第壹章 霞童子悲恋譚㉑狭穂彦王の叛乱の真相〜滅びの導き手〜
【闇嶽之王】は【未来予知】のような【未来人】の話を聞きながら、こんな簡単に知ってもいいのだろうかと呟いた。
一寸法師「僕とウラシマと妹は、『【先住者】を未来に生かす』ように命じられたので、ある程度は【未来】を知ってもらって【先住王】の協力が得られればと思って話しています」
一寸法師とウラシマは、こちらの【世界】で【前世スクナビコナ】【前世ホオリノミコト】の記憶が戻ったので、完全覚醒した【
一寸法師「【長命種】にとっては500年の歳月はほんの数年程度でしょう?」
【長命種】になりたてだが、一寸法師はすっかり馴染んでいる。
一寸法師「実は………僕ちょっと思いついたのですが、【狭穂姫】の輿入れについて僕たちを強制連行してきた御方たちに相談してはいかがでしょう?」
一寸法師は、僕たち結構頑張ったのでおねだりしてもいいと思うと言った。
ウラシマ「兄者の言うとおりだ!『give and take』は大事だぞ!」
【闇嶽之王】に『give and take』が通じるはずもなく怪訝な表情をウラシマへ向けると、【大海主之王】が得意げに意味を教えた。
大海主之王「『持ちつ持たれつ』という意味だ。【西洋】という【大陸】の向こうの【異国】の言葉らしいぞ」
横文字言葉に関してはウラシマが度々口にするので、身内同然の【大海主之王】は幾つか知っている。
闇嶽之王「【大陸】の向こうにも【国】があるのか?」
一寸法師は【円形の惑星】の中に【ヤマト国】や【新羅】【漢の国(中国)】含めたくさんの【国】が存在し更に【円形の惑星】の上半分を【北半球】下半分を【南半球】としこの上と下で【季節】が正反対で遠方の国になると【ヤマト国】が朝の時に遠方は夜だと、ザックリ説明した。
【世界】が【円形の惑星】の中に存在していることは、【大海主之王】も知らなかったことのようで【闇嶽之王】と一緒に口を半開きにして驚いていた。
一寸法師「因みに、【ヤマト国】は【北半球】です。先に闘った者たちがいた【南極】は【南半球】の最南端にあります。逆の最北端には【北極】があります。そこの生物は【シロクマ】【ホッキョクギツネ】【ホッキョクウサギ】など毛皮が白いモフモフがいます」
モフモフに【大海主之王】はクワッと目を開いた。
大海主之王「【楽園】ではないか!我の支配圏にしたいぞ!」
闇嶽之王「おい、【熊】も【狐】も【兎】も【山の獣】だろ」
【大海主之王】が予想通りに食いついたが、意外にも【闇嶽之王】まで食いついて来た。
一寸法師は、もしかして2人とも『モフモフ好き』なのではないかと考えるが口には出さない。
ウラシマ「兄者ぁ………【亜神】に何を頼むんだ?」
ウラシマの質問が脱線した話を元に戻した。
一寸法師「『2XXX年の日本』へ送ってください………かな」
一寸法師の言葉に【大海主之王】が一寸法師とウラシマが【元の世界】へ戻ろうとしていると早とちりした。
大海主之王「帰るのか………お前たち兄弟はもう我の【家族】だと思っているから、正直寂しくなるが、まあ我は【長命種】だからな!2000年後に再会できる可能性はある!」
2000年後は【転生】して兄弟になっているので、【大海主之王】の言葉は【未来】の再会を暗示していた。
闇嶽之王「オッサン………自己陶酔してる所悪いが多分………【未来】へ送ってもらおうとしているのは【狭穂】か【狭穂彦】なんじゃないのか?」
【闇嶽之王】はちゃんとわかっていたようだ。行方不明─────────別の時代と聞いているが情報がない─────────の兄弟と合流するなら2人が【元の世界】へ帰ってしまっては合流できなくなる。そこをふまえれば、2000年後に戻るという選択肢はない。
一寸法師「【古事記】という【神話時代】から先ほど話題に出した【推古天皇】の御世までの【歴史書】なのですが………【狭穂彦王の叛乱】から後は【佐保】についての記述がありません。【狭穂姫】の生んだ御子が、言葉を話せないのでお参りして話せるようにしてもらうお話や、『天皇崩御に追随する殉死廃止』のくだり………そして、先ほど話した【オオタラシヒコノミコト】のおねだりのお話の後、【ヤマトタケル】が主人公の【冒険譚】になります」
サクサクっと一寸法師はあらすじを話したが、その中に【闇嶽之王】には聞き捨てならない部分があった。
闇嶽之王「【狭穂】の子が話せないってどういうことだ!」
ウラシマ「色んな考察があるけど………最有力が【佐保彦】との間の『禁断の子説』だな」
闇嶽之王「んなわけねえだろ!【真若王】が孕ませやがったんだよ!無能のくせに、そっち方面だけは有能だった!」
思わず声を荒げてまくし立てた【闇嶽之王】は、クールダウンしたら言い過ぎたスマンと詫びた。
一寸法師「一説には【
『クズ種馬男』が誰を指しているのか【闇嶽之王】にはわからない。
大海主之王「【転生】しても怒りは収まらないようだな。【ナムチ】も罪作りなことだ」
一寸法師「【
【
闇嶽之王「【ナムチ】のことだったか………確かに、あいつガキがたくさんいたな」
『種馬』には納得だ。『クズ』はノーコメントだったが、何も言わないということは【闇嶽之王】も同意見なのだろう。
【闇嶽之王】は【未来人】が近しい【未来】を話してくれたので、こちらも【佐保】の【先代
闇嶽之王「【佐保】の【先代・
大海主之王「【加津戸売】か………懐かしい名を聞いた。彼女は【佐保】随一の【預言者】だ。あれほどの【霊力】の者は後に続かんかもしれん」
【大海主之王】はそう言って【加津戸売】は【
大海主之王「【大比売(大闇見戸売)】と【景比売】だけではなく関わった者………【イマス】、【ミチ】、【佐保一族】も含まれるだろう」
しかし、既に鬼籍に入った【御景見戸売】と
ウラシマが『滅びの導き手』とは関係ないが【御景見戸売】についてわかったことがある、と言った。
ウラシマ「【御景見戸売】とやらの話を聞いて、時代のせいだと思った。【古代】では【不具】がある者を迫害して当たり前みたいな考えな。俺と兄者がいた【未来の世界】では、【御景見戸売】の症状………【サヴァン症候群】だ」
大海主之王「名前だけでは何かの病のような名だな」
【古代人】には耳慣れない横文字が病を連想させているようだ。
闇嶽之王「【景比売】とその息子の真王は【
【闇嶽之王】は【比類神子】
一寸法師「違います。【未来の世界】にも【比類神子】はいます。僕たちの母の妹………僕たちの叔母に当たる方が【夢見】と呼ばれる【比類神子】です」
闇嶽之王「2000年後の【未来】にいるのか!それもお前たちの親族か」
【大海主之王】は既に聞いて知っていたようだ。【闇嶽之王】はどのような特徴かを訊く。
一寸法師とウラシマは直接会ったことがないと答えた。【未来の世界】では【夢見】という【預言】を百発百中の確率で的中させる世界唯一の存在で、彼女は居住する【屋敷】を与えられているが、一歩も外へ出してもらえず親兄弟でさえ面会を許されない世界から隔絶され監禁されているような状態だったと言う。
これは一寸法師とウラシマが【古代】へ強制連行される前の【未来世界】のことだが、【
闇嶽之王「時代が変わっても、【比類神子】への風当たりは変わらないようだな」
【未来】の【比類神子】も良くしてもらっているとは言い難い扱いに【闇嶽之王】は誠に【人間】は愚かだ、と吐き捨てた。
一寸法師「【サヴァン症候群】の多くに見られる特徴は、記憶力が人間離れしています。見たものを一瞬で記憶して、絶対に忘れない人もいます。他には芸術面で驚異的な才能を開花させたり、書物一冊を全て記憶したものを逆から暗記で読み上げるなどある種の部門では超人です。【
一寸法師は【サヴァン症候群】の【比類神子】なんて【国宝級】で本来なら【
【闇嶽之王】は、【比類神子】を親族に持つ一寸法師の言葉を信憑性があるとみて【佐保一族】や【
ウラシマ「『滅びの導き手』ってのは、【狭穂彦】なんじゃねえのか?」
ウラシマの言葉に、一同は彼に注目した。
一寸法師「ウラシマは、時々ヒヤッとするほど鋭いこと言うね」
その口ぶりから一寸法師も同意見のようだ。
一寸法師「『滅びの導き手』というのは『狭穂彦王の叛乱』として【未来】に伝わっている事を指していると思います」
一寸法師は、書物で読んだのと今この時に現在進行形で起こっていることの齟齬が生じていると言った。
一寸法師「『狭穂彦王の叛乱』をザックリ説明すると、【狭穂彦王】が【狭穂姫】に『兄と夫』のどちらが大切かと質問して【狭穂姫】は兄が大切だと答え、【狭穂彦王】は隙をついて【大王】を暗殺しろと言って【狭穂姫】へ【短刀】を渡します」
話を聞いていた【闇嶽之王】は、【狭穂彦】に言われるまでもなく【狭穂姫】自身が自らの意志で【大王暗殺】をやりかねない気性の持ち主だと手を額に当てる。
ウラシマ「ひょっとして………もう暗殺のくだりは起こったのか?」
ウラシマは【闇嶽之王】の頭がイタそうな表情に、暗殺未遂が実行されたのかと勘違いした。
闇嶽之王「いや………まだ………というより、【狭穂彦】は暗殺を唆しそうな性格ではない。更に始末の悪いことに、【狭穂】の気性が自ら暗殺を考えついて実行しそうな娘だ」
【闇嶽之王】から【狭穂姫】のじゃじゃ馬ぶりを聞いて、確かに頭のイタくなる話だと【大海主之王】、一寸法師、ウラシマは納得した。
ウラシマ「『狭穂彦王の叛乱』の物語では、【垂仁天皇】は実行犯の【狭穂姫】は唆されただけだから罪に問わず、【狭穂彦】だけを罪人にして殺せ的な感じだったぜ」
あの【天皇】、色ボケしてるなとウラシマは言うが、【狭穂姫】は妊婦なので腹の子を自分の子と思っている【垂仁天皇】は、ひとまず【狭穂姫】の罪は保留にしていたとも考えられる判断である。
闇嶽之王「唆されたにしても【大王】の喉元に【短刀】を突き付けるような【后】を【朝廷】が許すはずがない。生かされた【狭穂】は【朝廷】では陰口を叩かれ、形見の狭い針の筵の生活を送ることになる未来しか見えないぞ」
事は【大王暗殺未遂】なので、【大王】1人の問題では済まないのだ。しかし、【伊久米大王】なら後世に語られている物語のようなことを言いかねないのが【闇嶽之王】にとって更に頭のイタい話だった。
一寸法師「『狭穂彦王の叛乱』の起因は諸説あります。今話した【狭穂彦王】に唆された部分は、どの書物も共通ですが『お腹の御子が大王の子ではない説』が物語として盛り上がるので1番多く取り上げられてますが、政治絡みの『新羅の皇子と伊久米大王が通じている説』は【狭穂彦王】が【ヤマト国】を【新羅】に侵略させない為に芽の内に摘み取ろうとして【大王】に反逆した風に語られています」
後者は、【ヤマト国】に忠義を立てている感じがするが、結末は【狭穂彦】が反逆者にされて自害するとなっているのを一寸法師は話した。
一寸法師「【狭穂彦王】の立ち回りが変わっても、結末が同じ『館に火をかけて自害』なので、これは【狭穂彦王】がどう動いても変わらないと思います。だから、僕は【亜神】に頼んで僕たちがいた【未来世界】へ逃がすことが唯一救けられる手段だと考えます」
闇嶽之王「『館に火をかける』………【火】は【闇】を照らし【人間】から【闇】の恐怖を払ったが、別の意味で滅びを象徴する」
『滅びの導き手』というのを滅亡と捉え、大きく考え過ぎていたかもしれないと【闇嶽之王】は【預言】を詠み解く【預言者】がいなくなった時の【預言】は人々を間違った方向へ導くことを思い知らされた。
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