九龍花園

彩亜也

九龍花園

 富める者には祝福を、貧するものには絶望を————彼の国はいつしか政府の手を離れマフィアだの革命軍だのがそれぞれに権利を主張する無法地帯と成り果てた。

 そんな彼の国で最もマフィアに支配された街と言えば大陸の東に位置し半島と呼ぶには広大な土地を埋め尽くす様に広がり続ける集合住宅街————人呼んで花園ガーデンを置いて他にはないだろう。

 マフィアが執り仕切るその街は荒廃したこの世の地獄だと世間から疎まれているがその実、中は恐ろしいまでに快適で彼の国のどの土地よりも賑わっていた。

 花園の中はそれぞれ居住区だけでなく商業区や工業区、景観区などに別れており外へ出ることなく全てが完結するユートピア。そして驚くべきことにここには大陸の人口の実に四割が暮らしている。

 その中でも幅広い階級が共存する花園が九龍花園クーロンガーデンと呼ばれる東洋の女帝蘭花ランファの支配する集合住宅街だった。

 九龍花園は特区と貧民区をアトリウムで分けたミルフィーユ構造で花園で初めて貧民区民向けに太陽光を取り入れたとして貧しい階級に好まれている。また(かつて存在した聖女の術を人工的に再現したもの)によって富裕層からの支持も厚く常に空き待ちの人気花園であった。


 この物語は九龍花園を舞台に繰り広げられる恋奇譚ラブストーリーである。

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