第8話 初めての、好きって言葉。
「土曜日の朝。
スマホのアラームが鳴る前に目が覚めた。
今日、華乃と会う。
それだけで、胸が高鳴っていた。
何回も鏡を見直して、服装もチェックした。
正直、こんなに「会う前に緊張する」なんて思ってなかった。
そしていよいよ。
スマホを握りしめながら、待ち合わせ場所に向かう途中——
「あ、輝人!」
振り返ると、華乃が少し息を切らしながら走ってきた。
「お、おはよう」
「おはよう……ふふ、なんか変な感じ」
「変な感じ?」
「こうやって会うの、久しぶりだし……通話ばっかだったから」
「そうだな……でも、ちゃんと会えて嬉しい」
「……私も」
お互いに、ぎこちなく笑い合う。
でもその距離感すら、今は心地いい。
「今日は華乃の行きたいとこ、連れてくって言ったよな」
「うん。実はね……行きたい場所、もう決めてあるの」
「どこ?」
「……私の家の近くの公園、知ってる?」
「え、公園?」
「うん。特別な場所じゃないけど……輝人とゆっくり話したいから」
華乃らしいな、と思った。
そういう何気ない場所が、逆に嬉しい。
「じゃあ行こっか」
並んで歩く。
自然と歩幅が合って、何も言わずに隣にいることが、すごく自然だった。
公園に着いて、ベンチに座る。
「ねえ……」
華乃が小さく声をかける。
「ん?」
「昨日の通話の続き、してもいい?」
「続き?」
「……直接、言うんだよ?」
胸がドキッとする。
そうだ、今日はちゃんと、この気持ちを伝えに来たんだ。
お互いに向き合って、少しだけ顔が近づく。
「輝人、好きだよ」
小さく、でも確かに届く声。
「……俺も、好き」
言った瞬間、華乃の顔がふわっと赤くなって、でも嬉しそうに笑った。
その笑顔が眩しくて、俺も自然に笑っていた。
初めての「好き」のやり取り。
それだけで、世界がちょっと変わった気がした。
「次は、もっと特別な場所にも行こうな」
「うん。でも今日は、この公園が一番特別だよ」
二人でベンチに座ったまま、ゆっくり流れる時間を感じていた。
——これが、俺たちの「はじまり」だった。
夜明けの好き 輝人 @nog1_love
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます