第7話 約束
華乃が「私も」って言った瞬間、スマホを通してでもわかるくらい、空気がふわっと柔らかくなった。
でも、なんか……それっきりお互いに何を言っていいかわからなくて、静かになってしまった。
「……なんかさ」
俺が先に口を開く。
「うん?」
「直接言えたらよかったのにな」
その言葉に、しばらく間が空いた。
でも次に返ってきた華乃の声は、ほんの少し震えていた。
「……私も、そう思ってた」
「今度、会わない?」
言った瞬間、手が汗ばむ。心臓の音が耳に響くくらい速くなってた。
「……ほんとに?」
「うん、ちゃんと会って、直接言うよ」
「……うん」
華乃の声が小さくなる。
でもその小さな「うん」が、すごく大きく響いた。
「いつがいいかな」
「……私、来週の土曜日なら空いてる」
「わかった、じゃあ土曜日。俺から誘ったから、華乃の行きたいところ連れてくよ」
「え……どこでもいいの?」
「どこでも」
「……ふふ、楽しみにしてる」
会う約束が決まった瞬間、通話越しなのに、二人の距離が一気に近づいた気がした。
そして、華乃がポツリと呟いた。
「なんか……今、会いたくなってきちゃった」
俺もだよ、って言いそうになったけど、その言葉は胸の中に留めておいた。
「じゃあ、土曜日まで我慢だな」
「うん……その代わり、寝る前に毎日電話してもいい?」
「もちろん」
それを聞いた瞬間、華乃が「やった」って小さく喜ぶ声が聞こえた。
その声が、たまらなく愛おしかった。
次の日から、土曜日が来るまで、俺たちは毎晩寝る前に通話をすることになる。
——お互いに、直接「好き」って言う、その日を楽しみにしながら。
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