第15話

「それで、池面太郎いけめんたろうくんとやら。神宮寺は一体何を考えてやがる?何故俺に、こんな嫌がらせをしてくる?」

「ハハ、言ってくれるね。でも、美涼は嫌がらせのつもりじゃなく、あれで真面目に考えて行動してるんだ」

「髪の毛入りのチョコがか!?」

「あれは俺たちにも予想外だったんだ。信じてくれ」


信じられるわけがない。チョコを渡された時の俺の態度は明らかに喧嘩腰であり、それでも黙って見守っていたのは、中身がだと知っていたからではないのか。


「こう、と決めたことにはとことん突っ走るのが美涼なんだ。聞く耳を持たないから、俺たちも散々振り回されてきたんだけどね」

「あのさあ、それでこっちも少なくない被害受けてるし、宝城さんに至っては転校までする羽目になったんだぞ」

「その件に関しては本当に申し訳ない。美涼の口を割らせるのに手こずってしまって、知った時にはもう全てが終わった後だったんだ」


ますます胡散臭い。何故知った時に何も言わなかった?確かに部外者が今更騒いだところで、後の祭りだが。


「今まで美涼が振り回してきた事柄は、ほとんどが良い結果を生むことばかりだったんだ。だからこその油断があったとは思う」

「今回、お前たちが一緒に来たのは、暴走を止めるためだったのか?」

「ああ、去年の反省を踏まえてね。美涼は絶対に受け取ってもらうため、と解釈してたみたいだけど」

「結果はこのザマだけどな」


太一はクラスメイトの肩を借りて保健室へと運ばれた。吐いた後のゴミ袋の始末も竜堂がやってくれている。


トリマキーズがやったことといえば、神宮寺を連行して、イケメン太郎が謝罪したくらいだ。


「矢上みたいに、美涼にズケズケ言ってくれる人がいれば、俺たちのグループも多少はマシだったのかもな」

「バカ言え。バレンタインの一件が無ければ、俺なんざキョドってまともに会話もできねーよ」

「まあ、俺と美涼も高校は別々になるし、おりからは解放されることになるさ」

「問題ぶん投げただけじゃねーか!そもそもお前がしっかり手綱握ってないからだろ!」

「耳が痛いね。この後、みんなで美涼に説教はするけど、右から左だろうな……」

「頼んねー連中だなオイ」


つまり、トリマキーズはそもそも池田の取り巻きで、その中に神宮寺という幼馴染型核地雷が設置されていたということか。確かにそれなら不可解な動きに納得いかないまでも、理解はできるな。


神宮寺の進学先は、私立オゼウサマ学園になるらしいし、俺の周りで起きたこの騒動は、一先ずの落ち着きを取り戻すことになるだろう。


来年、また襲撃を受ける可能性も十分にあるのだが、とりあえずの平和を喜ぶとしようか。




……なお、余談だが例の小箱が引っかかった大木は、どこをどう歪めて伝わったのかはわからないが、恋が叶う大木として告白の聖地になってるそうな。真実を知る俺たちはもちろん、あえて何も語ることは無いが。


……リア充呪われろ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る