第壹章   霞童子悲恋譚⑤狭穂彦王の叛乱の真相〜比類神子の消失〜

 はじめは、はるかと『内緒ばなし』をしていたので、みちるが呼んでいたのに気づくのが少し遅れた。


 満「ぼーっとしとったで」


 朔「悪い………【狭穂姫】が、なぜ男になったのか考え込んでいた」


 口から出任せである。しかし、気になっているのは本当のことだ。


 満「那岐なぎが【過去の世界】では【狭穂姫】やった言われた時な………俺は何の疑いもせんと信じてもうたわ」


 みちるは、那岐かいらしい(可愛らしい)顔しとるやん、と言った。


 洸「ああ………わかる!あの顔で男とか、マジで詐欺だな」


 あきらは満に同調するが、周囲の者はお前がそれを言うのか、という表情をしている。洸はみずのとを若くした容姿なのでいわゆる『女顔』というやつである。


 朔「【加津戸売かつとめ】は【おお比売】、【かげ比売】姉妹を出産した後の産褥で死亡したが………双子を身籠っている時に双子の【未来】そして双子が懐妊して出産した子の【未来】まで【預言】した」


 つまり子とまだ形も成していない孫の【未来】まで見透みとおしたということだ。


 癸「それは………すごいねえ。ひのとでも生まれていない子の【未来】を預言するのは無理だと思う………多分………」


 癸は、最後のほうは自身なさげになっていた。


【国宝】扱いされる『国内唯一の【夢見】』である丁は、基本【上位国民】だけが御簾越しに面会できるが例外的に丁の兄弟姉妹だけは事前申告すれば面会が許されている。ただし、全て盗聴、盗撮されてプライバシーは侵害されまくっている。


 故に【夢見】の中でなく、直に丁と対面できる貴重な人物の1人が癸だ。彼は丁の【預言能力】はかなり複雑なものではないかと考えている。【夢見】の中へ入れない癸には確証が持てないので推測の域を出ないが、実はその推測が当たっていることを癸が知るのは先のことである。


 満「まさか、その【預言】で孫が【未来の世界】へ【漂流】する言うたんちゃうやろな」


 そこまで当ててたら逆に怖いで、と満は言う。


 朔「【漂流】は、【亜神あしん】の仕業だったから、それを【預言】することはできないと思うぞ。一応、『人智が及ぶ範囲』しか【預言】は無理だろ」


 洸「【亜神】のじゃなくてな」


 洸が朔の言葉のチョイス間違いを指摘すると、朔がお前は細かいことをぬかしやがって、と口論する。


 今は、朔が話の主導権を握っている。口論していると話が進まないので、癸が喧嘩は後回しにしようか、と言って仲裁した。


 気を取り直して朔は続きを話す。


 朔「【預言】は、生まれる子は女の双子ということ、そして片方は2度不運に見舞われる」


 不運に見舞われたのは【大闇見戸売おおくらみとめ】だった。【日子坐ひこいます】の【佐保】侵略で【大闇見戸売】は手籠めにされた。そして、2年の歳月が過ぎ再び【日子坐】は【大闇見戸売】に手を出した。 


 朔「【日子坐】は、【大比売】に言うことをきけば【まほろば鳥の一族】に手を出さないと脅したが………結果を見ろ。【まほろば鳥】は乱獲されて【奴婢ぬひ】に堕とされた」


【日子坐】は『約定を違えた』のだ。


 癸「双子だったね。もう片方は?」


 どちらが姉なのか妹なのか、解らないけれど【預言】は片方だけだったのかと癸は訊く。


 朔「【預言】は姉の【大比売おおひめ】と妹の【景比売かげひめ】の2人の【未来】を示していた」


大闇見戸売おおくらみとめ】は不運を【預言】されていた。そして、もう片割れの【御景見戸売おんかげみとめ】は彼女とその子のものだった。


 朔「もう片方は『我が子と非業の最期を遂げる』だった。………子と孫の【未来】と言ったが、孫は『オマケ』だな」


 孫の【未来】を【預言】したなら、『【男のまほろば鳥】が生まれる』と言ったはずだ、と朔は言った。


 将成「確かに………『我が子と………』では主体になっているのは娘さんのほうになるか………」


 これでは孫のほうは偶然、【預言】に絡んでいただけという線が濃厚だ。 

  

 洸「【八岐大蛇ヤマタノオロチ】に殺されたも同然って言ってたな………まさか、アイツが【翼】を引き千切ったとか?」


 洸の予想を朔は否定する。


 朔「見捨てたんだよ………母親が違うとはいえ【景比売】は【八岐】の姉で真王まおは甥だ」


 朔は【八岐】は今でいう『サイコパス』だと言った。


 朔「【景比売】と真王は、【魔界】に呑み込まれた。【八岐】は、側にいたというのに助けるどころか、2人を【にえ】にして自分だけ逃げた」


【魔界】という単語にみずのとは、反応した。


 癸「『領域展開』が起こったのかね。………【古代】から【魔界】の存在があったのは驚きだね」


 あれは、神出鬼没の【異界】だからねえ、と癸は言う。どうやら【魔界】について知っているようだ。


 棗「【魔界】………初めて聞く単語だ。【精神】だけは1万年以上生きているのに未だに知らないことがあったとは」


 棗の【前世】である【竜王・シャン】は、【創造神・伏羲ふっき】が最初に創った4体の【幻想種】のひとつなのでかなり古くから存在する者だった。


 因みに【伏羲】が最初に創った4体の【幻想種】というのは『【鱗】を持つ者』、『【翼】を持つ者』、『【4本足】の獣』、『甲羅を持つ者』の【古代中国】で【四象ししょう】と呼ばれる【起源の霊獣】である。歳月が過ぎ、彼らは【四聖獣】と呼ばれるようになった。そして【種類】から【種族】単位になるくらいに数が増えた頃に、【種族】の長が【青龍】【朱雀】【白虎】【玄武】の【称号】を賜り、これを【四神】とした。


 桂「ファンタジー小説などに出てくる【異界】を意味するものとは違うのか?」


 かつらは、【鬼神】とか【鬼】とか【眷属鬼】とかが棲む【世界】で描写されるだろ、と言った。


 洸「全部【鬼】じゃねえか!他はどこに行った!」


 すかさず洸がツッコみを入れる。


 桂「【東洋】だからな………【悪魔】は【西洋】だろう」


 どうやら桂の中では【東洋の魔界】には【鬼】しかいない考えのようだ。


 洸が、そういうことは【世界共通】で考えようかと洸と桂の兄弟が口論をしているのを一瞥した棗だが、それを放置して棗は癸に教えを請う。


 棗「癸様!【精神年齢】だけはバカみたいにくっているくせに、無知な恥を忍んでお願いします!【魔界】とは何であるかお教えください!」


 普通ならただの【自虐】だが、【転生戦士】の棗の【自虐】がエグいのにやや引いている癸の姿が画面に映っている。


 癸「棗は、自己評価が低いねえ………私の『クズ愚息』と離婚したとはいえ、君のことは今でも義理の娘だと思っているからね。そんな他人行儀な言い方しないでほしいよ」


 血縁上は、私は叔父だよと癸は娘婿の燎に対する態度とは正反対で棗に接する。


 燎「義父上………自分と棗とで扱いに格差を感じます」


 燎は、義親子で叔父と甥、姪と関係が同じなのに差があることを指摘する。


 癸「君と棗が同列なワケがないだろう………娘を奪った憎っくき婿と、十数年間も『クズ愚息』の面倒を見てくれた『良妻賢母な嫁』と貢献度が全く違う」


 棗は、癸の長男と【政略結婚】していた。この長男が朔や遙たち【四兄弟】の実父である。癸が実子を『クズ愚息』と言うくらいなので、ヤラカシていることが想像できる。


 遙「実の親に『愚か』だけでなく『クズ』と言い捨てられるとは………レオ………ざまぁ!」


 遙の最後のざまぁ発言に、ざまぁかよと洸がツッコんだので桂との口論は終わったようだ。


 篁灑音たかむられおん────────────癸の長男で棗の元夫だ。レオは愛称である。本来なら、高齢の癸────────────見た目は若くとも実年齢は高齢者────────────は隠居して実権は癸が握り現場は長男に任せるというのが【忍】では通常なのだが、現状を見れば灑音が後を任せるに足りないせいで、未だに現役で出張らなければならない。これでは確かにガチで『愚息』と言わざるを得ないだろう。


 桂「癸お祖父様、そう悪く言うものではない。レオ殿にも取り柄はある。………あの人、『ハニートラップ』得意じゃないか」


 桂は、フォローのつもりだった。しかし地雷を踏んだ。


 癸「そうだねえ………『床上手』は認めよう。でも、【忍】には不要だから!【甲賀】は【医療特化】!」


 情報を引き出すのに【床】は最適とされるが、【甲賀】は体ではなく【薬】で解決と癸は言った。


 満「祖父ちゃん………それは『ヤク漬け』にして生殺与奪権握るんとおんなじや」


 満のツッコみに癸は、満が継いでくれたら隠居できるのにと言った。これは、跡継ぎ問題の話題でオチに使う言葉なので、【甲賀】の後継ネタは強制終了された。


 癸「【魔界】とは何かだったね………私が知る【魔界】は神出鬼没の【異界】だ。出現条件は不明」


 目下、調査中なのだよと癸は申し訳なさそうに言った。どうやら調査は思うように進まず提供できる情報がほとんど無いらしい。


 朔「年に一度、日本全国から【古族】が【かい】の為に【王都(京都)】に集合する。【神無月】十日とおか


 つまり、10月10日は【古族】が会合をするのが恒例でその日は【魔界】が『領域展開』するのが確実な日だと朔は言う。


 将成「朔………知っているなら、知っていると………」


 朔「『10月10日』は【非能力者】は『外出禁止令』が出てるだろうが」


【古族】の恒例行事は隠しているが危険が伴う【非能力者】の外出禁止を【夜狩省よがりしょう】が徹底しているだろう、と朔は言った。


 癸「神無月………ああ、なるほど『神の無い月』か」


 10日という日にちに何か意味があるのかね、と癸の質問に朔はさあな、と言って燎に知ってるかと訊く。


 燎「何だっけ?【六曜】でそうなったんだったか?」


 燎もわからないようだ。


【六曜】とは【大安】【友引】【先勝】【先負】【赤口】【仏滅】のことだ。


 癸「絶対に違うだろうねえ」


 癸は、バッサリと言い切った。娘婿にはどこまでも厳しい。


 燎は、義父上が冷たいといじける。


 桂「父上、毎年変動する【六曜】は基準にならんだろう」


 息子の桂は、バッサリ切られた理由を説明したが父親の残念さにガッカリしている。


 洸「そもそも誰が決めたんだ?」


 決めた奴に聞けばハッキリするだろうと洸が言ったので、朔が決めたのは【鬼陸之か《きくがのみこと》】だと言った。


 遙「追求は無理だな」


 残念だ、と遙はあまりそんな感じはしない口調だ。


 朔「元々は、【山】【陸】【海】の【王】たち、【外界けがいの民】たちの交流会だった」


【会】の開催を始めたばかりの頃は何もなかったが、歳月を重ね【会】が恒例になった頃には気づいたら【魔界】と【人間界】が接近する現象が起こった、と朔は言う。 


 洸「10月10日に、毎年【古族】が集まって【魔界】が『領域展開』します………なんて言えねえな」


 大パニック確実じゃないか、と洸は言う。


 燎「【古族】というのは、『強き者』はマウント取り合って、『弱き者』は目を付けられないように気を張って、中途半端な連中は優勢の奴の尻馬に乗って………結構カオス展開だ」


【魔界】が接近する理由や『領域展開』する理由は、場が混沌とするせいだと燎は『自然災害の一種』だと思って、寄らず触らずの対応が最適解だと言った。


 燎「将成の所へ、きちんとした理由説明ができないのは【古族】が一箇所に集まると聞いて妙な気を起こす奴が現れるからな」


 将成「確かにそうですね」


 とりあえず、【魔界】に関しては【古族】には接近がわかるので、【夜狩省】へ都度報告ということで落ち着いた。


 癸「それで、【魔界】に呑まれたというのはどういう状態なのかね?」


 呑まれるということは、【魔界】には生物が生息していない【ブラックホール】のような現象なのかな、と癸は訊く。


 朔「そうだな。ファンタジー小説なんかだと【魔人】とか【魔王】とかが住んでる【異界】になっているが………『虚無の異界』と言うべきか?」


 とにかく、何も無いということだ。


 朔「実際に危険なのは、【魔界】ではなく【人間界】と【魔界】の『境界世界』だ」


【異界】と【異界】が隣接する時、その『境界』に【深淵】が生まれるのだと朔は言った。


 癸「ところで、その【会】は今でも開催しているのかね?」


 朔「俺と燎は呼ばれることはないと思うぞ………影連かげつら祖父様が俺たちへのオファー全部シャットアウトしてるから」


 朔の言葉に、あははは、そうだねえと癸は苦笑いした。


 玲鵺「【会】なら今も恒例行事ですよ」


 玲鵺れいやは、【雪華葬挿せっかとむらいざし】で氷漬けになった狐月こげつを鋭い目で一瞥して言った。


 将成は、『あの事件』が10月10日だったことを思い出した。


 朔「あれな………俺は、きのえ祖母様の『オシオキ』がなかったら、コイツらを『境界世界』へ放り込むつもりだった」


【山の民の王】としてはケジメつけないとな、と朔は視線だけで射殺せそうな目で【雪華葬挿せっかとむらいざし】の中の2人を見る。


『境界世界』へ放り込むすなわち、『殺処分』だ。  


 満「物騒な奴っちゃな!」


 洸「お巡りさーん!ここに殺人鬼がいますー!」


 ノリで言った洸だが、朔が刑事やないかーい、と自ら額をペシッとして『ひとりノリツッコみ』をする。  


 雰囲気が和んだ所で、遙が【魔界】に呑まれた者はどうなるのかと訊いた。


 朔「【人間】なら間違いなく2度と【転生】できない」


『世界のことわり』によって、【生物】は【精神体となって】死後【冥界】へ行く。【冥界】とは【人間界】と【地獄界】の間にある【はざまの異界】である。ここには【幽界かくりょ】もあるが同一ではない。【冥界】は【迷界めいかい】が語源で【洞窟迷路ダンジョン】になっている。この【洞窟迷路】をクリアできたら【黄泉比良坂よもつひらさか】に辿り着き、後は【三途の川】を目指す。川を渡れば【地獄界】だ。


 桂「人間か………では【古族】は?」


 燎「【古族】は【魔界】の接近がわかる。………普通は『境界世界』に落ちたりしない!」


 燎は【八岐】は非常識なんだ、と言って同じ【山の民】の同胞を置き去りにしたことに怒りを隠せない。


 棗「話が変わるが、お前【前世】で今日は飲み会中止とかドタキャンしたのは【魔界】のせいか?」


 棗の質問に燎は頷く。なるほどそれで【魔界】を知らなかったのか、と棗は納得する。


 燎「【老子】が【魔界】の存在を知ったら、『今日からここは私の寝室だー』とか言って【魔界】を改造しそうだからな」


 燎は、だから説明しなかったという言葉に、さすがにそれはないだろう、と棗は言いかけたが【魔界】は『虚無の世界』と聞いたのを思い出して、本当に寝室に改造しそうと想像して、もし【太上老君】が改造してしまったらどうなるのか、と訊く。


 燎「【魔界】は【混沌】から生まれるから、また別の【魔界】が生まれることになるだろう」


 燎は【生物】が存在する限り【魔界】はなくならない、と言った。


 燎「【0機関ゼロきかん】が間引き依頼を出して来るのは【混沌】を吸収し過ぎて【魔界】が拡大しないように、調整するためだ」


【0機関】とは『国連の影の組織』と呼ばれているが、『影の組織』なので詳細は不明だ。【ボス】に当たる人物が、【原初の亜神】だった【悪神】と【善神】の【夫婦神】で今は【人間界】で【現神うつしよしん】となって『世界平和の理想郷』を造ろうとしていると、冗談のような目標を掲げているが、彼ら【原初の亜神】は数万年前に【クトゥルフの邪神】と闘い【ルルイエ】という【海底都市】に【封印】した【神々】の内の2柱と、【代表者】のプロフィールだけしか紹介されていない。


 癸「【魔界】に呑まれた者が【転生】する可能性は低いかね」


 癸の質問に、一同はどうなんだと朔と燎を見る。


 朔「聞いたことねえな………」


 燎「【人間】を基準にした情報しかないからな………」


 朔と燎が言うには、【魔界】が『領域展開』しても【山の民】は【山】へ【海の民】は【海】へ【陸】より高い所、低い所へそれぞれ避難するので知らないのだ。


 癸「これは、私の想像なのだがね………【魔界】に呑み込まれた【御景見戸売おんかげみとめ】と真王まおが生まれ変わったのがひのとではないかと考えたのだがねえ」


比類神子ひるこ】は『神々の寵愛を受けし者』だろう、そんな【人間】が【現代】に存在することが【転生説】の理由なのだがね、と癸は言った。


 桂「ああ………無神論者の多い【現代】に『神々が寵愛を授ける』ほどの【人間】が存在すること事態がオカシイ………ということか」


 癸の想像に共感した桂に、その通りだよと癸は頷いた。


 それを黙って聞いていた遙は、2人かと考えている。彼は真王が生まれ変わりと予想していたが、【魔界】に呑まれることがイレギュラーなので1人の【魂魄】が次の1人へと【等価交換】するとは限らない。


 遙(2人が1人に生まれ変わる………あり得るかもな)


 さすが癸祖父様、頭の細胞の数が自分とは桁違いだと遙は癸の説に感心した。


 洸「身も蓋もないこと言うなよ………俺【僧侶】だぞ。一応、【弘法大師】の信者なんだからな」


 俺は【御仏】の導きは実在すると信じている、と洸は【僧侶】らしいことを言った。それは裏を返せば【神】は信じていないということになるのだが。


 朔は、【転生説】は有りとも無いとも言えないと言った。


 朔「この一連の様子を全て見ていたのが【生神せいしん】と【死神ししん】だ」


 朔は、満に言われるまでは真秀まで【漂流】しているとは知らなかったがと続けた。


【比類神子】は『神々の寵愛を受けし者』で、その寵愛を授けるのは【亜神】とて例外ではないらしい。【生神サクヤ】の前身は【天孫族】の先祖に当たる【ニニギノミコト】に嫁いで子ども3人を出産した【コノハナサクヤヒメ】なので、既に【血】は薄くなったが子孫の様子を【天上界】から覗き見していたらしい。


 朔「当時の【闇嶽之王くらみたけのみこと】だった俺は【亜神】が実在しているとは思ってもみなかったから、その存在を初めて認めた瞬間だな。【狭穂彦】と【狭穂姫】を【漂流】させたのは【生神】と【死神】だ」


 満「行き先が、俺が発見する所まで込みやったんか?」 


【漂流】して来た【狭穂彦】、【狭穂姫】、真秀を発見したのは満だ。それに対して朔は、そこまでのサービスはないだろ多分偶然だ、と答えた。


 癸「【狭穂彦】と【狭穂姫】と言っていたのに真秀まで連れて来てくれたのは?」


 朔の話には【漂流】させるのは【狭穂彦】と【狭穂姫】だけだったね、と癸は訊く。


 朔「【狭穂姫】が輿入れする時、真秀が【采女うねめ】として付き従い【狭穂姫】と真秀の2人で入れ替わった。だから2人で【狭穂姫】だ」


【采女】とは高貴な女性の身の回りをお世話する役目で、【奴婢ぬひ】の身分だった真秀には破格の待遇であった。


 朔「2人1役が可能なほど容姿がソックリだった。そして、【狭穂姫】に成り切る為に真秀は【鳥人とりびと族】の『【生命】と【矜持】』の【翼】を自ら斬り落とした」


 真秀が【翼】を斬り落とした経緯と【漂流】に真秀が一緒だった理由はわかった。2人で【狭穂姫】だったのだ。確かに【比類神子】2人の【生命】と【人間】2人の【生命】では数の上では【等価交換】だが、【比類神子】の価値と【人間】の価値が【亜神】視点では全然釣り合わない。故に1人増えたほうが【等価交換】に近いという考えなのだろうか。


 しかし、【奴婢】の真秀がなぜ【狭穂姫】の【采女】に取り立てられ、更に【狭穂姫】を名乗ることになったのか謎が残る。



https://kakuyomu.jp/users/mashiro-shizuki/news/16818622171743018247

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