0x1A プロファイリング♯2

「朔、ちょっといい?」

透華は腕を組みながら、ちらりと朔を見た。


「何だよ、透華?」


「今の時間、朔の家の近所にあるコンビニでバイトしてる子……山梨くんって、覚えてる?」


「山梨? ああ、うちのクラスメートの……」


「そう。彼、今日もシフトに入ってるみたいよ」


「コンビニの防犯カメラに不審者の姿が映っているかもしれないから……、

俺に山梨に見せて貰えるよう電話で頼めってことか?」


「ええ。今すぐ」


朔は少しめんどくさそうにスマホを取り出し、山梨に発信する。

数コールの後、のんびりした声が応答した。


『……何? 朔? なんか用?』


「なあ、山梨。コンビニの防犯カメラ、ちょっと見せてもらえないか?」


『は? めんどくせぇ……謝礼は?』


(こいつめんどくさい奴だな……)

朔は心の中でそうぼやきながらも、うまく頼もうと口を開く。

しかし、言葉を探している間に――


「貸して」

透華が容赦なく朔のスマホを奪い取った。


「……お、おい!透華!?なんでお前が俺のスマホで話してんだよ!?』


『あ、山梨くん?

あ、うん。私は同じクラスメートの透華。

悪いんだけど、単刀直入にお願いするわ。

山梨くん、今からすぐそっち行くから、

コンビニの防犯カメラを見せてちょうだい』


その言葉に、山梨は動揺したものの、一発OKを出す。


『わ、わかりました。ってか何でお透華さん、朔なんかと一緒にいるんです!?

しかもスマホ渡し合う仲とか……』


「透華、いい加減、返せって!」


「あー、わかった、わかったから!」

『山梨くんありがとね。じゃあまた朔に変わるわね』


すると、朔はスマホを半ば強引に透華から奪い返した。

その瞬間――


『おい、朔!』


案の定、怒り口調の山梨が朔に疑問をぶつけてきた。


『お前、透華と何があった!?

なんでスマホ渡し合う関係になってんだ!?』


『いや、これは……』


朔は返答に詰まる。山梨の勢いに押されて、口を開けたまま言葉を探す。


『……ごめん、山梨!』

『ちょ、待っ』

その瞬間、朔は話を強引に遮るように終話ボタンを押した。


そして、行かないと言い張る朔を残して、透華だけがコンビニへ向かうことになった――。



透華はコンビニのバックルームで、山梨と並んで防犯カメラの映像をチェックしていた。


「……この時間ね」


朔の母が不審者を目撃したという日時――まさしくそのタイミングで、コンビニのすぐ外に立って電話をしている怪しげな男の姿が映っていた。


(何か……違和感がある……)


透華の視線が映像に釘付けになる。


「何か気になるんですか?」

山梨が軽く尋ねるが、透華は答えず、眉をひそめた。


「……ねぇ、ブラックコーヒーは飲める?」


山梨は驚いて透華を見た。

「え? はい。まあ、飲めますけど……」


透華は黙って千円札とドリップのブラックコーヒーを山梨に手渡し、

「邪魔したわね、ありがとう……」

と告げる。


山梨は慌てて透華を引き留める。


「ちょっと待ってください。

金銭の受け取りは禁止されてるんで……これは返します。

それと……コーヒー、ありがとうございます」


透華はお金を受け取りながら立ち去ろうとした。しかし――


「あと一つ……」


山梨が透華を呼び止めた。


透華は不思議そうに山梨を見つめる。


「透華さん、え〜と……あの。あいつに、朔に、最近何かされませんでした?」


途端に、透華の顔が真っ赤になった。


「私……あいつに押し倒されて、奪われちゃった……」


その呟きに、山梨は顔色を変える。

「なっ……!?何——!?

理解が追いつかない。

ちょっと待て、それって――!」


しかし……。


「今急いでるから、ごめんなさい!」

透華は慌てて店を飛び出してしまう。



「朔の野郎、次会ったら絶対殺す!」

闇のオーラに支配された絶対殺すマン山梨は打倒朔を固く心に誓った――。



その後。再び朔と合流した透華は、盗聴の可能性を考慮し、朔を自分のマンションへ連れていく。


透華のマンションに入った朔は、改めて室内を見渡した。どこか味気ない印象を受ける。


「……透華、お前の部屋、ほんとにこれだけ?」


「何が?」


「いや、もっとこう……女の子っぽい感じかと思った」


透華は微妙な表情を浮かべた。

「そう? 無駄なものを置きたくないだけよ」


確かに室内は整理されていて、生活感が薄い。まるで透華自身が、常に緊張感の中で生きているような印象を与える。


「別に他意は無いんだ。ただ、意外だなって……」


「べ、別にいいじゃない……」


「ああ……、でもさ、お前の両親、仕事が忙しくて滅多に帰って来ないんだろ。

毎日、寂しく無いのか?

それに、防犯上、お前一人で不安じゃないのか?」


「そんな事、あんたに関係無くない?

それに、このマンション、セキュリティしっかりしてるし……」

それから、透華は微妙な表情を浮かべたが、すぐに話題を変える。


「ねえ、それより今はコンビニの防犯カメラよ!

そこに重要な手がかりがあったわ」


朔は透華をじっと見つめる。

「重要な手がかり?」


すると、透華は静かに頷き、息を整えて口を開いた。


錯聴さくちょうよ……」


「錯聴……?」

その言葉は、朔の脳に鋭く突き刺さった。

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