第壹章 夜狩省のルーツ④〜夜狩衆から夜狩省へ(後編)〜
影千代は、癸に龍造寺翁の話をしてお互いにまだ気持ちの整理がつかないと言った。
影千代「龍造寺ジジイは、斬られる前に投げ飛ばしてやった!それでも息絶えなかった。ホントにしぶといジジイだった」
癸「投げたんだ………でも死因は斬殺らしいから………ホントだしぶとい」
癸は、遙から影千代が激オコだった話を聞いていなかったので、斬られる前に投げ飛ばされていたのは初耳だった。
悪行を重ねていたとはいえ、老人を投げ飛ばすのは虐待行為だが、それをやったのは【屍人】なので罪に問えるかは微妙な所だが、別の人物に葬られているので将成は聞かなかったことにした。陵
影千代「そこの茶パツのイケメンが、今の【ヘッド】なんだろう?【狐の花嫁】の脱走の件は片付いた」
影千代は、癸に龍造寺へ一応一矢報いたことを告げた後に【
影千代「【狐小僧】共々、『氷の中へ閉じ込めた』氷は溶岩でも溶かせないし………取り出す方法は無い」
満「【狐小僧】………ああ、あのヤラカシ小僧か………『氷の中』っちゅうことは、洸の【
それやったら洸か【亜神・竜神】かしか取り出すのは不可能や、と満は影千代の溶岩でも溶かせないの言葉から【凍結行】と解った。
将成「できれば確認したいのですが………」
将成は、凍らせた現物を見れないかと訊く。
影千代「聞いてみる。じゃあ、私はこれで………癸、また相見えよう!」
さらばだ、と影千代は画面からフレームアウトした。
満「また相見えようって………また遙に【ドッペルゲンガー】出してもらう気なんか!」
あれが遙のひとつ前の【過去世】とは信じられん、と満は
画面の向こうでは、洸の声がした。
洸「癸祖父様、こんにちは。みっち(満)、お前は関西弁と顔のギャップが相変わらずだな。【ヘッド】見えるか?」
あれがそうだ、と画面に映った洸は後方を指差した。
癸「【
あの2人が若い【妖狐】と【破談花嫁】かな、と癸は将成に訊いた。【妖狐】のほうは顔を知っているが、【元花嫁】の顔を癸は知らないのだ。
満「祖父ちゃん………【破談花嫁】って言い方!」
満はもう少し包んでや、と言った。
洸がこれでドヤッと言った後に氷の彫刻がアップになったので、おそらく洸がノートパソコンを氷の彫刻へ近づけたのだろう。
氷の彫刻の細部まではっきり見える。これが【忍】の【必殺技】とは思えない精巧な彫り上がりだ。そして、中の【人間】は間違いなく若い【妖狐】とその【元花嫁】だった。
将成「間違い無い。確認できた………ありがとう」
経緯は聞かない。【元花嫁】は【魔堕ち】して【妖魔】となったので【討伐対象】だ。
洸「【ヘッド】、ヤラカシ小僧は最初から【捨て駒】にするつもりだったようだ。朔は謝罪の形として
若い【妖狐】のほうは【古族】なので【人間】のルールでは裁けない【治外法権】になるので【古族】との軋轢を心配した将成だったが、洸の話ではその心配はなさそうだ。
癸「【子ども狐】がこうなってしまっては………【茨木童子の
【焔狐】は、死に際に自身の【狐火】で身を焼く。そして【毛皮】だけを残す。この【毛皮】が【焔狐の家宝】である。貴重な最後の【家宝】を渡したということは、これで遺恨は無しという証だ。もっとも表向きだが。【鬼神族】は【茨木童子の花嫁】を【狐火】で攻撃されたことを許さない。【鬼神族】は【花嫁】が現れることが奇跡のようなものなので、彼らは【花嫁】を宝物のように大切にする。
満が洸に、【雪華】を売るのかと訊く。【
洸「【元嫁】のほうの【法要】が済んだら、一寸おじさん夫妻のものだ」
洸は一寸法師が購入したと言った。
癸「【オークション】に出したら、千万$からのスタートだろうねえ」
一寸法師は、1億円と見ていたので癸の言葉に見誤りました、と画面に『テヘペロッポーズ』をしている姿が映っている。
満「ぐぬぬ………中身はオッサンやのに、見た目が美少年やから、なんかカワイイで」
恐るべし見た目年齢詐欺、と満は呟いている。
癸「普通なら1億円スタートだよ。けど、【
癸は彫刻の形状維持の保証と中身の【ツガイ】で、通常の10倍ぐらいの価値になっていることを説明した。
【古族の花嫁】は、【破談】しても【花嫁資格】は失効しないらしい。そのせいで【古族】のほうが生涯独身を送ったという前例がある。
画面の向こうで少し騒がしい音が聞こえる。
一寸法師は、振り返って騒ぎをチラ見してから癸に【鬼神族】たちが、【花嫁】を害した2人に高値がつくことに納得できないと激オコだと告げた。
将成は、その現場になったパーティーに出席していたので、ああやっぱりと納得した。
癸「騒いでる人たちは放っておいて、【暴徒騒動】の続きを話そうか」
【鬼神】たちが、【
一寸法師は、【鬼神】たちに絶対に壊さないようにと警告────────────【鬼神】たちにとっては脅迫────────────してから話し始める。
一寸法師「続き………といっても、これはもう結論だけど暴徒たちは【菌】に冒された【人間】を探していたんだよ」
【ミ=ゴ】は【惑星ユゴス】から生まれる【菌生物】である。人の形をしていて背中には透明な羽が生えているので【妖精】のように見えるが、その正体は【菌】である。非常に知能が発達していて、【人間】の体内に【菌】として侵入しスパイ活動をする。この【人間】は侵食されることになるが、スパイ活動が知的好奇心からのものなので、【悪意】【害意】はない。つまり、攻撃的な【モンスター】ではないのだ。【外なる神】と呼ばれる【旧支配者】とは別系統の【邪神】を信仰している【独立種族】である。【外なる神】は【別名【
癸「【外なる神】カテゴリーは、【惑星】の外つまり【宇宙】を拠点とする【邪神】で直に干渉して来ることはない。【ニャルラトテップ】は例外で自由に動き回れるけどね。【外なる神】は、はるか高見から【人間界】を見物している存在だ」
【外なる神】は、元は【旧神】だったと言われているので【邪神】でも、【侵略者】や【支配者】ではない。
将成「暴徒たちは、なぜ【菌】に冒された【人間】を探していたのでしょうか?」
一寸法師「【アザトース】の声を聞いた者は気が触れる。眠りから覚めたら世界が消滅するなど………碌なことにならないだろうね」
【アザトース】は盲目白痴にして全知全能、【万物の王】である。しかし、【玉座】である【ゆりかご】から動くことはできない。動きに制限のない【ニャルラトテップ】が世話係の役割を担っている。
一寸法師は、【暴徒化】はおそらく【アザトース】の泣き声を聞いてしまったせいだと推測した。
将成「泣き声………『声を聞いた者は気が触れる』………確かに【伝承】通りですが」
全人類ではなく、限定されているのが将成には腑に落ちない。
一寸法師「【ミ=ゴ】に侵食された【人間】は【シュブ=ニグラス】の【加護】か【祝福】を受ける。だから精神が安定を保てる。【ミ=ゴ】が崇拝する【シュブ=ニグラス】は【アザトース】の妻だ」
満「【ゆりかご】から動かん【嬰児姿】の【アザトース】に嫁さんがおるいうんは、奇妙な話やな」
癸「【邪神】とて【神】………。人智の及ばない
満のツッコみを癸がそこはツッコんではイケナイ所だと諭す。
【アザトース】が目覚めたら────────────この場合は白痴の状態から健常な状態になることを指す────────────世界が消滅するのを防ぐ為に【シュブ=ニグラス】が【ミ=ゴ】を使ったと考えられると一寸法師は言った。
ウラシマ「けど兄者、なんで【邪神】の妻が【邪神】の亭主の目覚めを妨げるんだ?」
旦那が昏睡状態みたいなもんだろ、とウラシマは【邪神】だけに悪妻なのかとジョークのようなことを言う。
満が【王様】ウマいこと言うたな、と食いついたが癸が【シュブ=ニグラス】の『母性』だねと言った。
癸「【シュブ=ニグラス】は【大地母神】の【邪神】………【邪神】なのに【大地母神】というのが矛盾してるけど、彼女は【大地母神】の使命を果たしただけ………なんだろうね」
【邪神】の考えがわからないので、癸は語尾を濁す形になった。
将成「夫は【破壊神】、妻は【調和神】………ということでしょうか」
そんな感じ、と癸は肯定した。
癸「面白いことに、彼らの子の【邪神ヨグ=ソトース】は【時空神】で、【時空間】を操れる」
癸は、万が一【アザトース】が覚醒して世界が消滅しても彼の子の【ヨグ=ソトース】が【時間】を戻して『消滅がなかったこと』にできるらしい、とあくまで伝承だけどねと言った。
将成「【破壊神】の父に【調和神】の母、その子は【創造神】………ということになるのでしょうか?」
将成の質問に、癸はそうだねと答えた。
癸「夫婦親子で【三大主神】ということになる」
【邪神】なのだが【外なる神】は【人間】の敵ではないのだ。【破壊】【調和】【創造】の概念が揃っているので【ヨグ教】【ニグラス教】といった【宗教】まである。
将成「【ヨグ教】【ニグラス教】は………そういうことでしたか。さすがに【アザトース】を信仰する【宗教団体】はあったらマズいですが………」
それは自ら【テロリスト】を名乗っているようなものだ、と将成は頭の片隅で考えた。
一寸法師「【ミ=ゴ】は【ニグラス教】を信仰する者を侵食して、【アザトース】の泣き声で暴徒化した【人間】の【脳】を集めていたんだよ」
一寸法師は、おそらくそれを暴徒が見て身の危険を感じて【ミ=ゴ】に侵食された【人間】を探して狩ろうとしていたのだろうと言った。
【ミ=ゴ】には【蒐集】の趣味があり、主に【鉱石】を集めるが知能が高いので知的好奇心から『生物の脳』を【脳缶】という【アーティファクト】のような容器に入れて、持ち帰って研究することがある。その研究で【脳改造】されたのが【異能力者】のルーツとも言われている。
これが事実なら【外なる神】は【旧支配者】が再び【封印】から目覚めた時に、闘える準備をしていると考えられる。
一寸法師「【非能力者】の【β種】に【ナンバーズ】がいるよね。【ナンバーズ】の中から後天的に【異能力】が発現するのは、【ミ=ゴ】に【改造】されたという説は【ヘッド】も知ってるでしょ」
一寸法師の言葉に将成は頷く。
将成「【脳】を改造されたとも【秘密の特訓】をされたとも、ガセネタのような噂話がありますね」
【ミ=ゴ】が知能の高い【生命体】ならば【脳改造】はガチかもしれないと、将成は調査依頼で『【ミ=ゴ】の生態観察依頼』を出してみようと考えた。
一寸法師「回収した【脳】を元の正気に戻らせて返すか、【検体】として扱うか………どちらとも考えられるけど、暴徒たちには死活問題だからね必死だよ」
でもだからと言って疑心暗鬼と欲望に任せて暴虐の限りを尽くすのは間違ってるよね、と一寸法師の表情が無になっていく。当時を思い出しているのだろう。
一寸法師「僕も
これが【九州】の【暴徒騒動】の顛末だった。【中国地方】の【暴徒騒動】は、立花
癸「【北海道】のほうは、
だから【風魔の里】が手薄になっていたのだよ、と癸は一寸法師とウラシマに言った。
当時、【風魔の里】には影千代、
そこへ
ウラシマ「神無の計算通りで気分悪いぜ」
これを偶然とウラシマは思っていない。
癸「【風魔の里】でのこと………【暴徒騒動】で主戦力が分散している間に
【夜狩省】は【国営】と【民営】の曖昧な立ち位置で、【夜狩省】単独で【行政】【立法】【司法】の【三権分立】が成り立っている。故に【ギルド】は【夜狩省】の傘下に入るという形で【民間人】の【武装】が許されているのだ。
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