無機質であるはずの化学結合。それがこんなにも、官能的なドラマに満ちている。否応なしに、森羅万象すべての物質に官能の世界がある、そんな気がしてしまう。いや、きっとあるにちがいない。読後には、自分の身の回りが、きらきらと輝いて見えるのだ。こんな読後感を持つ官能小説、滅多にお目にかかることはない。この作品はそんな、稀有な小説だ。