0x1C 奪われた操

透華はスマホを指先で弾きながら、コンビニの防犯カメラ映像を見つめ続けていた。

朔は隣でじっと画面を覗き込む。


「……この映像の通話相手を探るのが先決ね」


「でも、どうやって?」


朔が腕を組みながら透華の顔をうかがう。


「通話履歴は店のカメラには映らない。

だから、この男が話していた人物を割り出すには、周囲の防犯カメラや彼の行動を追う必要があるわね」


透華の指がスマホの画面をスクロールする。

店の防犯映像だけでなく、通話の前後に彼がどんな動きをしていたのかを確認するためだ。


朔は息を詰めながら透華の横顔をちらりと見る。

真剣な表情……でも、それ以上に、彼女の思考の速さには圧倒されるばかりだった。


「それにしても……」


透華がふっと息を吐き、朔のほうへ向き直る。


「さっき山梨くんが、あなたに何かされたかって聞いてきたけど……あれ、どういう意味かしら?」


「は!?」

それを聞いた朔は思わずむせそうになる。


「お、お前……何言ったんだよ!」


「別に、大したことは言ってないわ。ただ……。『あいつに押し倒されて、奪われちゃったわ』って」


「なにぃぃぃぃ!?」


朔は立ち上がりそうになり、両手で顔を覆った。


「おいおい、そりゃ誤解されるだろ!?

山梨、絶対週明け学校で俺のこと何か言うぞ……!」


「それはあなたが自業自得じゃない?」

透華はくすりと笑い肩をすくめる。


「いやいや!どういう意味だよ!

そもそも、何を奪われたって言ったんだ!?俺、お前に何もしてないだろ!?」


「ス・マ・ホ!」

透華はほんの少し顔を赤らめながら小さく呟く。


朔は息を呑む。


「スマホ……!?」


「そうよ。あんたのスマホ!

返せって私の手から奪ったでしょ?

だから、それを言っただけよ」


「いや、それどう考えても誤解を生むだろ!?

もう、学校でどうなるか考えたくもねえ!」


朔は頭を抱えるが、透華は楽しそうに微笑んだ。



しかし、ふっと表情を引き締めると、再び画面へ視線を戻した。


「さて、ふざけるのはここまで。

今は事件に集中するわよ」


「ああ、わかったよ……」

朔は大きく息を吐いて姿勢を正し、気を引き締める。


透華の瞳が鋭く光る。


「この部屋は、誰かに盗聴や遠隔監視外されないようなブラックボックス仕様にしてあるの。

だけど、外での会話は常に犯人に監視・盗聴される可能性があるわ。

だから……これからさっそく出向くけど、

気を引き締めて行くわよ」


「出向くって、どこへ?」


「事件の鍵を握る場所へ――。」


そして、物語は次の段階へ進む――。

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