第18話 快楽
お酒を飲む練習をしているがなかなかうまくいかない。本当にお酒を飲むのが好きな人なんているのだろうか。お酒が好きな人というのは、本当にお酒が好きなのではなくて、アルコール分を摂取することで、頭をぼんやりさせたり、人と話したりするのが好きなだけなのではないかと思ってしまう。本当にお酒の味が好きな人などいるのだろうか。
どうしてもお酒を飲めるようになりたい。特に、ジントニックをさらりと何杯も飲めるようなかっこいい女になりたい。私はジントニックを何杯も飲む女がかっこいいという偏った考えを持っている。私の大好きな作家の作品の登場人物たちがよくジントニックを飲んでいるからだ。普段は本を読むなら、本棚の場所をとるしお金がかかるので図書館で借りるので済ませたいと思う質だが、その作家が好きすぎて、その人の本はどうしても文庫でコレクションしたい。その人の本を読むときは文庫に0.9のシャーペンで書き込みをしながらじっくり楽しむ。0.9のシャーペンを使うのは、0.5のシャーペンを使うと薄い文庫の紙に穴をあけてしまうからだ。その人の本を読むとき、たいていかなり興奮しているので、筆圧が高くなってしまうのだ。そして話をジントニックに戻すと、登場人物がジントニックを飲むたびに、「ジントニック来たー!」と書き込みをする。そういうわけでジントニックに激しい憧れがある。最近、スーパーでジントニックを探し、購入した。家に帰ってよく見てみるとジンソーダだった。日を改めてジントニックを買った。正直言って美味しいとは言えない味だった。どちらかというとまずかった。
私は食べ物を残さない主義なのだが、この前買った発泡酒はこの世のものとは思えないまずさで、半分以上流してしまった。「発泡酒まずい」と検索すると、ビールや発泡酒をまずいと思うのは正常らしく、舌で転がして味を楽しむものではなくのど越しを楽しむものだ、とか、同僚と楽しく話しながら飲むという行為とビールの味が共に記憶されることによって、美味しいものだと脳が誤認するとか書いてあった。でもこの前、アルコール14パーセントの梅酒をロックで飲み切れた。指の皮をむしることに快楽を覚え、依存しているが、傷が痛むという苦痛も伴う。苦痛と快楽は隣り合わせで紙一重だと思うから、お酒を好きになることをまだあきらめてはいない。
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