺を好きって言わなかったか?いや、俺の勘違いならいいんだ。こんな状況だ。空耳が聞こえてもおかしくはないからな、ハハハすまん。もうなんか俺てんぱっちゃって!!」
「もう、隊長。しっかりして下さい。好きです」
私は今度こそと隊長と面と向かってはっきり言う。
「俺も好きだ。アリーシア…」
隊長の顔がまじかに迫って来て…唇に暖かいものがふれた。
「うんっ…」
「もっとだ」
彼の声と吐息が肌にかかって、今度はぐっと腰を抱き寄せられて激しく唇を重ねられた。
彼のミントのような香りが鼻腔をくすぐり、唇に熱い粘膜がこすれて甘い感覚が背筋を伝う。
無我夢中で隊長の首に縋りつくように腕を絡ませると隊長の逞しい腕が私を丸ごと包み込んだ。
「ありーしあ…もう離さない。愛してる。どうか俺と結婚してくれ」
唇から離れたと思ったらすぐに耳朶にその感触が戻って来て愛の言葉を囁かれる。
私の脳芯は痺れて声が出ない。
私は絡ませた手で力いっぱい隊長を抱き寄せてこくんと頷いた。
「リントか!驚くだろ!」エクロートさんだった。
私達はバツが悪くいきなりパッと距離を置く。
「エクロートさん、あの王太子は?魔源石はどうなったんです?」
「おい、ここで抱き合ってたお前たちが言うか?ああ。大丈夫だ。魔源石を置き換えたんだ。その代りほら、これを見ろ。ひどいよな。人間の薄汚い心のせいでこんなになってしまって…」
エクロートさんは取り換えた魔源石を見せた。
「はぁ~ほんとにひどいですね。これもすべて人間の悪い行いの証ですね…」
3人でがっくりなる。
「でも、大丈夫ですよ。キルベートに持って帰りましょう。あの女神を祀った場所できっとまた元の美しい魔源石になります。私、毎日浄化しますガロンにも手伝ってもらいます。だからきっと大丈夫です」
「ああ、そうだな。俺達が責任をもって魔源石の管理をする。もし俺たちの世代でだめなら次の世代に引き継いで…」リント隊長も賛成してくれる。
「リント。お前それよりアリーシアをどうする気だ?次世代?お前アリーシアを孕ませる気か?もしかしてもう?おい、どうなんだ?」
「エクロート諦めろ。アリーシアは俺と結婚するって言ってくれたんだ。絶対手放さないからな」
「アリーシアそうなのか?」
「ええ、エクロートさんのご好意に添えなくてすみません」
「それって俺のプロポーズにもって事?」
「ジョイナス王太子!無事です?」
「もちろんだ。それよりアリーシアさっきの話の続きだけど…俺の目を見ろ!」
いきなりジョイナスがアリーシアの顎を掴んで目を合わせた。
カチッと妙な音がした気がしてアリーシアの目が座る。
魔眼が吻合した。
「アリーシア本当のことを言って。いいね」
吻合したアリーシアが嘘をつけるはずもなく…
「実は私イエルハルド国の王女なんです。母は最期に私を次女だったクレアに預けて助け出されたんです。私はキルベートの教会で孤児として育って20歳になるまでそんな事知らなかったんです。でも、ガロンと偶然繋がって話が分かるようになるとガロンが教えてくれてそれで知ったんです。でも、だからってコルプス帝国をどうにかしようとか思っていません。ただあの神殿を立て直して魔源石を浄化して行ければと思っています」
(ああ…言ってしまった。リント隊長引きますよね?どうしよう…)
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