第壹章 霞童子悲恋譚㉒狭穂彦王の叛乱の真相〜亜神のディスリスペクト〜
【管理者(亜神)】に【未来世界】へ【時空漂流(時空転移)】を要求するとなったが、【
大海主之王「いきなりブチ切れて武力行使は無しだぞ。特に一寸!」
【大海主之王】の口ぶりでは、知性的に見える一寸法師のほうが血の気が多いようだ。一寸法師がキレてウラシマはそれに追随して加勢する流れらしい。
一寸法師「いきなりキレたりしませんよ。最初は穏便に交渉します」
最初はと言っているあたり、話の風向きによっては一寸法師は武力行使も考えている。
闇嶽之王「念の為に聞くが、どう交渉するんだ?【管理者】なんて『自分たちの頼みを聞くのは当たり前』と思っているような連中だぞ」
【闇嶽之王】の【管理者】への印象は、地に落ちている感じだ。
一寸法師「『管理者』って………複数いるはずなんですよ。僕たちがいた【未来世界】では【亜神】と呼んでいますが、【12柱】存在すると言われています。僕たちをここへ運んだ【亜神】は、【
おそらくその方たちでないとこちらが要望する2000年後の【未来世界】へピンポイントで送ることは不可能なのではないだろうか、と一寸法師は推測を口にした。
闇嶽之王「『時間に干渉』………そんな【通力】を使う【管理者】は聞いたことがないな………増えたのか?」
それなら14柱になると【闇嶽之王】が言ったので、【生神】【死神】が本当に【亜神】なのか疑わしい雲行きになった。
大海主之王「確か………古株の【管理者】が【統括者】に上がって2席空いた所へ新参者を入れていたな」
【大海主之王】は、【先住王】なので【管理者】と交流することもあるらしく、詳しい情報を持っていた。
大海主之王「【破壊の者】と【調和の者】が【統括者】になって空席ができたのだ。【破壊】と【調和】は『世界の摂理』………あの2柱は、他より頭1つ抜きん出ていた存在だからな『まとめ役』としては適任だろう」
どうやら【破壊】と【調和】の概念を司る【亜神】は別格のようだ。確かに【世界】は誕生後に維持しやがて滅びまた新たに誕生するをループしている。彼らは宇宙の真理そのもののようだ。
大海主之王「『時間に干渉する者』は【管理者】たちが欲しがっていたが………案外早く確保できたようだな」
闇嶽之王「あいつらは自分たちの都合で時間を止めたり戻したり、普通にやってただろ」
【大海主之王】は『時間に干渉する者』がいなかったかのように言うが、【闇嶽之王】は誰でも『時間に干渉できる』ような口ぶりである。
大海主之王「【管理者】が【12柱】存在するのは、それぞれが異なる【概念】を司るからだ。奴らが自分にない【概念】を【神の御業】で行使する時は『何かと交換している』………それは【生物の生命】だったり、【土地の生命】だったり【管理者】によって異なる」
犠牲を出すことを嫌がる【管理者】もいるので皆が皆『利己的』ではない、と【大海主之王】は言った。
大海主之王「【ミマキ】の御世の時に【疫病】が蔓延しただろう。あれは【管理者】の誰かが『摂理に反する無理』を押し通した結果だ」
闇嶽之王「少し前のことじゃないか!」
【
ウラシマ「この時代は、【ワクチン】がねえからな。感染しちまったら芋づる式に周辺の連中が否応なく罹っちまう」
【大海主之王】と【闇嶽之王】がウラシマに【ワクチン】とは何か、と訊くが答えるのは一寸法師とすっかりパターン化していた。
一寸法師「弱めた【病原体】を体内に摂取するんですよ。【予防接種】と言います。【未来の世界】では【注射器】という道具を使いますが、こちらでも『疫病の種』を先の尖った物に付けてそれで皮膚を切りつけるという方法で体内に入れることは可能です」
まあこの時代の人たちは、そんなことをすれば死んでしまうだろと否定して【予防接種】をするのは無理でしょうね、と一寸法師は【古代人】に理解してもらうのは厳しいことを指摘した。
大海主之王「【先住者】の強靭な肉体なら、体内に【病原】を入れても無毒化できそうだが、【人間】は脆弱だからなあ………」
一寸法師「【病原体】を体内へ入れることで【抗体】を作らせるんですよ」
闇嶽之王「なるほど………病に抵抗する【薬物】のようなものが体内で作られる仕組みか!」
この【ワクチン】とやらは【病】の種類別に作らなければならないのではないか、と【闇嶽之王】は【ワクチン】については知識があるはずのウラシマよりも理解していた。
一寸法師「そうです。でも、この時代だと保存が効かないですから作って使い切りになりますね。『予防接種』を実施するのは現実的に無理でしょうね」
一寸法師は、この時代に【ワクチン】を完成させてしまっては後々【ワクチン】開発で偉人になる人物や【疫病】で国外からの侵攻を防げたこともあった歴史が変わるので、不可能と断じた。最も保存が効かないというのは事実なので全てが嘘ではない。
闇嶽之王「【
あいつら【獣の本性】出して時々、凶暴になるからなと【闇嶽之王】のつぶやきを聞いて、一寸法師は【狂犬病】だなと解った。【先住者】でも【獣】と名が付く種族には避けて通れない症状らしい。
ウラシマ「【
ウラシマは【召喚術】で喚び出せると思っているようだ。
大海主之王「ウラシマ………話を聞いていたか?あやつらは、気まぐれだから自分たちの気分で現れて無茶振りして去って行く」
【大海主之王】は、【召喚】できるなら喚び出して説教をしたいくらいだと言っているので、【管理者】にはあまり好意的ではなさそうだ。
ウラシマ「【先住王】の【裏技】とかねえのかよ!【神社】とかで拝んだら来たりしねえかな」
一寸法師「そもそも『祀っている神』が違うよ」
逆に呪われそうだからダメ、と一寸法師に却下された。
大海主之王「そういえば、【ホオリ】は【サクヤ】の子だったな」
今更何を言っていると言いたげに【闇嶽之王】は【大海主之王】を見る。
闇嶽之王「【サクヤ】は【山の聖域】の火口で3人の子を出産した。その1人が【ホオリ】だ」
大海主之王「【サクヤ】が死後に【管理者】になっている!おそらく一寸とウラシマを連れて来たのは【サクヤ】だ」
単に【ホオリノミコト(ウラシマの前世)】の成り立ち話をしているだけに思えたが、その【サクヤ】がこれから頼み事をしようとしている【管理者】だと判明した。
ウラシマ「あ………【
ウラシマが使った【古代人】に通じない『コネ』という単語の意味を聞かれる前に一寸法師が訳す。
一寸法師「『コネ』というのは、【未来の言葉】で『人脈』のことです」
一寸法師は、すっかりウラシマが口を滑らせて使う【未来の言葉】の通訳係が板についてきた。
それなら話は早いではないか、と【大海主之王】は【山の聖域】で喚びかけてみてはどうだと提案した。
大海主之王「我は【海の先住王】なので【山の聖域】には行けん。【
割と【山の先住王】の【支配圏】に自由に出入りしている感じがする【大海主之王】だが、【聖域】と称される場所は勝手が違うようだ。
闇嶽之王「それは構わないが………【聖域】へ入ることを父上に申告しなければならない」
【山の先住王代理】で【先住王】の権利をほぼ使える【闇嶽之王】でも、しょせんは代理なので【聖域】のような特別な場所は【王】の許可がいる。
一寸法師とウラシマは自分たちの素性を明かすいい機会だから、【山の先住王】と面会させてほしいと申し出た。
一寸法師「【狭穂彦王】が【山の先住者】たちにとって、貴重な存在である以上『狭穂彦王の叛乱』の話は【山の先住王】の耳に入れておいたほうがいいと思います」
一寸法師は【狭穂彦】の謀反の冤罪が避けられない事象である以上、【佐保】の地の利権や【佐保一族】の進退が関わるだろうから【山の先住王】が【佐保】をどうするか、早めに決断してもらうべきだと言った。
一寸法師「【ヤマト朝廷】は、ほしい物を手に入れる為なら何でもやります。【ヤマト国王】の偉業の1つとして【
【古事記】では『イワレビコノミコトの東征』と【日向】から【ヤマト】までの各地の【神社】を訪ね歩き東へ進む過程が書かれているが、実際は強引な武力行使がなされていたようだ。
一寸法師「普通は、【狭穂姫】と婚礼が成った時点で【佐保】は手中に納めたと考えるはずですが………それにも関わらず【狭穂彦王】を謀反人として討伐する理由が謎すぎます」
【佐保】の跡継ぎと考えられる──────────【佐保一族】は【女系
◆ ◆ ◆
【
一寸法師とウラシマが【ヤマト国の未来人】と聞いた時は、複雑な表情をしたがその時の表情の理由は、【管理者】が無茶をしたせいで【
しかし彼らの親族に【
そして、【
一寸法師が【山の聖域】へ行くということで【山の先住者】の姿形を模した【飛空艇】を創った。【山の先住王】の本来の姿の【地這いの者(ムカデ)】を模してもよかったが、空を飛ぶということで【
【闇嶽之王】には『マンガ』が何かわからなかったが『マンガの神様』という【神】が【未来】に存在すると勘違いしているのは間違いない。
【鉄の塊】でできた【飛空艇】という名の【鳳凰の乗り物】を見た【大闇主之王】と【闇嶽之王】は【人間】は【大地】に足を着けてしか生きられない【生物】と思っていたが【未来人】は【雲の上】まで生活圏にしているのだなとカルチャーショックを受けた。
一寸法師が【先住王の一族】に不自由させないよう【飛空艇】の内装を【豪華客船並】の凝った造りにしたせいで色々と誤解を生んでいるが、【未来世界】では【宇宙コロニー建設計画】やそれに伴った【宇宙移住計画】も持ち上がっていたので2000年後は【雲の上】どころか【地球の外】が生活圏になっているかもしれないので、一寸法師もウラシマもあえて訂正しなかった。
【鳳凰型の飛空艇】は【鳳凰】の背の部分が甲板になっていて屋外である。そこから【富士山】の火口を見下ろして【闇嶽之王】は、あの火口で【サクヤ】は【ホデリ】【ホスセリ】【ホオリ】の三兄弟を出産して姿を消したと話した。
【古事記】で【海幸彦と山幸彦】の兄弟喧嘩のエピソードになるのが【ホデリノミコト(海幸彦)】と【ホオリノミコト(山幸彦)】だが、【ホスセリノミコト】は長男と三男がしっかりキャラ立ちしているのに対して空気扱いされている存在感の薄い次男である。
ウラシマは【富士山】の火口を見て、生まれたての赤ちゃんだった【
ウラシマ「【
ウラシマが使った『ガチ』の意味が【闇嶽之王】にはわからなかったが、会話の流れから『嘘か真か』を聞かれていると判断して答える。
闇嶽之王「【サクヤ】の父親の【オオヤマツミ】と【ナムチ】の義理の父親の【スサノオ】は兄弟なんだ。あいつらは親戚でな………【
【オオヤマツミノカミ】は【山の神】なので【山の先住者】とは交流が深く、内情をよく知っていた。【オオナムチノミコト】は【スサノオノミコト】の娘、【スセリヒメ】の婿なので姻族だが近しい親戚扱いになっていたらしい。
一寸法師「あの【クズ種馬男】は、日頃の行いがアレだから疑われるのですよ。【サクヤ様】にはいい迷惑だったでしょうね。でも、【ニニギ様】も大概アレですけどね。結婚する時に【イワナガヒメ】を追い返すなんてヤラカシてますし………それが原因で【天孫族】に【短命】の【呪詛】がかけられたわけですから、僕から見れば2人とも【クズ】ですね!」
一寸法師は、相当【オオナムチノミコト】に恨みでもあるのか名前すら呼ばない。更にとばっちりで【ニニギノミコト】までディスり出した。
ウラシマからすれば【前世の父親】がとばっちりでディスられているのだが、彼は兄者の言う通りと盲目的に一寸法師を推している。
【転身者】は【前世の人物】とは別人と聞くが、それが事実だったことを【闇嶽之王】は目の当たりにした。
闇嶽之王「麓のほうに【イクメ】が建造させた【神社】がある」
とりあえず、【神社】へ行ってお参りでもするかと【闇嶽之王】は訊いた。
ウラシマ「神社!【
ウラシマが口にした『ワンチャン』は流石に会話の流れから推測するのは不可能だったようで【闇嶽之王】は専属通訳の一寸法師を見た。
一寸法師「可能性があるかもと言っています」
闇嶽之王「【未来】の言語はどうなっているんだ」
英語が流通していない【古代日本】では『ワンチャン』を理解するのはハードルが高かった。
とりあえず【神社】へ行ってみることにして、【鳳凰型の飛空艇】を着陸させる場所を探す。その時、天空から大地へ光り輝く御柱が立った。
闇嶽之王「あれは【天の扉】!」
【管理者(亜神)】が降臨する時の【天の扉】の解放を【闇嶽之王】は知っているようだ。そして、浮遊する2人の女を見て驚きもせず声をかけた。
闇嶽之王「初顔の【管理者】だが、初めましてではない顔だな。お前たちが『時間に干渉する者』か?」
どうやら【闇嶽之王】は彼女たちと面識があるようだ。
ウラシマ「あ………俺と姉上を連れて来た【亜神】だ」
ウラシマの言葉に一寸法師は自分も同じ【亜神】だったと頷いて示す。
闇嶽之王「【ホオリ】………お前薄情だな。この女の今の名は知らないが、生前の名は【コノハナサクヤ】………【前世】のお前の母親だ」
【闇嶽之王】は【未来人】の強制連行の動機が何となくわかった。
闇嶽之王「【サクヤ】………お前、私情で【管理者】の【神通力】を使ったな」
サクヤ「うう………いいじゃん!【
【サクヤ】は、無関係の【人間】を連れて来るのには【対価】が必要になるから【転身者】を探して入れ換えたのだと白状した。
サクヤ「けど、【イワレ】は流石あの【
一寸法師とウラシマは、書物で描かれていた【コノハナサクヤヒメ】のイメージから大きく逸脱した【サクヤ】を目の当たりにして、残念感が半端ないのと【未来人】を問答無用で連行した人物が他人を非常識という自分を棚上げした発言に呆れていた。
【サクヤ】が【ニニギノミコト】と【イワレノミコト】をディスっている間に、【サクヤ】に瓜二つの相方らしき【管理者(亜神)】は【闇嶽之王】と一寸法師、ウラシマに自分は【コノハナチルヤ】と名乗り、【管理者(亜神)】となったことで【サクヤ】の【影の部分】が【具現化】した【生命体】だと自己紹介した。
闇嶽之王「【サクヤ】の【表】と【裏】が【二柱一対】となったのか!」
【闇嶽之王】は、てっきり【イワナガヒメ】が相方だと予想していたのでここに姿がない【イワナガヒメ】はどうしているのか訊いた。
【イワナガヒメ】の話題になっていることを耳ざとく聞き留めた【サクヤ】は、よくぞ聞いてくれました、と割り込んで来た。
サクヤ「お姉様は、あの【
【サクヤ】は聞くも涙、語るも涙、ヨヨヨと泣き真似の仕草をしている。
一寸法師「僕、【コノハナサクヤヒメ】は『クールビューティ』だと勝手に思っていたけれど………愉快な方なんですね」
ウラシマ「この女芸人みたいなキャラした人が【前世】の俺の母上………あ………連行の時に、名前を言わなかったのは【未来人】の持つ【サクヤヒメ】のイメージを守るため?」
一寸法師とウラシマは、どうせなら徹頭徹尾【イメージ】維持を貫いて欲しかったと思っている。
サクヤ「でも、私たち頑張りました!その結果、【二代目】から【九代目】までの【大王】の活躍を【歴史】から帳消ししてやりましたとも!」
【サクヤ】は体を反らしてドヤ顔をする。
【先住者】の【闇嶽之王】には【大王】の記録を消すことの意味をあまりわかっていないが、一寸法師とウラシマは【古事記】の【欠史八代】に当たる【ニ代目】から【九代目】までの【天皇】が名前とかろうじて略歴程度しか記述されていない理由を知り、聞きたくなかったと沈んだ表情になる。
しかし、一寸法師とウラシマは【サクヤ】が割と砕けた感じの人物なので、例のおねだりをしても大丈夫そうな気がした。
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今更ですが、私が参考文献にしている『古事記』は『ラノベ古事記』なので、主人公(歴史書なので天皇が主人公として書かれています)がラノベ主人公風のキャラクターになっています。
古文を現代文に訳したお堅めの『古事記』とはかなりかけ離れているかもしれませんので、ご理解とご了承をお願いします。
https://kakuyomu.jp/users/mashiro-shizuki/news/16818622175689105953
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