第6話
投げられた小箱はグラウンド周りに植えられている大木に当たり、パキャッ、といい音を出して跳ね上がった後、下へと落ちて……いかなかった。
どうやら枝にリボンが引っかかってしまったようだ。
「な、なんてことするのよ!」
「こっちのセリフだバカ野郎!宝城さんのチョコを壊して踏んづけるとか何考えてやがる!」
「私が最初に渡したの!私のチョコが一番最初なんだから!」
なんだコイツ……話にならない。俺は肩でドン、と神宮寺を押し退けると、宝城さんのチョコを拾ってそっと胸に抱く。
「ごめんね宝城さん、こんな形になっちゃったけど、君のチョコは俺が責任を持ってきちんと食べるから」
「あ……あ……」
俺の声に、ようやく正気を取り戻した宝城さん。だが、俺の胸元にある残骸を見て一条の涙を流した後、静かに膝から崩れるようにして気を失ってしまった。
「メディック!メディーック!」
「ほ、宝城さん、大丈夫!?」
「太一、先生を呼んで保健室へ来てくれ!竜堂、そっち側頼む!」
背中と膝裏に手を回し、スカートが捲れないよう気をつけながら、両サイドからのお姫様抱っこのような形でそっと運んでいく。身長差を考えたら太一竜堂コンビの方が良かったかもしれないが、何が何でも俺が連れて行きたかった。
元凶である神宮寺はいつの間にか姿を消していたが、保健室へ向かう道中で例の大木を蹴ったり揺すったりしてるのを見かけた。
大木は竜堂が同じことをしてもびくともしないサイズだし、女の子一人でどうこうできるものじゃないだろうな。ま、知ったこっちゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます