第43話 魔樹海一気に浄化です


 翌日騎士隊員が魔樹海を確認に行った。


 すると昨日浄化したところはそのまま美しい木々が生い茂り鳥がさえずってもいた事に驚いた。


 だが、まだ魔樹海部分が大半のため、せっかく魔獣の獣化がとけたイノシシが魔獣に襲われたらしく無残な姿になっているのがわかった。


 隊員はすぐにそのことを隊長に報告した。


 リント隊長は浄化の事はまだバカルに報告していなかった。


 王城内での不穏な動きやロイド王太子の事は辺境にまで届いている。迂闊な報告はしたくなかったのだ。



 隊員の報告を受けてこれは一気に浄化をした方がいいと判断する。


 早速アリーシアにいるかどうか相談した。


 アリーシアは診療所を休むことになるが長い目で見れば魔樹海をどうにかする方がいいと判断した。


 そこからは話が早かった。


 ガロンの隊長もすこぶるよく毎日浄化を行う事もアリーシアに確認してもらうと問題ない事が分かった。


 そして12ブロックを毎日1ブロックずつ半月ほどかけて徹底的に浄化していった。


 ガロンは空から私は地上から、それを助けるように騎士隊員だけでなくたくさんの人が作業に加わった。


 そこには冒険者や村人や街の人たちの姿もあった。


 そしてとうとう最後の1ブロックの浄化が終わり魔樹海は姿を消した。


 そこにはパニア村の人や教会のロベルト神官やクレア。そしてキルヘン辺境伯も。他にもパシュと他の冒険者もいた。



 そして樹海の中にあった王宮とその中にある神殿が発見された。


 王宮は魔樹海のほぼ中央にあって入り口から王宮に向かう道であっただろう部分は草が生い茂ってはいたがその草を刈り取ると何とか石畳らしきものが現れた。


 すると今まで一番後ろの方にいた辺境伯がしゃしゃり出た。


 「いや、こうやって見るといたわしいと言うか惨めと言うか…滅んで20数年こんな所に王宮があったとはねぇ」


 キルヘン辺境伯は周りをきょろきょろ見渡しながら見下すような視線でそれらを見ている。


 リント隊長が小さく舌打ちをした。


 「キルヘン辺境伯。それは言い過ぎというものでしょう。イエルハルド国はここに確かに存在していた。ここにはその名残が残っている。20数年経ってもその歴史を軽んじるものではないはずです」


 私は隊長の言葉に胸が熱くなる。私がイエルハルド国の王女だと彼は知るはずがないのに、彼がそんな事を言ったことに驚き阻止てうれしく思う。


 そう確かにここには私の家族が住んでいたのだから…



 「さあ、そろそろ行こうか」隊長がそう声をかけるとみんなが王宮を目指した。


 アリーシアやリント隊長。それに騎士隊員や冒険者、村の人たちが後に続く。辺境伯はめんどくさそうにゆっくりついて来る。



 私はクレアにその前日王宮のことを聞いていた。


 王宮の中に古代の神殿があり女神イルヴァが祀られているが神殿はとにかく古く何度か修繕をして残っているのはその祭壇とそれを囲む小さな建物だと。


 そしてその神殿には女王となった女性だけが立ち入れる。


 だから女王以外は神殿の中がどのようになっているのかは知らないらしい。


 王宮もそれほど大きいものではなく他の国に比べるとかなり質素だろうと聞いた。


 王族と言ってもイエルハルド国事態がそれほど人の数が多くなく貴族は王族関係者だけで、女王の伴侶はその時々で違った。例えば近衛兵だったり文官だったり、フローラの夫となったのは元彼女の近衛兵だったリジェクという平民だった。


 代々のお墓も王宮の中にありそこに王族はすべて埋葬されると言うものだった。


 フローラとリジェクが自害して果てたのちコルプス軍は王宮や神殿を荒らすとすぐに立ち去った。


 その後でクレアや王宮で働いていて難を逃れたもの達が王宮で亡くなっていた人たちを埋葬した。


 その時神殿には誰も入ろうとはしなかった。いや、入ってはいけないと思ったそうだ。


 それにコルプス軍に荒らされておりもう何も残ってないと思われた。


 人々は女王の死を嘆き悲しむしかなかった。


 その後はコルプス帝国の支配下になり王宮は朽ち、樹海は瘴気に溢れ魔樹海になって行った。


 だから王宮は相当荒れているだろうと思われた。だが、せめて祖先の墓に花を手向けられればと思っていた。


 別に王族のお墓に花を手向けることはおかしい事ではないだろうと。



 現れた石畳は真っ直ぐ王宮に向かっていた。


 20数年前、この道を馬車が走り人が行きかい、美しい森の景色に目を奪われ豊かで幸せな日々がここにはあったのだ。


 昔を知る人は鼻をすすりながら前に進んだ。


 若い騎士隊員や冒険者たちは美しく変貌した自然や生き物たちを愛しむようにそれを楽しんだ。


 私は樹海の美しさに感激しながらもここで起きた悲惨な両親の死を悼まずにはいられなかった。


 (ああ…一目でいい会いたかった。お父様、お母様。私はやっと帰って来ました。あなた達が救ってくれたアリーシアです。どうか心安らかに…憎しみや争いで穢れた樹海もガロンのおかげでこうやって元に戻りました。


 これからはこの美しい樹海が二度と穢れる事のないように私が守って行きますから安心して下さいね…)


 私は心からそう思った。


 

 その頃クレアはエクロートに手紙を送っていた。


 アリーシアにイエルハルド国の王女だと言う事を話した事や、ガロンと繋がって魔力が覚醒して魔樹海の浄化を始めた事も、それがものすごい効果を表して魔獣は元の生物に戻り昔の美しい樹海が取り戻されている事も一緒に報告した。


 


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