第2話

私たち4人は、目を見開いたまま身体が固まってしまう。


花宮組の御子息ごしそくと結婚……!?


「お、おやじ。それは強制なのか?」


「んー⋯。強制ではない」


「おじさん。その話、本当なの?」


「本当だ」


「⋯そうなんですか⋯」


「おやじ。結婚なんて早すぎませんか?それに、きっと海は自分が決めた人と結婚したいはずです」


「確かに空の言うとおりだな。海、この結婚についてどう思う?」


突然のことで、まだ頭が混乱してるけど…。


…結婚相手を誰かに決められるより。


「…私は、自分で決めた人と結婚したいです」


「そうか、そうだよな。分かった。じゃあ、このことは白紙にしてやる」


おじさんは、そうあっさりと言い、少し拍子抜けしてしまう。


「あ、ありが⋯⋯」


「ただし!18歳になるまでに恋人を作ること。もしできなかったら、花宮組の御子息と結婚することになるからな」


やっぱ、そう簡単には白紙にならないよね……。


「⋯は、はい⋯」


「あと、1度だけでいい。聖雲くんに会ってくれないか?考えが変わるかもしれないしな」


「分かりました」


「また会う日が決まったら伝えるよ。あ、海の補佐の霞天かずまも連れていくから、彼にも伝えといてくれるか?」


「はい」




居間から出ると、晴たちが勢いよく話しかけてくる。


「海!結婚するのか?!」

「好きな人いるのか?」

「恋人作れそう?」


「ちょ、ちょ、ちょっと!同時に話しかけてこないでよ。⋯自分で何とかするから。心配しないで」


「…はーい」


「ていうか、花宮聖雲って花宮組の若頭だよな?」


「え、そうなの!?」


晴の言葉に、驚くとともに緊張が押し寄せる。


「うん」


「そ、そうなんだ⋯」


「頑張れよ」


「…ありがと」




自分の部屋に入り、ベッドに寝転びながら花宮組の若頭との結婚について考えた。


花宮、聖雲、だったっけ。


そういえば、年っていくつなんだろう。


同い年くらいかな?


その前に、若頭って⋯⋯。


どんな人なんだろう⋯⋯。


それに…―――。




――――…。


「⋯ょう、お嬢!」


私を呼ぶ声が聞こえ、勢いよくベッドから起き上がる。


「え!?何っ?」


「お、お嬢。夕食の準備ができました」


「…あ、そうなんだ。ありがと、霞天さん」


お見合いのことを考えてるうちに、いつの間にか寝ちゃってたんだ。


結婚のことは、また後で考えよう。


居間に着くと、自分の席に座る。


「全員揃ったな。では、いただきます」


「いただきます!」


声を合わせて言い、一斉いっせいに食べ始めた。


「空たち、今日の学校はどうだった?」


毎日おじさんは夕食の時に、この言葉を言う。


「俺は特に何もなかったですよ。いつも通りです」


「俺は⋯⋯、覚えてないや」


寝てたからでしょ。


「僕は楽しかったですよ」


「私は⋯⋯、私もいつも通り、楽しかったです」


「⋯そうか」


あ、やば。


何かあったって気づかれたかも。


昔からおじさんは勘がいい。


だからよく、何かあった時に気づかれる。


「あ、そうだ海。聖雲くんと会う日決まったぞ」


は、早くないっ!?


「組長!ちょっと待ってください。なぜ花宮組の若頭とお嬢が会うんですか?」


「あれ。海、まだ霞天に言ってなかったのか?」


「すみません。まだ伝えてませんでした」


「そうか。じゃあ、私から説明しよう。聖雲くんと会うのは、お見合いをするためだ」


「お見合い!?お、お嬢は結婚するんですか?」


「いや、まだ決まってはいない。だが、結婚するかどうかは、海にかかっている」


「そうなんですか」


何だか急に、ドクドクと緊張してしまう。


「それで、会う日だけど、海の誕生日の翌日に会おうと思ってる。いいか?」


「はい、分かりました」


そういえば、もうすぐ私の誕生日だ。


楽しみだけど、そんなこと考えてる暇はなさそうだな。


いろんなことを考えているうちに、皆は夕食を食べ終えていた。


今日も私だけ夕食を食べ終えれていない。


1人で夕食を食べていると、向こうの方でおじさんが空たちを呼んでいた。


何話すんだろう。


そう思って見ていると、霞天さんが言った。


「少しスピードを上げて食べてくださいね」


「はーい」




やっと食べ終わり、霞天さんが私の食器を持っていく。


「ありがと、霞天さん」


「いえいえ」


立ち上がり、空たちがいる方を見てみると、まだおじさんと話している様子だった。


何かあったのかな?


そう思いながら、私は自分の部屋に入って、お見合いのことを考えることにした。

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