第壹章 霞童子悲恋譚⑥狭穂彦王の叛乱の真相〜和訶羅の郷〜
朔は、『古代の
朔「実は【
この時は、
洸「怖いもの知らずだな………【
だから【まほろば鳥の一族】は絶滅したんだろう、と
桂「あれだけ先にオチを言うのを反対していたのに………」
自分でやって馬鹿だろお前、と
洸「ぐぅー………」
洸は、ぐぅの音も出ないが悔しいからぐぅの声を出してみた、と自分でもよくわからない行動をしている。
燎「不覚にも、今のちょっとカワイイと思ってしまった!」
だって洸の顔は女顔だから、と燎が言うと洸が「テメェ、それNGワードだぞ」とキレた。
癸「燎………私の前で孫をイビるなんて………君、
燎は、癸の仕返しが怖くて朔に続きを話してくれ、と頼んだ。
朔「洸がオチ言っちまったが………【まほろば鳥】は【比類神子】への冷遇で『神の怒り』を買って、死ぬまで【奴隷】だった」
『触らぬ神に祟りなし』で【山の民】は【王】も含めて【まほろば鳥】の救済から手を引いた。
将成「救けようとは考えていたのか………」
意外だと
将成「【古族】はマウントの取り合いをするのが常識みたいな所があるから………【
将成の意見は正しい。しかし、当時の時代にはまだ、【貴族の官位】を授かることになる【烏帽子太夫】も【五位鷺姫】も存在していなかった。朔からそれを聞かされて将成は『美意識高い系』の【鳥人族】には【まほろば鳥】の見た目の美しさがすべてだったのだと、当時の価値観を知った。
朔「【古代】の価値観でいくと、【比類神子】は『障害者』扱いだ。俺は姿を見たことはないが、【現代】の【比類神子】はどうだ?」
癸「事情を知らない第三者から見れば、優遇されているように見える。大きなお屋敷に身の回りのお世話と護衛を兼任する女の子が2人、他にも何人かボディガードはいるだろうけど………基本、丁へ男性は近づくことに禁止だ」
盗撮されているから近づきたくても近づけないけどね、と癸は殊更に『盗撮』を強調した。
癸「でも迫害する者はいないねえ。なんか丁を崇める会的なアヤシイ新興宗教団体はあるけど」
【現代】の【比類神子】は信仰対象になっている。
将成「時代………ということでしょうか。【現代】は杖を付いている人には道を譲ったり、車椅子が溝に嵌って取れなくなったら手助けしたり、『相互扶助』の精神の者が多いです」
稀に面白がって動画を撮って配信する馬鹿もいるが、と将成は【古代】にはデジカメもスマホもなかったので撮影はできないが、こういう人間のほうが多かったのだろうなと思った。
朔「【古代】は双子が【忌み子】と考えられてたんだよ」
朔は、自身は二卵性三つ子兄弟だし母親の棗は燎と双子兄妹だし、祖父の癸も
【まほろば鳥】の長の【
だが、【加津戸売】は双子の女児を出産後、産褥で死亡した。約定は【大闇主之王】と【加津戸売】の間でのことなので、【加津戸売】の遺児を引き取ることも叶わなかった。それでも【大闇主之王】は【政略】の絡まない本心から愛した女性の子を気にかけて、【
朔「【先代】の落ち込みようは、周囲がもう【王】として無理なんじゃないかと思うくらいのものだった。だが、【霞童子】が【幻術】で【加津戸売】の姿を装って慰めていくうちに立ち直っていった」
これが【大闇主之王】と【霞童子】の爛れた『近親相姦』の切っ掛けだった。それこそが【
癸「さすが、体感年齢
癸の言葉に、満が白目を剥いて「【八岐】恐ろしい子っ!」とリアクションしている。
朔は、自分が言おうとしていたのを言われてしまったが、相手は癸なので先回りされて当然だと諦観して、その通りと頷いた。
朔「【八岐】は、【霞童子】を口車に乗せ【先代】との『近親相姦』の【醜聞】を企てながら、同時進行で【まほろば鳥の一族】の滅亡のシナリオを描き、【
洸「同時かよ………欲張りだな。『二兎を追う者は一兎をも得ず』って言葉知らねえのか」
【
朔「頭が8個あるからな………兎も8羽追えるだろうな」
冗談のようなことを朔は言うが、ガチである。
燎「何なら、【海の民】のほうも手を出そうとしていたかもな」
【
洸「なるほど………無理ゲーを悟って、そっちは手を引いたか」
【前世】の洸は【竜王・祥】の三男【黒竜王】だ。【竜王・祥】を相手にするということは【天界】の【竜種】全員と敵対するだけにとどまらないのを知っている。【竜王・祥】と同時に生まれた【
棗「壮大なこと考える割にヘタレだな。国家転覆を企むなら大軍に怯むなど論外だ」
【前世】の【竜王・祥】の頃は、広大な【中国大陸】の数多の【部族】を相手取ったので
満「二兎?三兎とちゃうんか?【まほろば鳥】は滅んでることになっとるんやから」
満の言葉に、洸は【まほろば鳥】は【大闇主之王】攻略と【天孫族】攻略の一部だから二兎だ、と言った。
燎「【海の民】も【
燎は【前世】の【
燎「【八岐】は【日子坐】に【天女の羽衣】は『決戦兵器』だと吹き込んだ」
朔「はぁ?【天女の羽衣】って………あのペラペラの【
【通力】を込めたら切れ味の良い刃物になりそうだが、それだけのような気がすると朔は言った。
燎「あの【比礼】は、【
桂「白と黒の絞り染めか?」
桂の【前世】は【
燎「白と黒の『斑模様』だったな!」
燎は思い出すように少し考えてからそう答えた。絞り染めと斑模様とでは異なるが、そこは桂と燎の価値観の違いだ。
桂「それは、【
【盤古】は嵩張るので、それを携帯タイプに作り直したのが【盤古比礼】だと桂は言った。
燎「【太極盤】………あの【比礼】が【太極盤】になるのか?」
燎は素朴な疑問を口にしただけなのだが、桂の視線がこれだから脳筋は、と言いたげだった。
癸「燎………君の頭は『応用力』がないのかね」
【比礼】がなぜ白と黒の絞り染めなのか考えてみなさい、と言った癸は気づいたようだ。
遙「【太極盤】はな………【盤】ではなく【太極図】のほうに【
別に【盤状】の形でなくても良い、と遙は言う。
洸「紙に特殊なインクで【太極図】を描いただけでも【
【陰】の黒塗りが地味に面倒でインクも消費するから描く奴なんていないがな、と洸は言った。
桂「俺は、軽量かつコンパクトそして、見た目の美しさを追求した。その究極の形が【比礼】だ」
癸「ショールとして羽織ればオシャレだねえ」
桂の美意識に癸が共感する。
桂「やはり、お祖父様はよくわかっている!」
朔「素材が『【
桂「ほお………素材は理解できていたか!」
だが価値より性能を見てほしかった、と桂は父上よりはマシかもなと言う。
【蚕蟲】とは文字通り【
この『【蚕蟲】の繭』で作った絹織物を【太乙真人(前世の桂)】は【
桂「【比礼】をクシュクシュと丸めるとパズルのように図柄が完成する」
その完成図が【陰陽太極図】になる、と桂は『絞り染め』の技術を利用した芸術品だとドヤる。
満「お前、ドヤッとるけど【
【盤古】は『最終兵器』やぞ、と満はそれが【
満「【重力操作】【高エネルギー射出】何でも有りの『アルティメットハイスペック』やぞ」
桂「そうだ………ただし、使いこなせたらな」
軽はずみだと怒る満に対して、桂は【人間】には使いこなせないからただの【比礼】だと言った。
燎「いや、使いこなした………とまではいかないだろうが、使えた」
【日子坐】は【まほろば鳥】を乱獲した。【天女の羽衣】は【まほろば鳥】の【霊力】で『兵器』として使えたのだと燎は言った。
桂「マジか………!【鬼畜外道野郎】だな。ロクな死に方しないぞ」
【
満「【人間界】で【盤古】が扱えるんは、【
満は【古族】は【王】なら使えるだろうと予測した。
洸「そうだ!【鬼陸之王】!あいつ、【大和時代】には存在してただろ!朔の話の中に全然出てきてねえぞ!」
洸の言葉に遙と棗が、あっ本当だと反応した。
遙「空気扱いでいいんじゃないか」
棗「【現代】では敵対してるから、存在無視しているんじゃないのか」
遙と棗は、アイツ敵だろという意見だ。
癸「多分………パンデミックの収拾に奔走していたのではないかな?」
【崇神天皇】の
癸「【古事記】では【崇神天皇】の【夢枕】に【オオモノヌシ】が現れて、【オオタタネコ】なる人物に祠を修繕させよ、と神託をしたとされている」
満「祖父ちゃん!物知り!………【オオタタネコ】って誰や?」
癸は【崇神天皇】には、この後【アマテラス】からも【神託】があったと逸話がある、と話した。それを切っ掛けに、【崇神天皇】は【神社】建造や【祠】修繕などを行い【八百万の神々】を余すことなく祀ったらしい。
癸「【オオタタネコ】は【オオモノヌシ】の曾孫に当たる人物だよ」
癸は、満の疑問に答えた。【崇神天皇】も【オオモノヌシ】の系譜だけど、9代前なので血縁が濃い曾孫の【オオタタネコ】のほうが効果が高かったかもしれないねえ、と癸は言った。
遙「ああ………なるほど。パンデミックは収束後も土地の【清浄】とか必要だからな」
【土地神】は大変だな、と遙は他人事なので口先だけで言った。
【陸の民の王】は、【土地神】になるので【疫病】が蔓延すると、【地鎮】やら【浄化】やらにかかりっきりらしい。
朔「このパンデミックの後に【崇神天皇】は【四道将軍】を派遣して、武力で【地方豪族】たちを従わせるなど、結構派手に【戦】が展開されてたから【戦場】になった地域なんかでは【疫病】がぶり返したりして、【鬼陸】はそっちにかかりっきりだ」
朔は、俺は空気扱いしてないから、と力説した。
燎「この【戦】の最中に【タケハニヤス】とかいう奴が【謀反】の濡れ衣で討伐された。まったく【天孫族】で同士討ちして意味がわからん」
燎は、【タケハニヤス】の『偽りの謀反』の詳細を話す。
【タケハニヤス】は【山城の国(京都)】の【
燎「まあ………いわゆる【ハニートラップ】だ。若い頃の【日子坐】は、『ひと目見たら女は恋に落ちる』ほどの超絶美形だった」
イケメン爆ぜろ、と燎はセレブイケメンへの憎悪が溢れ出していた。
【日子坐】は【ハニートラップ】の『偽りの恋』で和訶羅姫の元へ足繁く通う。周囲の者は【
燎「ここまでは『シナリオ通り』だ。【オオビコ】と【タケハニヤス】は【和訶羅川(木津川)】を挟んで向かい合った。【オオビコ】は準備万端で武装していたが、ハメられた【タケハニヤス】は無防備だ。だが、当時の【戦】には【儀式】があったから、すぐ進軍とはいかない」
癸「互いの大将が弓矢を射て勝敗を占う、という儀式だね」
癸の言葉に、燎はやはり博識な義父上はご存知でしたか、と褒め倒す。
癸「本当のこと言ってもお世辞にならないことを君は、そろそろ理解したらどうかね」
まったく謙遜しない癸はイイ性格をしている。
この勝敗を占う儀式は、結果次第でモチベーションの上下に関わるので結構重要視されていた。
先に矢を射るのは【タケハニヤス】だったが、身に覚えのない【謀反】の言いがかりに気が動転して放った矢は川へ落ちた。つまりどこにも当たらなかったのだ。これで【タケハニヤス】の
次に【オオビコ】が矢を放つ。矢は空へ向けて放つので、矢が落ちるまで時間がある。万が一、人間のいる所が矢の着地点でも避ける余裕はある。しかし、【オオビコ】の放った矢は【タケハニヤス】の心臓に命中した。無防備の【タケハニヤス】は弓矢以外の武装はなく、ほぼ丸腰で即死した。
【戦】にすらならず、【タケハニヤス】は儀式で秒殺された。
満「何やねん!そのギャグみたいな結果は!【タケハニヤス】ショボ過ぎやろ!」
あまりの呆気なさに満がキレる。
洸「『真の強者は戦をせず勝利する』と言うがな………空に向けて放った矢が心臓直撃って、そんな都合いい話………オカシイだろ!」
最初は厨二っぽい発言をした洸だが、物理的に違和感しかない。
燎「そうだ………矢が心臓直撃したのは【
【オオビコ】は【タケハニヤス】の異母兄なので、殺害の意思はなかった。ハメられた【タケハニヤス】は無防備で【戦】の準備もなく、『シナリオ』では『儀式の行射』で【タケハニヤス】を降伏させる作戦だった。
【和訶羅の郷】は水辺なので【海の民の王】の【支配圏】だ。【和訶羅の郷】では、毎年豊作を祈って【神輿祭】があった。この祭は【現代】では【木津三社祭】になっている。【古代】では【海の民の古族】の【青田坊の一族】【黒田坊の一族】が【神輿】を担いで【神輿】の上では【一族の巫女】が【神楽舞】を披露する。【和訶羅の郷】での【人間】と【古族】が交流する貴重な行事だった。
【青田坊】は緑、【黒田坊】は土を【妖力】で操るのでこの祭の時に土地の【人間】と【青田坊・黒田坊の両一族】が協力して【田植え】をする。【青田坊】は巨漢の強面一族だが、共同作業で【人間】たちは包容力のある力持ちな【あやかし】と理解して、結構いい関係を保っていた。【黒田坊】は美形の一族で元より人気者だったのは言うまでもない。【神輿】で舞を披露するのは【黒田坊一族】の娘だ。
朔「アイツは何でそんなことをしたんだ?」
質問したが朔は、いや待て何かわかった、と言った。
朔「【古族】と【人間】が仲良くしているのが気に入らないんだな!」
【
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