第壹章 夜狩省のルーツ②〜雑談〜
癸「暴徒と化したのは、いわゆる【半グレ集団】と呼ばれていた連中なんだけどね」
一同は、ああやっぱりと納得した。
癸「【地球外】へ逃げた連中の家族なんて、見せしめに【磔】にされたからね」
癸の言葉に、
癸「ロケットを打ち上げる前に、自分たちは『新天地で国造りをする』と宣言したんだよ」
ホントにバカだよねえ、と癸は黙って消えるのが【粋】というものだと言うが、【粋】【無粋】の話ではないだろう。
満「アホや………救いようのない底なしアホや」
将成「予告逃亡………」
将成は、これだから【特権階級】はとブツブツ文句を言っている。おそらく自分たちは助かるけど皆さんご愁傷さまという意味で宣言したのだろうが、結果は自滅している。
癸「【ロケット】を打ち上げた【九州】方面が、一番荒れたようだよ。これを見事に収めたのが当時は【侠客一家】だった【豊後会】の
将成「長佳琶様は若い頃は【女傑】と呼ばれたほど方だったそうですね」
将成は、今は『内助の功』で夫の紹吾を支えていると聞くと言った。
癸「長佳琶が『内助の功』?
遙「【豊後会の極妻】………俺が行った時はいなかったようだが」
【極妻】に遙が食いついた。
癸「それは残念だったね。長佳琶は美熟女だよ」
癸は遙の『熟女好き』を知っているので、お気の毒にと言う。
満「祖父ちゃん、それを言うなら【美魔女】や」
すかさず
将成「それより、遙は【九州豊後会】へ何をしに行ったんだ?」
あそこの前身は【任侠一家】だったので将成は、ものすごく嫌な予感がする。
遙「
遙は、【レジェンドクラス】に挑んだ────────────戦闘したのは嵐だが────────────とドヤ顔しているが将成は、ここで気絶して聞かなかったことにしたくなった。
満「『オールド雷神』対『ネオ雷神』!」
将成の憂鬱さとは逆に満は、激アツや、と興味津々である。癸は『ニュー雷神』って言わないんだね、とどうでも良いことにツッコんでいる。
癸「
癸は、【雷神】対決の軍配の行方が気になった。同世代の
遙「引き分けだ。………【風神】の先生が俺と対戦してくれたら第2Rもあったのに………」
遙は【風神】高橋
満「お前………【豊後会】の【サブマス】にまで喧嘩売ったんかい!」
満は、遙の【バトル中毒】の旺盛さに呆れる。
癸「引き分けか………いいね!勝負の内容が聞きたい」
話が脱線していることをツッコみたいが、将成も【ダブル雷神対決】の過程は知りたかった。
遙「決着は、初手でドロー………」
朔「立花道雪が【伝家の宝刀】まで出した勝負をドローのひとことで片付けるなよ」
癸「道雪に【
それは、期待以上の成果だと癸はどう引き分けたのか訊いた。
非公式な対決とはいえ【レジェンドクラス】が【必殺技】を披露しているのだから結果によっては、道雪の沽券に関わってくる。将成も気が気でなかった。再び暴動が起こる可能性が無きにしもあらずなのだ。
遙は、
遙「嵐は、ギリギリまでどう引き分けるか考えて………手の甲で弾いて、それでも勢いがあったのを『倒立して脚で【無刀取り】』して引き分けだ」
遙が対決の内容を話した後、しばらく沈黙が流れた。
沈黙を破ったのは癸だ。
癸「
癸は、彼の亡き父君は【根の国】(あの世)で「よくやった」と喜んでいるだろうね、とこれまで保留にしていた【山中一族】の【当主】をこの場で決定した。
将成「癸様………そんな簡単に決めてよろしいのですか?」
【山中一族】は、【甲賀】の【大身】で【伊勢神宮】の【裏の
癸「【レジェンドクラス】の立花道雪に『伝家の宝刀【雷神檄】』を打たせて、更にそれを奇抜な方法で受け止めた。非公式とはいえ、【九州豊後会】のギルドメンバー全員が観戦していたし、遙の手に【漆黒の盃】がある以上は証拠と証人が揃っているからね」
私は元々認めていたのだよ、と癸は言った。
癸「【伊賀】のクソジジイ共が、嫡男というだけで【山中一族】を継がせるのは理由が弱いとか理屈こねるから、私まで悪者にされてしまったではないか!」
ふっふっふっ、これでクソジジイたちもぐうの音も出せまいと癸は【黒いオーラ】を流しているので、相当腹に据えかねていたようだ。
【伊賀組】と【甲賀組】は『不倶戴天の敵』という見方をされているが、実際は【三代目・服部半蔵
こういった歴史的背景から、【伊賀組】と【甲賀組】は跡継ぎの決定など重要な案件は双方で協議の上で決定する仕組みになっている。癸が戦死した母の跡を継いで【甲賀総帥】に就任する時も大荒れに荒れた。癸は【今代】の【甲賀総帥】に就任して結果はわかっているが、彼は【起源の五英雄】と称賛される結果を出して全員を納得させた。
癸は将成に、今聞いてたから報告済みだよと言うと将成は報告は構わないが、『お歴々』の賛同を得られるのかと訊く。
癸「
朔「癸祖父様………今うっかり脅すって言ったな!」
朔は、流血沙汰にならないようにしろよ、と影連を巻き込むことには異論はないようだ。
遙「ところで、【夜狩省】の成り立ち話は続けないのか?」
遙は、【甲賀】の後継問題はどうでも良いようだ。
遙「俺は影千代の記憶があるから無理に聞く必要ないからこれで失礼する」
遙は画面からフレームアウトする前に、【八犬士】の配信後にファイルのロックが解除される仕様になっていると告げた。
朔「一寸法師とウラシマが、癸祖父様に挨拶したいそうだ」
朔が画面からフレームアウトしたのと入れ替わりで一寸法師とウラシマが画面に映り、息ぴったりの動作でぺこりと頭を下げて挨拶した。
癸「顔を合わせるのは何十年ぶりだろうね。片方は、若返った?もう片方は大人になったね」
癸が若返ったと言ったほうは一寸法師のことだろう。
満「【竜宮城の王様】と【影の帝王さん】やないか」
満は、【薬】の材料調達で【ニライカナイ】と『物々交換』する間柄なので、代表的立場の一寸法師とウラシマとは顔見知りだった。
癸「ふたりとも、満の伯父さんだよ。彼らは
満は、伯父さん俺は
将成「癸様………初耳なのですが………彼らは【漂泊の者】なのでは?」
【夜狩省】では【過去】から【漂流】して来た【漂泊の者】となっている。
癸「ふたりとも、自己紹介は自分たちでするかい?」
画面に映る一寸法師とウラシマは、癸の言葉に頷く。
一寸法師「【ヘッド】、改めまして陵影連と篁乙の長男・陵
ウラシマ「同じく四男・
2人の名前が消息不明の影連の長男・四男と一致する。
将成「【漂流】した【過去世界】から『帰還した』ということですか?」
満「【帝王さん】のほうが兄ちゃんやったんか!」
将成の質問に満の驚きの声が被った。
癸「『帰還した』というのは半分正解だ。なぜ『帰還できた』かを話すと長くなるから、それは私が文章でまとめて提出するよ」
癸は、【チェンジリング】の説明が究と灼が誰の【転生】で正体は【禍津神】だと色々と説明が必要なのでレポート提出を申し出て省いた。
癸「満、2人とも【超越の者】に【覚醒】しているから見た目が若いけど、究の年齢は確か………還暦超えてるはずだよ。灼は還暦を迎えたか還暦ちょっと前ぐらいかな?」
癸は、あくまで自分たちの【時間換算】だけどねと言った。
【漂泊の者】は【漂流】の際に【肉体的変化】が起こっている。故に一寸法師とウラシマの【時間感覚】は、彼らが陵究、陵灼として暮らしていた時から計算が合わないだろうと癸は考える。
一寸法師「癸様、僕は【現世時間】だと【古希】目前ですね」
でも【覚醒ドワーフ】なので外見はこのままですよ、と一寸法師は答えた。
ウラシマ「俺は、癸様の予想通りですよ」
【地仙】になっているので兄同様、外見は老けないとウラシマも答えた。
ウラシマが【地仙】になっていると聞いて、満は一寸法師に質問した。
満「【帝王さん】も【地仙】になれたやろうに、なんで【ドワーフ】選んだんや?」
【超越の者】に【覚醒】した際に選択肢がある。その選択肢は、【採集ミッション】という形で現れ【ミッション達成】で結果が出るのだが、先人たちが情報を開示しているので、【薬草採集】は【覚醒エルフ】、【鉱物採集】は【覚醒ドワーフ】に等とネタバレしている。故に【美形補正】という特典が付いている【覚醒エルフ】を選択する者が多い。しかし、【地仙】になれる方法だけは不明である。唐突に【人間をやめる】【人間を続ける】の2択を迫られ【人間を続ける】を選んだ場合に【地仙】になれるということだけは明らかになっている。【忍】がそのヒントを持っているという【都市伝説】のような噂があるが、真偽は不明だ。
癸「その話は長くなるから、後から個人的に質問しなさいねー」
癸はにこやかに威圧して質問を中断させた。将成も聞きたかったのだが、癸には逆らえないのであきらめるしかない。
一寸法師「【九州】での【暴動事件】のお話してましたね」
癸「そういえば、【九州】に派遣されたのは究だったね」
一寸法師「当時の僕は【十番隊】でしたよ」
あの頃は12才だったので懐かしいなぁと一寸法師は言うが、今も見た目だけは12才である。
癸「究は、8才で【十番隊】の隊長に就任したんだよ」
満「歴代隊長でも最年少ちゃうか」
癸「桂も8才で隊長になってるよ。でも、究のほうが先だね」
優秀な甥と孫を持って鼻高々だよ、と言って癸は鼻の先にグーに握った右手と左手を直列に当てる。
満「祖父ちゃん、それは『天狗の鼻』や。使うシチュエーションちゃうで」
『天狗の鼻』を作るリアクションは、自画自賛する時だと満はツッコむ。
ウラシマ「癸様………イマドキ『天狗の鼻』リアクションはしませんよ」
ウラシマは、癸のリアクションの古さをツッコむ。隣で一寸法師が「鼻高々ってやるよね」と言って同じ仕草をしているので、彼の感覚は癸寄りのようだ。
一寸法師は、将成に君が
一寸法師「【九州】の暴動では、一緒に闘った仲なんだよ」
と一寸法師の言葉に将成は、父親から聞いたことがあった話を思い出した。父・将繁は、『顔はカワイイが激戦を物ともしない生意気なガキ』と言っていた。
その将成の表情から一寸法師は、ディスられてたのかなと言う。
一寸法師「初対面で、ガキの遊び場じゃねえ、って怒鳴られたからなあ………」
第一印象は、最悪だったようだ。
一寸法師「でも、【鬼畜狩り】が始まったらすっかり打ち解けて、お互い背中を預け合うぐらいには信頼関係が築けてたはずなんだけど………」
そう思っていたのは僕だけ、と首を傾げる一寸法師の姿は中身は古希が迫ったオッサンでも、外見は絶世の美少年なので小悪魔的な可愛さだった。
癸が、少年の姿はイイネどんな仕草もカワイイよ、と叔父バカを発揮している。それを見て満は、英雄も只の叔父バカやな、とジト目を向けていた。
将成「父からは………見た目はカワイイけれど激戦では頼りになった………と聞きました」
すいません半分は嘘です、と将成は心の中で謝る。
一寸法師「うん………生意気なガキ、って言われたみたいだね」
秒で一寸法師にバレた。
ウラシマ「兄者も言われたか!俺と姉上も似たような感じのこと言われたな!」
ウラシマ(
ウラシマ「あ………姉の鶴姫は、長女の
ウラシマは、鶴姫の素性をバラした。もう自分たちの身バレがしたのでいいだろうと考えてのことだ。
将成「えっ!【鶴姫御前】も【陵家】の方なんですか!」
【陵家】なんて人材豊富だ、と将成は心の中で羨ましがった。
満「【鶴姫御前】と言えば………【帝王】さんら、【瀬戸内水軍】の【インスマウス症騒動】知っとるか?」
満が一寸法師とウラシマに訊いた所へ、将成が俺への報告は、とその話聞いていないともの申した。
今ので聞いたことにせえや、と満が言い返した後に一寸法師は、騒動が収まった後に連絡があったと答えた。
一寸法師「満が【
一寸法師がぺこりと頭を下げるのと同じようにウラシマも頭を下げた。息ぴったりだ。
癸「話を戻していいかな。【九州】の【暴徒事件】の話の途中だったよねえ」
癸は、この話は【国家】と【民間】の中立にある【夜狩省】のトップとして聞いておくべき話だと言った。
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