歪み探偵鎮村透華の事件簿
File#1
0x1 ありえないはずの消失
ざわめきが、静かな教室をゆっくりと侵食していく。
そして、生徒たちの間にも不安が広がっていた。
「ねえ、また何か消えたらしいよ」
「今度はどこで?」
「体育館」
「体育館だって!?」
「そう。備品が一つ、忽然と消えてしまったらしいよ……」
透華は、そんなクラスメイトたちの会話に耳を傾けながら、胸騒ぎを覚えていた。
またしても、奇妙な消失事件が発生したのだ。
今度の舞台は、備品の持ち出しが厳重に管理されているはずの体育館。
心象高校は、昔から不可解な備品消失事件が多発してきた。
備品一つ一つは微々たる金額でも、積もり積もったその被害総額は割と洒落にならない金額で、数年前からそれら備品一つ一つに、館内から持ち出すとブザーが鳴る仕組みのICタグが取り付けられている。
そんな厳重なセキュリティーが施された状況で備品が一つ、跡形もなく消えてしまう。
そして、その備品が紛失する直前に扱っていた透華の友達が先生に疑いをかけられたのだ。
放課後の遅い時間。
透華と朔、二人は閑散とした夕陽の差込む教室に残っていた。
「朔、また消えたみたい……」
透華は、隣に座る朔に話しかけた。
「ああ、今度はソフトテニスボールらしいな」
朔は、またかと言った素ぶりで今回の事件に眉を顰めていた。
「ICタグで持ち出しは不可能なはずなのに、一体どうしてかしらね」
「それが今回の事件の奇妙なところだよな」
そんな朔の言葉に、透華は深く頷いた。
「ところで見てよ朔!」
「どうした、透華?」
透華は職員室から借りてきたラップトップを使い、何かを調べていた。
「これ、心象高校が導入しているICタグ専用の管理ソフトなんだけど、このマップを見て朔は何か思わない?」
「え〜と、マップの中で点滅している場所って体育館だよな?」
「そう、体育館。
私はローラー作戦で、無くなったソフトテニスボールに埋め込まれていたIC番号を突き止めて、今はその備品の位置だけを表示しているの」
「それはつまり、無くなった備品は体育館の中のどこかにあることは間違い無いってことだよな?」
「多分ね。まあ、悪意のある誰かが、ボールからICタグだけを抜き取ってボールだけ持ち去ったっていう線もあるにはあるけど、たかだか数百円で買えるソフトテニスボールの為に犯人がわざわざそこまでリスクを犯す動機も無いでしょうから、違うでしょうね……」
「透華はつまり、誰かが故意に盗んでいった訳では無いといいたいんだな?」
「そう。多分偶然」
「なあ、透華?そのマップで体育館内の具体的な位置はわからないのか?」
「私もそれは最初考えたわ。
だけど、この管理システムの精度じゃこれが限界みたい」
「そっか。じゃあ、体育館内に実際に探しに行けってことだよな」
「そう。だけどやっぱり、何かがおかしいわ……」
彼女は、今回の事件に、以前から感じていた「五感の歪み」が深く関わっていることを確信していた。
「私にしか感じられない、この世界の違和感。それが、きっと事件の真相を解き明かす鍵になるはず」
透華は、静かに、しかし力強く決意を表した。
「この事件、私が必ず解決してみせる」
透華の言葉に、朔も力強く頷いた。
「ああ、俺も協力するよ」
二人は、互いの顔を見合わせると、微かに笑い合った。
こうして、鎮村透華と日向朔による、奇妙な事件の調査が始まった。
※日向 朔のAIイラストです。
https://kakuyomu.jp/users/buzenguy/news/16818622175824581796
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