一場面スケッチブック

八咫空 朱穏

P.1『本物の夜空』

 一度でいい。


 誰もいない草原に寝そべって、果てなく続く夜空の星を眺めたい。瑠璃るり色の天蓋てんがい刺繍ししゅうされた贋物にせものの夜空は、もう見飽きてしまった。


 自分には大きすぎるベッドから体を起こして、窓の前まで歩いていく。


「本物っていいなぁ……」


 王宮の中から眺める夜空は、どこまでも遠くにあるように見えた。

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