第2話 ずっと話したい夜

「ねえ、最近何してたの?」


「んー、特に何も。学校行って、塾行って、ダラダラして……そんな感じ?」


「ふふ、変わってないね」


「そっちは?」


「んー……私もそんな感じ。でもね、今日ずっと考えてたの」


「何を?」


「輝人と、最後にちゃんと話したのいつだったかなって」


その言葉に、一瞬胸がぎゅっと締めつけられた。俺も考えてた。華乃と話したいって、ずっと思ってた。だけど、お互い忙しくて、いつの間にか連絡を取らなくなってて……。


「そういえば、結構前かもな」


「うん……だから、今日突然電話しちゃった」


「……ありがとう。めっちゃ嬉しい」


「ふふ、よかった」


通話は、まるで止まることなく続いていった。何を話しているかは、もうあまり覚えていない。ただ、何を話しても楽しかった。


「ねえ、輝人ってさ」


「ん?」


「誰かと電話してると、途中で眠くなるタイプ?」


「え、どうだろう……でも華乃と話してると、安心するかも」


「……うん、私も」


そんな会話をしながら、時計を見るともう23時を過ぎていた。


「そろそろ寝ないとヤバくない?」


「……まだ寝たくない」


「え」


「なんか、今日はひたすら話したい気分なの」


俺も、同じ気持ちだった。


「じゃあ、眠くなるまで話す?」


「うん」


そこからまた、時間がゆっくりと流れていく。


どうでもいい話、少し真面目な話、昔の思い出。気づけば、俺たちは何時間も話していた。


「……ねえ、輝人」


「ん?」


「今日はね、すごく幸せな気持ち」


「俺も」


「そっか……なら、よかった」


眠たそうな声。でも、まだ切りたくない。


「華乃、またこうやって話そうな」


「うん……約束」


それが何より嬉しくて、俺はスマホを握りしめたまま、気づいたら寝落ちしてしまっていた。

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