残業パワハラ地獄が同期とドキドキ展開!?溢れんばかりの女の子の優しさが主人公と⋯

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残業パワハラ地獄が同期とドキドキ展開!?溢れんばかりの女の子の優しさが主人公と⋯

笹田章介(25歳)は地方大学を卒業し、夢と希望を抱いて入社した企業で、厳しい現実を突きつけられていた。会社はいわゆるブラック企業で、残業が続く日々に理不尽な上司からの叱責、際限なく増える業務量に追われ、心はすり減る一方だった。




とりわけ直属の課長は、ミスがあれば大声で叱りつけ、成功しても「当たり前だ」と冷たく言い放つ冷酷な人物だった。同じ部署には、新人教育担当として配属された沢村麻衣(23歳)がいる。明るく快活な性格の彼女は、理不尽な環境に耐えながらも一生懸命仕事を覚えようとしており、その存在が章介にとって唯一の癒しになりつつあった。




そんなある日、大手クライアントとのプロジェクトが始動する。社運を賭けた大きな案件だったが、スケジュールは過密、人員も不足していた。課長の指示は曖昧で、ただ部下たちに圧をかけるばかり。章介は終電で帰宅し、翌朝は始発で出社する生活を余儀なくされる。




そのような極限に近い状態のなかで、麻衣の明るい笑顔だけが職場の張りつめた空気を少しだけ和らげていた。しかし、彼女自身も覚えることが多く、理不尽な要求に耐えながら必死に仕事を続けている。そんなある日、プロジェクトの進行が遅れたことでクライアントからのプレッシャーが高まり、焦った章介は思わず大きなミスを犯してしまった。




当然、課長からは激しい叱責を受ける。努力を全否定するような言葉を浴びせられ、章介はその場で平謝りするしかなかった。けれど心の中では、すでに限界が近づいているのを自覚していた。




夜遅くまでデスクに向かって作業を続ける章介。疲労困憊のあまり倒れそうになっていると、帰り支度をしていた麻衣が足を止めて声をかけてくれた。




「笹田さん、まだ帰ってないんですか? こんな遅くまで何してるんですか?」




突然の呼びかけに章介は慌てて顔を上げる。




「あ、麻衣さん…。すみません、明日の準備が終わらなくて…。」




「そんなに遅くまで働いてたら、倒れちゃいますよ。何か手伝えることがあれば言ってください!」




「でも、麻衣さんだって疲れてるでしょ? 自分の仕事もあるし…。」




「それでも手伝いますよ! 困った時はお互い様じゃないですか!」




彼女の明るさに励まされた章介は、思い切って麻衣に頼ることを決める。




「…ありがとう。でも、無理はしないでね。」




「任せてください! 一緒にやれば早く終わりますよ。」




そうして2人で作業を進めた結果、翌朝にはなんとかタスクを終えることができた。明け方のオフィスでほっと一息つくと、麻衣が微笑む。




「やりましたね! これで一段落つきました。」




「本当に助かったよ。麻衣さんがいなかったら無理だった…ありがとう。」




「いいえ! でも、笹田さんがちゃんと説明してくれたから、効率よくできましたよ。」




2人の間には小さな信頼の芽が生まれていた。その後、始発の電車で帰る途中、章介は麻衣の存在が今の自分をどれほど支えているか、改めてかみしめる。




「麻衣さんに頼ったら、こんなにも気が楽になるなんて…。やっぱり一人で抱え込むのは間違いだったのかも。」




帰宅してわずかな時間だけ仮眠をとったものの、すぐに出社の準備を始める章介。疲労は限界に近いが、麻衣の笑顔を思い出すことで自分を奮い立たせた。




再び始まる忙しい一日。デスクに向かいながら、昨日の出来事を思い返していると、麻衣がやってきて声をかける。




「笹田さん、おはようございます! 昨日の作業、大変でしたよね。でも無事終わって本当に良かったです!」




「ああ、おはようございます。麻衣さんが手伝ってくれたおかげですよ。改めて、本当にありがとう。」




「そんなことないです! でも、少し顔色が悪いですよ。ちゃんと寝られましたか?」




「うーん…始発で帰って少しだけ横になりましたけど、ほとんど寝てないですね。麻衣さんこそ、昨日あんなに遅くまで付き合ってくれたんだから、大丈夫でした?」




「私も始発で帰って、ほとんど寝てないですけど…今日は気合いで頑張ります!」




麻衣の言葉に、章介は改めて彼女への感謝を感じる。そして朝の通勤途中、麻衣のためにコンビニで買ってきたコーヒーのことを思い出した。




「そうだ、これ…。昨日のお礼も込めてどうぞ。麻衣さん、コーヒー好きでしたよね?」




「えっ、私に? ありがとうございます! こんな気を使ってもらっちゃって…でも、めちゃくちゃ嬉しいです!」




「麻衣さんには本当に助けてもらってばかりだから、これくらいはさせてください。」




「そんなことないですよ! でも、こういう気遣いはすごく嬉しいです。本当にありがとうございます、笹田さん!」




彼女の笑顔を見て、章介の胸にはまた少しやる気が湧いてきた。厳しい職場の空気の中でも、麻衣がそばにいるだけで和やかな気持ちになる。彼女への感謝とともに、その存在の大きさを改めて感じるのだった。




午前中の業務を終え、昼休みになった頃。章介は疲れた体をほぐそうと椅子にもたれていたが、麻衣がやってきて声をかける。




「お昼どうするんですか? 近くに新しいカフェができたみたいで、もしよかったら一緒に行きませんか?」




「カフェか…いいですね。最近は外で食べる余裕もなかったし、行ってみましょう。」




思いがけない誘いに、章介は少し驚きつつも嬉しさを感じる。2人がオフィスを出て向かったカフェは落ち着いた雰囲気で、軽いジャズが流れ、ちょっとした憩いの場という印象だった。サンドイッチとコーヒーを注文し、たわいない会話を楽しむうちに、自然とプライベートな話題へと広がる。




「麻衣さんって意外とアウトドア派なんですね。僕は家でゲームするほうが多くて、どちらかというとインドア派です。」




「へぇ、笹田さんってもっと真面目な趣味のイメージありました。今度一緒にハイキングとか行ってみます?」




「ハイキングですか? いや、楽しそうだけど、僕にはハードル高いかも…。でも、何かおすすめがあれば教えてください。」




そんなやり取りに、お互い思わず笑みがこぼれる。厳しい現場でのストレスを忘れられる、ほっとする時間だった。




その日の終業間際、突然クライアントから電話が入り、提出した資料の数字に重大なミスがあると指摘がなされる。オフィス中が一気に緊張し、上司の課長がすごい剣幕で声を荒らげた。




「お前が最後に確認したんだろうが! どういうことだ、このミスは!」




「えっ…そんなはずは…何度も確認しました!」




「言い訳なんて聞きたくない! お前がやらかしたせいで会社全体がクレームを受けてるんだぞ! 責任を取る覚悟はできてるんだろうな!」




課長の怒鳴り声がフロアに響き渡り、章介は肩を落として言い返すこともできない。その様子を見かねた麻衣が立ち上がり、静かに口を開いた。




「課長、少しお待ちください。このミス、本当に笹田さんだけの責任なんでしょうか?」




「はぁ? 何を言ってるんだ、お前は!」




「失礼ですが、この資料の元データって課長からいただいたものですよね? 確認させてください。」




そう言うと麻衣は冷静にデータをチェックし始める。すると、数分後に元データ自体が古いままだったことが分かった。




「課長、この元データが古いまま更新されていませんでした。それが原因で今回の数字の誤りが起きたみたいです。」




一瞬、オフィス内が静まり返る。課長が誤ったデータを使っていた事実が明るみに出ると、周囲の社員も課長に対して冷ややかな視線を向けた。課長は舌打ちしつつも謝罪の一言すらなく、不機嫌そうにその場から離れていく。




麻衣はほっとした表情で章介に声をかけた。




「これでちゃんと原因がわかりましたね。あなたのミスじゃなかったんですよ。」




「麻衣さん…ありがとう。本当に助かりました。自分一人じゃ原因を突き止められなかったと思います。」




「困った時はお互い様ですから! それに、笹田さんももっと自信を持ってくださいね。」




麻衣の支えによって救われた章介は、深い感謝を胸に抱く。彼女の冷静な判断と優しさが、いまの職場で何よりも心強かった。




やがて今回の重大ミスとクレームは社長の耳にも届き、社内調査が行われることになった。会議室に関係者が集められ、クライアントとのやり取りや資料の確認過程が詳細に調べられる。課長も同席したが、データの取り扱いに不備があったことが明確になり、さらに普段からのパワハラ行為についても他の社員たちから証言が相次いだ。




「課長は普段から、部下の意見を聞かずに一方的に指示を出すことが多いです。」 「ミスがあれば部下に全て押し付けて、責任を取る気配がまるでありません。」




社員たちの声を受け、社長は厳しい表情で課長に問いただす。




「今回の件は、あなたの指導不足とデータ管理の甘さが原因だ。それだけでなく、部下へのパワハラの訴えも出ている。これ以上、あなたにこの部署を任せておくわけにはいかない。」




こうして課長は別部署へ左遷されることが決まった。翌朝、課長の机が空になり、周囲の社員たちがどこか安堵した様子でその姿を見送る。麻衣も小さく息をつきながら言う。




「これで少しは、職場の雰囲気も良くなるといいですね。」




「本当にそうですね。麻衣さんがいてくれたおかげで、なんとかここまで乗り越えられました。」




「笹田さんだって、最後まで諦めずに頑張ったじゃないですか。一緒に乗り越えられて、本当に良かったです。」




その日の終業後、麻衣は章介に声をかける。




「今日、ちょっと寄り道して帰りませんか? お疲れ様会ということで!」




「いいですね。こんなに大変だったんだし、少しリフレッシュもしないと。」




2人は駅前の居酒屋でこれまでの苦労を思い返し、楽しく語り合った。厳しい職場の中でお互いを支え合い、絆を深めた2人の関係は、少しずつ特別なものへと変わりつつある。




「麻衣さんといると、本当に心が軽くなる…。これからも、もっと一緒にいたいと思うのは…わがままだろうか。」




そう胸の中でつぶやく章介の想いは、以前とは違うかたちで麻衣に向かっていた。




課長のいなくなった職場は、以前より働きやすくなっていった。社員たちは新しいプロジェクトに取り組みながら少しずつ前向きになり、雰囲気が明るく変わっていく。その中で、章介と麻衣の距離もさらに近づいていた。




そして、新たなプロジェクトが無事に成功し、チームで軽い打ち上げをすることになった。談笑の中、ほかの社員たちは冗談交じりに2人へ視線を向ける。




「笹田君と麻衣さん、本当に息ぴったりだよね。まるで名コンビって感じ。」 「そうそう、2人がいると安心感が違うよ。」




麻衣は少し照れながら笑い、章介も表情を緩める。彼は心の中で、ある決意を固めていた。




打ち上げが終わり、2人で駅へ向かう帰り道。静かな街並みを歩きながら、章介は胸の内の想いを伝えるタイミングを伺う。




「今日はお疲れ様。そして…いつも本当にありがとう。」




「こちらこそ、笹田さんがいてくれたから頑張れたんです。ありがとうございます。」




「みんなが僕たちのことをからかうみたいに言ってたけど…正直、あれが嬉しかった。」




「えっ、どうしてですか?」




章介は一度深呼吸し、真剣な表情で麻衣に向き直る。




「麻衣さんといると、本当に特別な気持ちになるんだ。君は僕にとってかけがえのない存在だよ。」




驚いたように目を見開いていた麻衣だったが、次第に穏やかな微笑みを浮かべる。




「私も同じです。笹田さんと一緒だと不思議と安心できるし、どんな困難も乗り越えられる気がします。」




夜風が2人の間を吹き抜けるなか、彼らは小さく笑い合い、互いの想いを確かめ合った。駅前で別れる間際、麻衣は小さく手を振る。




「これからもよろしくお願いしますね、笹田さん。」




「こちらこそ。これからも一緒に頑張ろう。」




2人の背中を照らす街灯の光が、これから始まる新しい未来を予感させるように輝いていた。




――課長のいなくなった職場で、信頼と成長を支え合いながら新たな一歩を踏み出す章介と麻衣。2人の物語は、まだ始まったばかりだ。

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