第10話 東尋坊の追跡者

 荒涼とした冬の日本海を背に、断崖絶壁が続く東尋坊。吹き付ける風は容赦なく、肌を刺すように冷たい。葛城烈は、黒ずくめの男たちから逃げ続けていた。

 数日前、葛城は罠にはめられた。ある組織に情報を売り渡したことがバレ、命を狙われる羽目になったのだ。組織は冷酷で容赦なく、一度狙われた者は決して逃れることはできない。

 葛城は、男たちの追跡を振り切るため、東尋坊へと逃げ込んだ。複雑に入り組んだ岩場、荒れ狂う波、そして吹き付ける強風。自然の脅威が、追跡者たちを阻む唯一の希望だった。

 しかし、男たちは執拗だった。犬のように鼻を利かせ、葛城の匂いを嗅ぎつける。一歩、また一歩と、確実に距離を縮めてくる。

 葛城は、息を切らせながら岩場を駆け上がった。背後からは、男たちの足音が聞こえる。

「観念しろ、葛城!」

 男たちのリーダーの声が、風に乗って響く。葛城は、歯を食いしばり、さらに足を速めた。

 岩場の行き止まりに追い詰められた時、葛城は絶望を感じた。しかし、その時、彼の目に飛び込んできたのは、荒れ狂う波が打ち付ける断崖だった。

 葛城は、迷うことなく断崖から飛び降りた。

 海に落ちた葛城は、激しい波に揉まれながらも必死に泳いだ。背後からは、男たちの叫び声が聞こえる。

「逃がすか!」

 男たちは、葛城を追いかけて海に飛び込んだ。しかし、荒れ狂う波は、彼らの追跡を阻んだ。

 葛城は、九死に一生を得た。しかし、彼の戦いはまだ終わっていない。組織は、再び彼を追いかけてくるだろう。

 葛城は、復讐を誓った。

「必ず、奴らに復讐してやる!」

 冷たい海の中で、葛城の復讐心は燃え上がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る