第4話

「ねぇねぇ、何騒いでるのー?」

「……ッ!!!」


声のした方に顔を向けた瞬間、空気が凍りついた。四人とも硬直したまま声が出せない。


「どうしたの?急に固まっちゃって。私、何か変なこと言った?」

「……」


無理もない。視線の先にいたのはあの神宮寺美涼。校内カーストトップに君臨する女帝とも言える存在。


成績は当然のように優秀、運動はそこそこ。その愛嬌のある笑顔と人当たりの良さで入学以来圧倒的な人気を誇り、取り巻きたちを集めて結成した陽キャグループが、彼女への無謀な告白やお誘いからその身を守っている。


もちろん俺たちは畏れ多くて、今まで話すどころか半径5m以内に近づいたことすらないのだが、そんなラスボス級が何故かたった一人で話しかけてきたのだ。始まりの街をうろついているレベルの残念トリオや地味子ちゃんではまともに会話できるはずがない。


「じ、神宮寺殿は……確か隣のクラスでおじゃったかと……」

「そうだけど、何か楽しそうな声が聞こえてきたから気になっちゃって」


かろうじて問いかける太一だが、何か言葉遣いがさらにおかしくなっている。陽キャパワー恐るべし。


「あっ、チョコレート?……誰が貰ったの?」

「え?あの、えと」

「う、お、俺、だけ、ど」


一転、急に低くなる声にビビる俺たち。さっきまでとは違う圧力に戸惑うばかりだ。


「ふーん、そっかそっか、なるほどね〜」


俺と宝城さんへ、交互に舐めるように視線を移していく。なんで?何が起きた?何かお気に召さないことでも?


再び机の上に視線を戻した神宮寺は、宝城さんのチョコをひょい、と持ち上げ、しばらく鑑賞するかのように眺めたあと……




それを床に思いっきり叩きつけた。

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