第3話

「あの……少し、いいですか?」

「ひ、ひゃいっ!な、なんでござりましょうか!」


思わぬ女子からの呼びかけにキョドる太一。


宝城ほうじょうさん……だっけ、どうかしたの?」


宝城ナントカさん。クラスメイトだが名前までは覚えていない。席が隣になったこともあったが、あまり目立たず、会話も必要最低限しか交わしたことのない、いわゆる地味系の子だ。


「矢上君……これ、受け取ってもらえますか?」

「お、俺に!?」


そう言って差し出してきたのは、明らかにそれ、とわかるもの。


ねねねまっさかまさかの大逆転!マジですか、マジなんですか、今日はもしかして俺の命日になるんですか!?


想定外の出来事に、おっしゃー!と叫びそうになる寸前、ふと落ち着きを取り戻す。


そういえば俺と太一、竜堂はつい先日非モテ同盟を組んだ同士たち。いきなり裏切るなんてことがあっていいものか。そう思って二人に顔を向けるのだが……


「祝福させてもらうでござるよ平蔵殿!」

「平蔵くん、同盟からの卒業第一号だね!おめでとう!」

「太一、竜堂、お前ら……」

「???」


俺たちの小芝居に呆然としている宝城さんに、改めて向き直る。


「ありがとう。喜んで受け取らせてもらうよ」

「……!」


宝城さんの顔がパアッと明るくなる。俺も今まで生きてきて良かった、そう思わせる笑顔だ。


「あの、お二人にも……お小遣い少なくてこんなのしか無いけど……」

「な、なんと!それがし達にも頂けるでござるか!」

「わあ、ブラックワンダーだ。僕、これ大好きなんだ」

「俺、今日という日を絶対に忘れない……」


駄菓子を貰ってはしゃぐ残念イケメンとゴツい男、そして机の上に置いたチョコを拝む俺。なんて絵面だよ。

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