40歳で世界的に猛威を振るう「アロマウイルス」に感染し、命を落とした主人公。
しかし次の瞬間、彼は“並行世界の1990年”へタイムリープし、10歳の自分として人生をやり直すことになります。
けれど、その世界はただの過去ではありません。
記憶にない姉、前の世界には存在しなかった婚約者、そして価値観そのものが異なる社会。
パラドックスが起きるのでは? と期待してしまいます。
特に、キーパーソンである“姉”を名乗る絵里香という人物の正体や、彼女が発明家である理由には強いミステリー性があり、謎が深まるばかりです。
そして、主人公は前の世界で不幸に遭った家族や身近な人をすべて救うため、更に恐怖のパンデミックを回避するために、奮闘したいと思っています。
はたして彼は、公言通りこのタイムリープで身近な人を全て救い、“本当に大切な人”に出会うことができるのでしょうか。
シリアスな主人公と裏腹に、ギャグ要素もたっぷり盛り込まれており、軽快さと深みのバランスが絶妙。
「楽しいだけではなく、しっかり心に残る物語を読みたい」という方に、まさにおすすめの一作です。
大人の記憶を持ったまま、子どもの体に戻ってしまう主人公。その時点で「時間」という見えない鎖に縛られているような感覚があります。
何かがおかしい、ただのやり直しじゃ済まない、もしかしたらその選択には重たい代償があるのでは……そんな空気が最初から漂っているこの物語。
ささいだけど決定的な“ズレ”が、まるで小さなひび割れのように、物語の世界を貫いている。
読み手としても、どこまでが“本来の世界”なのか、ここは本当に理想なのか、あるいは罠なのか……そんな問いを抱えながら、先を読みたくなってしまいます。
描写もとても魅力的です。
例えば子どもの体で大人の頭を持っているという、、ちぐはぐな感覚がとてもリアルに描かれていて、残酷な世界のループに立ち向かう中でほっとするような日常の一コマを描かれていたり。
「家族を救いたい」「人類の滅亡を止めたい」という大きな目標を掲げながらも、その根っこには人と人との細やかな関わりや葛藤があって、それを丁寧に描いているところも素敵です。
タイムリープというSFの枠を使いつつ、愛や後悔、罪の意識、そして救いといった人間らしいテーマがきちんと芯にある。それが、この物語に深みと重さを与えているんだと思います。
特に心に残ったのは、「救う」ということが本当に救いになるのか?という問いかけです。
主人公が家族や世界を救おうと手を伸ばした先にあったのは、思っていたのとは違う人間関係や、想像していなかった現実。
希望だけでは辿り着けない場所、だけど、それでも前に進もうとする姿に、読む側も自然と覚悟を迫られるような気がしました。
いくつもの並行世界を渡り歩く主人公。そのたびに少しずつ違う家族や恋人、友人たちの関係が描かれます。
ある世界では亡くなっていた人を別の世界で救い、ある世界では恋人だったヒロインと一から恋をやり直す——。そのポケットの多さに毎回驚かされます。
また、一見ノーマルエンドに辿り着いたように見えても、真相のヒントは各世界のどこかに散りばめられており、作者さまの仕掛け通り、何周も再読してしまいます。
女性キャラクターのセリフや仕草から滲む心理描写が見事で、主人公と一緒にヒロインたちにドキドキさせられます(特にお姉さま)。
Web小説で初めて読んだタイムリープ作品がこちらでしたが、それ以来、他作を読む時もどうしてもこの作品を基準にしてしまいます。
内容の厚み、感情の奥行き、再読性の高さ——どれを取っても今なお唯一無二。
まだトゥルーエンドと思われる結末には辿り着けていませんが、だからこそ、最後のページを開くのが楽しみでなりません。
40歳の大人の記憶を持ちながら10歳の体で生きるという設定が絶妙。主人公の内面と外見のギャップから生まれる葛藤や、周囲との関係性の変化が非常にリアル。
登場人物たちの心理描写が、深い。
それぞれが複雑な事情を抱えており、単純な善悪では割り切れない人間関係が丁寧に織り込まれている。
タイムリープものでありながら、決してご都合主義ではなく、緊張感が最後まで続く。
重いテーマも含まれているけど、それらが物語に深みを与え、読み応えのある作品に仕上がっている。
やり直しの機会を得た主人公が、果たしてどのような選択をしていくのか、最後まで目が離せない展開です。
本格的なタイムリープ小説を求める読者に強くお勧めします。
主人公・佐倉優は、彼を取り巻く様々な不幸から、タイムリープをすることでその未来を回避、最善と思われる方法を探し、幾度もその危機を脱します。
……が、そのやり直した先の未来は本当にそれが最善なのか。もっと良い方法はなかったのか、やり直した先に待ち受ける別の不幸とは。彼らにとっての幸せとはなんなのか、タイムリープの意味とは、そして幾重もの人々のその奥に潜む謎と思惑は……?
考察しながら読み進めるもよし、読み進めていって「そういうことか……!」と衝撃&スッキリするもよし、多重に敷かれた伏線に、作者様の構成の緻密さに圧倒されながら、いつも楽しませて頂いています。
おすすめの作品です。
死というものが終わりではなく、新たな始まりの扉であったなら。
本作は、そんな問いかけから始まる長編小説です。
2020年のパンデミックで人生を終えた中年男性が、1990年の少年時代へと魂を送り返される単なるやり直しの物語ではありませんでした。
これは、愛する者を救えなかった悔恨を胸に抱いた魂の、深い贖罪の旅路だと理解しました。
物語の白眉は、主人公・優を取り巻く女性たちの描写にあります。
天才発明家として君臨する姉・絵里香は、神話的な存在感を纏いながらも、弟への愛情に人間らしい脆さを覗かせます。
一方、重要な人物として現れる真姫は、幼い外見に反して、大人顔負けの意志の強さと純粋さを併せ持っています。
特に物語の要所で見せる彼女の激しい愛情表現は、愛の持つ美しさと激しさを同時に描き出した圧巻の内容です。
作者の巧みさは、時間軸を跨ぐ複雑な構成を、読み手に迷いを感じさせることなく展開している点にもあります。
並行世界という設定を用いながらも、決してSF的な設定に頼りすぎることなく、人間関係の機微に焦点を当て続けます。
優が繰り返す時間の中で、同じ人物でありながら微妙に異なる運命を辿る人々の姿が、時の残酷さと同時に、可能性への希望を紡いでいました。
幼馴染・湾子の救済を軸とした物語の前半部では、児童虐待という重いテーマが丁寧に扱われています。
安易な感動に流れることなく、社会の無理解や制度の限界を冷静に描写しているところには、作者の誠実さがうかがえます。
また、物語の中で描かれる病気による別れの展開では、現実と虚構が絶妙に重なり合い、読み手に深い印象を残します。
文体は平明でありながら詩的な美しさがあり、登場人物たちの心情の機微が繊細に描き分けられています。
特に優の内面描写は秀逸で、大人の記憶を持つ少年の複雑な心境が、丁寧に書かれていました。
まだ第三章までのレビューになりますが、続きを読むのが楽しみです。
――1990年、けれど“どこか違う”あの時代。そこに再び目覚めることになった優の物語は、ただのやり直しではありません。読者の心にそっと触れてくるのは、繊細で切実な「誰かを救いたい」という祈りのような想い。
懐かしさに包まれながらも、胸の奥をえぐるような場面の数々に、何度もページをめくる手が止まりました。
AIやサバイバル、秘密めいた婚約者の登場など、ユニークな展開の中に、しっかりと息づく人間の痛みと希望。特に“満天の星空の夜”の描写には、静かな再生の予感があり、胸が熱くなりました。
「時をかける」という言葉の奥にある、“心をかける”という真意に触れられる物語です。
この物語の主人公・佐倉 優は、パンデミックにより、40歳で命を落としてしまいます。
しかし次の瞬間、彼は過去に、10歳の頃の自分としてタイムリープしていました。
ところが、その世界は自分が暮らしてきた世界とは微妙に異なる世界『並行世界』だったのです。
存在しないはずの姉がいたり、自身に婚約者がいたりと、いろいろ困惑する彼でしたが、それでも、いずれ訪れるであろう不幸やパンデミックを食い止めるため、懸命に対策を練り始めるのですが……
バットエンドを回避するため、成功と失敗を繰り返しながら『並行世界』を旅する主人公・佐倉 優の、壮大でたいへん読み応えのある物語です!
(*゚▽゚)ノ ぜひ、ご一読くださいませ!
死んだはずだった。 気がつけば過去に戻っていた。
それも、何かが違っている並行世界に。
これから起こる事を知っている。ならば今からなら『最悪の未来』を変えられるのでは?
一度のタイムリープでは知り得なかった情報も、二度三度と繰り返す中で知っていく。
それによって『最悪の未来』を回避できたと思っても、並行世界であるが故の『少しの差』が影響して…?
年齢のズレ、関係性のズレ、と言った事で生まれる変化と、それでも運命に立ち向かう主人公の懸命な姿に心打たれます。
ただ時間をなぞるだけなら難なく解決できただろう事件も、並行世界故の差異でなかなか上手くはいかない。
果たして主人公はバッドエンド回避なるか!?
葛藤、絶望、期待、願い…。
主人公の様々な感情が緻密に描かれていてとても丁寧。
緊張からの緩和といった変化の付け方が絶妙で、お話を読む中で右往左往させられた私の感情もミルフィーユです。