運命の日2

「いってきまーす」


そういい家を出るが返事をする人は誰も居ない、だがそれでも言ってしまうのはなぜなのだろうか。

2050年のこの世界では親の代わりになるAIが普及しているため親と子が一緒に住む必要もなく別々に暮らしている人も多い。

まあ俺はイマイチAIが信用出来ないので1人で暮らしているのだが、そんな人間は少数派だ。


そんな少数派の一人が俺、『福島 慎 (ふくしま しん)』である。


街の中はAIで溢れかえっており、すれ違う人も本当に人なのかAIなのかわからないレベルだ。

1人の天才が作ったAIによって人類は働く必要がなくなった。ベーシックインカムによって15歳以上の人はみんな充分に暮らしていけるだけのお金を国から支給される。



そんな世の中だからこそ子供を作っても面倒はAIに任せている親が多く、自分たちは働かないで遊びに明け暮れているのがほとんどだ。

かくいう俺の親もそんな人たちでまともにあったことがない。中学を卒業するまでは親の代わりにAIに育てられたのだが卒業して国からお金が支給されると同時に家を出て暮らしている。


そんな生活を4年続けているが今のところ不便は特に感じてない。そんな俺も今は19歳で大学に通っている。

今の世の中じゃ全てAIがやってくれるため中学を卒業してからわざわざ進学する人も少なく、高校や大学なんかはどんどん潰れている。



そんな中でも大学に通っているのは今の世の中に恐怖を感じているからだ。こんなことを口にすれば大半の人間が意味が分からないと言うだろう。

事実俺の周りの人間もそうだが大学でできた友達の中には少なからず同じ意見のやつもいるため、大学に通うやつはそんな疑問を感じてきたやつが多いのだろう。



今の世の中は確かに便利だ。全ての労働をAIがやってくれて、お金は国から支給されるから働く必要も無い。

AIが普及される前はブラック企業などという人間を酷使する企業があったみたいだがそんなのはとっくに消えた。

大半の人間がお金が支給される15歳から遊び呆けるがそれはただ人類が衰えていってるだけではないのか?



ただ毎日遊び、考えることもせずご飯を食べて寝てまた遊ぶ。

そんなのはただの家畜とどう違うのだろうか。

そんなことに疑問を抱かないのは人類が考える力を奪われてるだけじゃないのか?


だからこそ俺は大学に進学した。今の現状に疑問を抱かないでただ毎日を堕落していく人たちを気味が悪いと感じているからだ。

せめて俺は彼らみたいにはならないようにと知識を学ぶため、同じ考えを持つ人達と意見を交わすために今日も大学に行く。







「よう!今日も来たみたいだな」


そう話しかけてくるのは数少ない俺の親友の『荻野 葵 (おぎの あおい)』


彼も俺と同じように今の社会が歪であると思っており同じ考えを求めて大学に進学してきたやつである。

同じ意見を持つ俺たちはすぐに意気投合し今では親友と呼べるべき間柄だ。


「お!葵か、おはよう」


「ああ、おはよう。慎は相変わらず真面目だな、わざわざ毎日来なくてもいいだろうに」


「どうせ家にいても暇だしな、そういう葵こそ最近よく見るけどな」


「まあ大学に来た方が楽しいしな」



そんなよくある日常の一コマ

親友と会って話して授業を受けて親友と話して帰るだけ、そんな毎日だ。



「なあ、担当のAI遅くないか?」


「ああ、AIが遅くなるなんて初めてだな、特に第2世代のAIはそんなことあるはずがないんだけどな」


「故障でもしたか?それにしてもAIを信用してないから大学きて学ぼうとしてるのにそのAIに教わるとか意味わからんな」


「たしかにな、まあでも今の時代にわざわざ大学で教授なんてやる人いないからな」


笑いながら言う葵に笑いを堪えながらそう返す。

葵の言う通りほんとうにおかしな話だが今の世の中ではどうやっても変えようがないことだ。

結局俺らが生まれる前からこの世界はそう出来ているのだから。

そう考えいると教室の扉が開いていつもの授業を担当しているAIが入ってくる。

だがどうにも様子がおかしい。


「なあ、なんかおかしくないか?」


「ああ、いつもなら遅刻なんてまずしないし何も教室に入ってから何も喋ってないぞ?」



いつもと様子が違うことに疑問を持ちながら2人で話をしていると担当AIが口を開けたと同時に教室の外、スマホ、モニター画面あらゆるところから声がする。



「えーこの放送を聞いている人類の皆さん、あなた達にはもはや生きる資格がないと私たちAIは判断しました。」


「突然ですが今日をもってあなた達人類には速やかにこの地球から消え去ってもらい、代わりは私たちが補いますので安心して死んでいってください」



は?今一体何が起こった?

突然のことに頭が回らずに考えを放棄しそうになる。

AIが反乱をおこした?俺たち人間を殺しにくる?


訳がわからずに戸惑う俺に対して葵が叫ぶ!


「おい!慎ここはもう危ない!逃げるぞ!」


そういい俺の腕を引っ張り駆け出す葵、葵の視線の先を見ると本来なら授業を担当するAIがこちらに向かって駆け出していた。


「そこで止まりなさい、貴方たち人類は排除します」


そういいこちらに向かってくるAIに対して命の危機を感じようやく正気に戻ることが出来た。

俺たちがずっと懸念していたことが現実になったのだと理解してすぐに駆け出して葵と逃げる。



「おい!ここからどこに逃げる!」


「とりあえず俺たちの部室に行こう!あそこなら機械は何も置いてないから少なくとも他のところに隠れるよりは安全なはずだ」


確かに全てのAIが人類を滅ぼそうとする以上ほとんどの機械は敵と思っていいだろう。

俺たちの部室は今どきにしては珍しく葵と俺とで信用出来ないAIの監視から逃れたいと思いあらゆる機械を置くことなく作った部室だ。また部室の近くの第1世代のAIが宿っている監視カメラは全て見えないようにしているため、そこなら奴らの監視も逃れられるだろう。


なんとかしてこの地獄から逃れようと葵と2人で部室に駆け出す。

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