夜明けの好き

輝人

第1話 ある土日の夕方、突然の通話

日曜日の夕方。特に予定もなく、部屋でダラダラとスマホをいじっていた。最近、華乃とはしばらく連絡を取っていない。最後にやり取りしたのはいつだったか……。そんなことを考えながら、適当に動画を見ていると、不意にLINEの着信音が鳴った。


「……?」


画面を見ると、華乃からの通話だった。


——華乃!?


驚きで心臓が跳ねる。なぜ急に? 何かあったのか? それとも……。


一瞬、出るべきか迷ったが、指が勝手に通話ボタンを押していた。


「もしもし?」


「……あ、出た!」


華乃の声が弾んでいる。ちょっと緊張していたが、彼女の明るい声を聞いた瞬間、ほっとした。


「久しぶり。急にごめんね、今大丈夫?」


「うん、大丈夫。てか、どうしたの?」


「うーん……なんかね、急に話したくなったの」


——急に話したくなった?


その言葉が妙に心に響く。最近連絡を取ってなかった分、余計に意識してしまう。


「そっか。俺も久しぶりに華乃の声聞けて、なんか安心した」


「ふふ、私も。最近忙しかったけど、なんか輝人の声聞いたらほっとした」


華乃の声が少し甘くなった気がして、心臓がまた跳ねる。


そこから他愛もない話をしていたのに、ふと沈黙が訪れた。気まずいわけじゃない。ただ、お互いに何かを言いたいけど、言葉にできないような、そんな空気が流れる。


「ねえ……」


不意に華乃が口を開いた。


「ん?」


「なんかさ、最近輝人とあんまり話してなかったから……ちょっと寂しかった」


胸がぎゅっと締めつけられる。そんなこと思ってくれてたんだ。


「……ごめん、俺も話したかったのに、なんかタイミング逃してた」


「じゃあ、今は?」


「え?」


「今は話したい?」


——ずるい。


そんな聞き方されたら、もう素直になるしかない。


「めっちゃ話したい」


「……そっか。よかった」


電話越しに、彼女が微笑んでいるのが分かる。


その夜、俺たちはいつもより長く、たくさん話した。何を話したかは覚えていない。でも、華乃との距離がぐっと近づいたのは、確かだった。

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