第13話【過激表現注意】
そして迎えた2月14日。
放課後の教室で待ち構える俺たちの所へ、神宮寺がやってきた。今回はトリマキーズも引き連れて。
……慌てるな、想定の範囲内だ。イベント日ということもあって教室内にはまだ他の生徒も多くいる。迂闊なことは出来ないはずだ。
「お待たせ。今年もちゃんと、手作りしてきたよ」
神宮寺の発言に周囲がどよめく。「嘘だろ……」とか「何で陰キャに」とか「野郎、ブッ○してやる!」とか聞こえてくる。まあ校内人気ナンバーワンは伊達ではないってとこか。
「あの子に謝罪するまで受け取るつもりはない、と言ったはずだが」
「その相手が逃げちゃったし、しょうがないよねー。受け取ってくれないとどうなるか、わかるよね?」
そのためのトリマキーズというわけか。しかし普通ならこんな態度の俺に怒りを向けてきそうなものだが、連中は暖かく見守る者、ハラハラしてる者、我関せずを貫いてる者など様々だ。コイツらの考えも正直わからないんだよな。
仕方ない。予定通りのプランで行くか。
黙ってチョコを受け取ると、神宮寺は満足そうな笑みを浮かべる。だが、お前の望む形にはしてやらねーよ。
俺は机の上にチョコを置くと、太一達の方を向いて一言告げる。
「敷島太一、真壁竜堂、二人に毒味役を命じる!」
「承知仕りました」
「うん、わかったよ」
またクラス中が騒がしくなる。まあ神宮寺からの手作りチョコを他人に分け与える、ましてや最初の一口を、なんて考えられないだろうな。
「ちょ、ちょっと、なんでそんなことするのよ!」
「俺はきちんと受け取った。その後どうするかは俺の勝手だろ?」
「……矢上君がちゃんと食べてくれるなら、別にいいけど」
そう言いながらも明らかに不満なのは見てとれる。当然のことだが俺は食べるつもりは全くなく、このままノリと勢いに任せて二人に全部平らげさせるのだ。
これが俺たちがない知恵を絞って考えた作戦。俺の評判が地に落ちることも覚悟の上だが、神宮寺に一矢報いるためには今更そんなことどうでもいい。
「ふむ、溶かしたチョコをハートの形に流し込んだ、ごく普通のタイプでござるな」
「一口サイズで食べやすそうだね」
チョコを手に取った二人の一挙手一投足に、クラス中の注目が集まる。
だが、トリマキーズは俺の行動に一瞬、意外そうな顔をしたものの、その後は見守る姿勢を崩さない。ブチ切れしてもおかしくはないはずなんだが。
「モゴモゴ……味は良いものでござるな。されど、湯煎の作業がイマイチでござったか?何やらザラついた食感が……」
「…………………!!!」
味の批評に移っていた太一だが、竜堂はしばらくチョコを眺めた後、突然顔色を変えた。
「太一君!食べちゃダメだ!吐き出して!」
「モゴッ……ど、どうしたでござるか竜堂殿!?」
「これ、髪の毛が入ってる!!」
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