✿六田亜矢子《むだあやこ》女医 29才が見た白昼夢
設楽理沙
第1話 ◇ドンマイ
なんだかなぁ~ はぁ~ ふぅ~
今思いっ切り涙目の私がいる。
数日前、自らは何も言ってこない夫に、私のほうから
引導を渡そうとしたのだが、夫は離婚に応じなかった。
しかも、相手の女性と別れる、とも言わず。
そして数日後、夫の方からやはり離婚してほしいと
言ってきた。
やられた。
ちっ、
別れたかったのに。
最後の最後がこれで、私的にここがかなり地団太踏むほど
悔しかった。
馬鹿野郎ぉ~
不倫された挙句にオメェから離婚突きつけられる
いわれなどないわぁ~と、面と向かって言うほど
女を捨てきれずにいたのでストレス半端ない。
私が離婚に難色を示さないとわかっている
悪びれるでなし、臆面もなく前回とは真逆になる離婚の提案をしてきた。
-
私は一旦親しくなった相手からこんな情のない態度を取られたのは
ほぼ初めてのことで、かなり気持ち的にズシンときた。
上手く平常心を装えていただろうか。
1度心を預けた相手から、もういらないやと切り捨てられる時の気持ちが
こんなにも胸に刺さりじくじくと痛いなんて。
荒らぶれそうになる精神状態をなんとか踏みとどませるために
私は努めて明るく"Oh,My God!"と胸の内で呟き、自分の心を
傷つけないよう励ました。
大丈夫よ、だいじょうぶ。
これくらい……あやこ、ドンマイ!
人の話では……
例えば学生時代身近な同級生が恋人に浮気されて
別れることになって、悔しくて夜も眠れないとかいう
話を聞いたことあったけれど、
今思うと思いっきり人事で聞いてたなぁ~。
彼女のつらさが身に沁みるぅ~わいなっと。グスン
今の私なら親身になって心からの慰めの言葉を
かけてあげられそうに思える。
確か田沢さんだったかな?
別のグループの子だったから今じゃ、名前もうっすらとしか思い出せない。
経験するって……やっぱり最強!
けど、こんな経験はできることならしたくなかったぁ。
はぁ~。ひぃ~。
はぁひぃ……と、過去の記憶に捉われていると、昔聞いた悲しい話が
記憶の彼方からやってきてしまった。
やだなぁん。
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