原罪の学び舎

夜月

プロローグ

この世界には、“正義”と“悪”が存在する。


この世界に住む者なら誰でも知っている事実であり、変わらぬ概念。ただ、それを分けるのはそれぞれの価値観であったり、意識に強く根付いたものだったりする。


正義とは、一般的には正しい道理のことである。人間行為の正しさ、とも言う。だが正しい道理というものはなんだろう。人に迷惑をかけないようなものか?それとも、見知らぬ他人のため何でもするというようなものだろうか。

そもそも、「正しい」とはなんなのだろうか。自分の正義は、誰かにとっての悪というのを聞いたことがある。それが正しいものだと思っていても、実際誰かから見れば正しくはない可能性だってある。


だが、正義でないと社会は人間われわれを認めない。


悪とは、善の反対または欠如である。それは人道・法律などに違反することであり、不道徳・反道徳的なことだとも言う。

しかし、ここで言う善とは?昨今行われているような大半の悪は、それが正しいものだと思ったから、らしい。何が正しくて何が悪なのか、それを決めるのは個でなくその他大勢の者である。


もちろん、悪であれば人間私たちは認めてくれることは無い。


さて、ここまで書いたが、正義と悪が何たるかを問うためにこんな物語を書く訳では無い。ここから書くのは少年少女の人間らしい苦悩と青春、そして友情である。


光る月の下で、彼らは何を考えるのか。必死に生きたいと願う彼らの生き様を、私たちは見届けることしか出来ない。




満月の光を浴びて、一人の少年が満足そうに真っ赤な瞳を隠した。

神だと宣う少年は、一つの星をただ見つめていた。

紡いで、祈って。少女は、それだけを望んでいた。

跳んで、さらに高く。何者にも害されない場所へ、少年は往く。

その少年の今生はただ、思いのままに歌うだけである。

信じるものがある、ただそれだけで、少年は救われているのである。

聡明な少女の知恵が揺らぐことは、もうない。

失敗から価値を生み出す少女の心は、ただ明日への希望である。

慢心をせず、ただ少年は実直にないものを作り続ける。

ただ遊びたいと願う少年は、ひっそりと夜の暗闇に紛れ。

誰よりも優れたこの力を少年は、仲間のために使うと。

舞い、踊り。刀片手に少年はただ、舞う。

陽だまりの中で笑う少女は、きっともう間違いはない。

古くからの確執に囚われず、少年は未来のためただ笑う。




──これは、“あく”が何かを知る少年少女の物語である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る