3.初めての違和感
『おやすみ!』
『うん、おやすみ~!!』
家に帰った真央の習慣。ラノベを読み、アニメを見て、寝る前に少しだけ彼女の
(早くGW来ないかな。鈴夏に会いたい!!)
そんな真央が楽しみにしているGW。久しぶりに鈴夏に会える。間もなく来る大型連休を前に真央の心は踊っていた。
「真央様~、お疲れでーす!!」
「お、おう。藤原……」
そんな真央の心を揺さぶるもうひとりの相手。それが藤原結。放課後、図書委員の仕事でやってきた真央の隣に結が当たり前のように座る。
『真央様は、彼女とかいるのですか?』
先日結に尋ねられた言葉が頭から離れない。無論、正直に言った。彼女はいる、と。結は驚きもせずに飄々と言った。
「すごいな~、魔王様の彼女だなんて」
「い、いや、別にすごくないよ……」
鈴夏に対してはここまで厨二病全開はしない。したら嫌われてしまいそうだ。
「……いいなぁ」
「え? なんか言った?」
最後の言葉。真央には聞き取れなかった。結がにっこり笑い亜麻色のボブカットを揺らしながら答える。
「何でもないでーす! それより、さ、仕事しましょ!!」
「う、うむ。そうじゃの……」
何の設定か、設定自体がブレ始めてしまっている真央。それは藤原結と言うまるで太陽のような存在のせいなのだと言うことにまだ気付かない。結が言う。
「ねえ、真央様」
今度は一体なんだと真央が答える。
「な、なに?」
「GWにさ、真央様の部屋に行ってもいいかな?」
部屋に来る。藤原結が自分の部屋に来る。
「ど、どうして……??」
そう尋ねる真央は、もはや魔王でもなんでもなくただの男子校生。結が答える。
「この間話していたラノベの本とか見たいしー、ね? いいでしょ?」
一瞬真央の脳裏に鈴夏の顔がよぎる。
「い、いいよ。それぐらい……」
結局許可してしまった。それほど今の結は可愛らしかった。
罪悪感。無敵の魔王のはずなのにその夜、真央は鈴夏に連絡するスマホを持つ手にじわじわと汗が溢れた。
(浮気じゃない、浮気じゃない。俺はただ藤原とラノベの話をするだけだ……)
そう自分に言い聞かせながら鈴夏にメッセージを送る。返事を待つ真央。
(あれ、既読にならない?)
いつもならすぐに既読になり返事が来ていたメッセージ。今夜は不思議と連絡がつかない。
(まさか、俺の行為がバレて……)
自然と弱気になる真央。しばらくして鈴夏から返事が来た。
『ごめんねー、お風呂入ってた』
安堵する真央。すぐに返事をする。
『いいよ! それよりGWの予定どうする?』
いつもの鈴夏であることに不思議と安心した真央。だが鈴夏の返事を見て体が固まる。
『一日だけでいい? 勉強が忙しくってさ~』
たった一日。中学の卒業式は『うちにずっと泊まって行ってよ!』と言ってくれていた鈴夏。恥ずかしくてそれをふざけて断った真央。当時のやり取りが頭の中をぐるぐる回る。
『一日だけ? もっと一緒に居たいよ』
素直な言葉。だが鈴夏は折れなかった。
『ごめんね。私のことも理解して。本当に忙しいの』
『分かった。鈴夏のこと応援するから』
心にもない、本心とは少し違った言葉を返した真央。それが初めて彼女との違和感を覚えた日となった。
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