第14話【過激表現注意】

竜堂が割って見せたチョコの断面には、確かに髪の毛が入っているのがわかる。


しかもこれは偶然入ってしまったレベルではない。明らかに仕込まれた量だ。


「グヘッ、おぇぇぇ……」


教室の後ろへ駆け出し、ゴミ箱へ胃の中身をぶち撒ける太一。なんなんだこれは?俺がザマァしてやるつもりだったのに、こちらの動きを読んでいたのか、斜め上過ぎる状況が発生している。いくらなんでもこんなこと予想出来るか!


「お前……何考えてやがる!」

「え、なんで?私何か悪いことした?」


激怒する俺に、神宮寺は何故怒っているのかわからない、とばかりにきょとんとしている。


「チョコに髪の毛入れるとか、どういう嫌がらせだと聞いている!」

「だって私みたいな美少女の髪の毛だよ?普通はご褒美だって…ムグッ!」


詰め寄ろうとした矢先、取り巻きの内、一人の女子が背後から神宮寺の口を素早く塞ぐ。


「撤収!」


リーダー格っぽい奴が号令をかけると、二人の男子が口を塞がれたままの神宮寺の両腕を取り、ズルズルと後ろ向きに教室の外へ引き摺っていく。他の取り巻き達も、守るというより犯人を囲むようにして去っていった。


何が起きたのか、本当にわからないことばかりだ……


リーダー格の男は教室の入り口付近で、神宮寺が遠くへ連れて行かれたのを確認した後、唖然とする俺たちの元へ来て、頭を下げた。


「申し訳ない!俺たちもまさか、美涼がここまでの事態を引き起こすとは思ってなかったんだ」

「お前、誰だ?」

「ああ済まない、自己紹介しておくよ。俺は池田吾郎いけだごろう、美涼の幼馴染ってやつだ」


池田、と名乗った男は太一のような残念系とは違う、雰囲気からして本物のイケメンだった。身長も竜堂ほどではないが十分に高く、いかにも爽やかなスポーツマンといった感じだ。


教室内はさっきの騒ぎがまだ静まっていないものの、数名の女子がキャアキャア言いながら熱い視線を送っているのを見ると、思わず神を呪いたくなるぜ。

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