魔物との交戦

私達クラスメイト35人を引率するのは、騎士団長がよりすぐった3人の騎士さんたち。


ピオニー女騎士は、読心魔法で相手の意図を読んだり、思念伝達テレパシー魔法を使って混戦時でも味方の間の意思疎通を取り持てる紫魔法剣士。


魔法剣士のなかで最新の兵種だそうで、優梨ゆりと話してるとピオニー女騎士の名前がよく出る。紫魔法の弟子として慕っているようだ。


あとの2人、シャトルーズ騎士とベゴニア女騎士は騎士団の同期で、魔法を使わない生粋の剣士。ピオニー女騎士より数年先輩だという。


なにかの理由で以前はピオニー女騎士を仲間はずれにしていたけれど、最近、優梨が間をとりもって、騎士団長の前で仲直りさせたらしい。


アラザールの街の門を出て、一時間半くらい行軍したあたりで、薄暗い森に入り、空気がじとーっと湿っぽくなってきた。


先頭を進んでいたシャトルーズ騎士が立ち止まり、右腕をななめ下に伸ばして停止を命じる。


ピオニー女騎士からテレパシーで指示が伝わってくる。


<音を立てずに抜剣>


シャトルーズ騎士もベゴニア女騎士も、剣を抜いた。


後衛の生徒を中に入れた陣形で、剣士組のクラスメイトが周囲を囲む。


右手側の茂みが揺らいだ、と思ったら、赤茶色いかたまりが飛び出してきて、着地する前にシャトルーズ騎士が長剣で叩き伏せた。


反対側の茂みでも、ベゴニア女騎士が両手剣で2つの赤茶色の毛皮を着たモノを斬り伏せる。





この2人、さすが騎士団長さんのよりすぐりだけある。すごい反射神経だ。


「ツノギツネか、この季節に森に出ているのは珍しいな。こいつらは群れるから近隣の村に注意させないとな」


「これは魔物なんですか?」


シャトルーズ騎士の説明だと、ツノギツネは額のところに一本大きな角のついた魔物で、群れで森に近い村の家畜や家禽を襲う、ということだった。


「ラノベなんかだと、魔石とか素材とか取ったりするところですけど、どうします?」


支倉はせくらたつみか、解体してる時間はねえぞ」


「じゃ、とりあえずこのまま回収しときます」


巽がそう言うと3頭ぶんの死骸がどこへともなく消えた。


「タッくん、何したの?」


「癒やしの聖女様よ、オレさまは青魔導士、時空魔法のなかでも、異空間にモノをしまう収納魔法はお手の物だぜ」


周りのクラスメイトからも


「支倉すごーい!!」


なんて声が上がって、幼馴染としてはすこしだけ鼻が高い。


「習ったばっかりで練習中だから、仕舞しまうことは出来るけど、出したいときに出せる自信、まだ無いんだよね」


私だけに聞こえるようにちょっと困ったような顔で言うのを聞いて、巽は昔のままだなあ、と思う。


2人の騎士さんは剣についた血を拭って、また先に進む。私達も遅れないようについて行く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る