太陽と月の約束

西川笑里

第1話

 昔々、太陽と月はいつも一緒に空を旅していました。朝になると二人で東の空に昇り、昼間は青い空を駆け回り、夜になると一緒に沈んでいました。


 しかし、ある日、世界のバランスが崩れはじめました。昼も夜も明るすぎたり、暗すぎたりして、動物たちも植物たちも困り果ててしまいました。

「このままでは、みんなが疲れてしまうね」

 先にそう言ったのは月でした。太陽は少し寂しそうにうなずきました。

「そうだね。でも、どうすればいい?」

 そこへ、通りがかった風の精がそっと二人に耳打ちしました。「交代で空を照らせばいいんじゃない?」

 太陽と月は顔を見合わせて、しばらく考えました。そして、とうとう決心しました。

「それなら、私は昼を照らそう」

 太陽がそう言うと、

「じゃあ、私は夜を照らすよ」

と月が決意したようにいいました。

 こうして、太陽と月は交代で空を照らすことになったのです。


 それからは太陽が昇ると、大地は暖かくなり、花が咲き、鳥が歌いました。

 やがて月が昇ると、静かな夜が訪れ、星が輝き、眠るものたちをやさしく見守りました。

 二人はもう一緒に空を旅することはできませんでしたが、いつもお互いを想っていました。太陽が沈むとき、空を夕焼けに染めて月に「またね」と伝え、月は夜明けにそっと光を残して太陽に「おはよう」と伝えました。

 それ以来、太陽と月は遠く離れていても、空の上でそっと見守り合うようになったのです。

 そして今日も、太陽と月は交代で空を照らしながら、世界のバランスを守っているのでした。

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