血も涙もなき吸血鬼

バイもち

第1話 ヴァンパイアハンター

「吸血鬼には突出した身体能力があり…」


先生が淡々と授業をしている。生徒たちは黙々と授業を聞き、真面目に取り組んでいる。

とても静かな教室の一角に、快晴の空を眺める少年がいた。


「そして、その他の特徴は……って、スーラン?

そろそろまともに板書を写してくれないか?」


授業中は基本青空の観察。あまり人と関わろうとしない生徒アレン=スーラン。

いつものように先生の注意を意に返さず、変わらず空を眺めている。


「はぁ……」


アレンのいつもの調子に先生は肩を竦める。

大きな問題を起こす生徒ではないものの、

世話を焼く相手ではある。先生が強くでれないのもこのせいだろうか。

そんな中、授業の終わりを告げるチャイムがなる。

先生は納得がいかないと言わんばかりの顔をして、

退出をした。


今は昼食の時間だ。

続々と生徒が食事のために教室を後にする中、

アレンは未だに空を眺めている。何が楽しくて眺めているのか、何を考えているのか、それは誰もわからない。


アレンが通っている学校、

セレティア王国に存在する学院

[アルレディア教会学院]


王国一番の教会[アルレディア教会]が直接運営する対吸血鬼育成所、つまりはヴァンパイアハンターを育成する施設である。


人は昔から吸血鬼と対立して生きてきた。

それもそのはず、吸血鬼は人の血を欲する。

そのような捕食関係が存在する以上、共生なんて

不可能に近いことだ。

それに加えて、吸血鬼の体の構造は人間と大きく異なる。

ずば抜けた身体能力、異常なまでに速い自然治癒力など…。人間の脅威に成るには充分な程だ。


そのため、何の武装もない人間が束になろうと、

餌になるだけ。だからこそ、武術を身に付け、

吸血鬼を討伐する。その工程の一環となるのが

このアルレディア教会学院である。

吸血鬼が蔓延はびこるこの世界では、

力を身に付けることが大切だ。ゆえに、15を越えたほとんどの子どもがこの学院に通う。

何かしらの意図を持って通う生徒も多いのだが、

アレンのように興味のないという雰囲気の生徒も少なからずいる。


とは言っても、アレンは周りから見たらとても奇妙な存在だろう。授業を聞くわけでもなく、修練に励むわけでもない。

一体何しに来たんだ?というのが周りの気持ちだ。

そんなことも気にせず、アレンは又もや空を眺めている。誰も彼と話そうとはしない。話しかけた所で素っ気なく返されるだけ。そんな事はクラス全員が承知していることだ。

だけれど、


「食事は摂らないのですか?」


ただ一人話しかけるものがいた。他の生徒が食堂へと向かう中、彼女…メリア=エレクトルは金髪のロングヘアーをたなびかせ、透き通ったそのみどりの眼を少し細めてそう質問した。


したはずだが、アレンは何もなかったように微動だにしない。依然として空に目をやったまんまだ。

メリアは聞こえなかったのかと思い、


「一緒に昼食を食べませんか?」


と、問いかける。

それでも何の反応もない。

いつもの光景ではあるものの、

(私、石像に話しかけてるのかな)と思わずにはいられないメリアだった。メリアは懲りずにもう一度、愛らしくおねだりするポーズをして、


「あの、一緒に…」


やはり返事がない。だが、流石にアレンも折れたのか、アレンは初めてメリアの方を向いた。蒼く煌めくその眼には精気はあるようでも、光がないように見える。

メリアは驚き半分、嬉しさ半分。ニコリと微笑み、返事をもらおうと思ったのもつかの間、アレンはすぐに視線を戻した。


……………


もはや、呆然と立ち尽くすしかない。

メリアは口を開き、ポカ〜ンとした表情をしている。

案の定の塩対応。メリアもこうはなるかもしれないとは分かっていたものの、ここまで来てしまったらもう退けない。

メリアはアレンの真正面に回り込み、

目を合わせようとした瞬間、顔を背けられた。

ただ空を眺めたいだけだと思っていたが、もうただ単に無視したいだけである。

しかしメリアは諦めない。もう一度回り込むが、

また顔を背けられてしまった。


そしてもう一度。またもや同じことを…


特に理由もない。メリアはただ無視し続けられていることに、意地を張っているだけである。

端から見ればじゃれ合っているようなもの。


「あいつら何してんだ」

「エレクトルさん……?」


残っていた生徒からの疑問の声が絶えない。

考えるだけ無駄だろう。特に意味はないのだから。

ただの子供のじゃれ合い。そう考えるのが正しい。


しかし、あまりにもしつこいメリアにアレンは痺れを切らしたのか、


「どうして、俺に構うんだ?」


面倒くさそうに、純粋な疑問も含めてそう聞いた。


アレンに声をかける生徒などいない。いや、正確にはいなくなったというべきだろう。

アレンはいわゆるクールイケメンである。その雰囲気からよく女子に声をかけられていた。しかし、あまりの冷たさに声をかけるものはいなくなった。


アレンにとっても、そんな中でなぜ声をかけてくるのか疑問であった。


「なんだが可哀想だったので」


メリアのその答えにその場が静まり返る。

アレンにとって、メリアが何を言いたいのかさっぱりである。アレン含め、クラスメイトも頭に疑問符を浮かべる。

いくら考えても答えが出ない。


「どうしてそう思ったんだ?」


と、もう一度質問した。メリアという人間がどんな奴かなんて知らない。ただ、可哀想なんて言われると気にもする。


次に何を言うのかと待ち構えていると、メリアは言った。


「いつも独りで寂びしそうにしていたから、私が友達になってあげようかと。」

「は?」

「フフン、いい提案でしょ?」


そうメリアはドヤ顔で答えた。

いくらアレンといえど、これには顔をしかめるしかなかった。

いや、何か裏が…と思ってはいたが、こんな堂々とした態度でこんなことを言うやつがなんて、と、

その可能性は消した。それでもその線は拭えず、

もう一度、


「何の気まぐれだ?」


そう聞いた。きっと何かあるはずだ…


「だっていつも空をみてるもの。きっと寂びしいんでしょ。」


またもやわかりきったようにドヤ顔をしている。

いったいどこからその考えが出てくるのか、

もう頭を抱えるしかない。頭痛が痛い、そんなことを言ってしまいそうだ。

きっとこいつは天然、いや、ただのバカなのかもしれない。アレンはそう結論付けた。







(初投稿です。初めて書くので下手ですし、話の区切りも下手なので温かい目で見てくれたら幸いです。)





















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る