剣聖に転生したけど、無理せず控えめにのんびり冒険していきます~転生者ののんびり冒険譚~
鴎
第1話 転生とスキル『剣聖』
目が覚めると俺は草原にいた。
なんでだろうか。俺は土木業者に勤める会社員で、仕事ができなくて、ポンコツで、生きていくのもやっとかっとで、それでもなんとか生きていて、しかしやっぱりうまくいかない。そんな人間だったはずだが。
と、そこで記憶が蘇る。そうだった。俺は重機に巻き込まれて、体が潰れて死んだのだ。
確かにそうだった。
それなのになんで今草原に立っているんだ。
「なんなんだ。天国か」
そうか、ここが天国なのか。そういわれればやけに良い景色だ。空は晴れ渡った青空で、緑の草原はどこまでも続いていて、絵本の一場面みたいな景色だった。
「死んだのかぁ」
俺は自分の死をなんとなく噛みしめた。しかし、実感はまるでなかった。だってこうして立っているわけだし。
まぁ、多分そのうち最低限の肌着をつけた美少女巨乳天使が俺を迎えに来るんだろう。それでも待つことにする。俺はゆっくり腰を下ろした。
と、その時だった。
『あなたのスキルが決定しました【剣聖】です』
頭の中に言葉が聞こえた。
「は?」
それと同時に目の前に一振りの剣が出現した。
西洋の剣、と言えば良いのだろうか。鞘から抜くと両刃のRPGとかで見る剣だった。もちろん、見るのは初めてだった。
よく見れば、俺の服装はヘルメットに作業着の仕事服ではない。天国らしい衣でもない。ゲームの戦士みたいな服装だった。
「.......もしかして、異世界転生?」
俺の頭の中にそのワードが浮かんだ。流行りの、死んだら別の世界に行くやつ。
「マジで...?」
と、
───ドカァアァン!!!
爆発音が響き渡った。
見れば草原の向こうから煙が上がっている。
俺は何事かとそれを見に行く。
すると、
「下がれフェリス! 前に出過ぎだ!!」
「でも! セシルさんが!」
「私は大丈夫だ! お前だけでも!」
戦士のような服装のと白いローブの少女が二人、剣と杖を振り回して叫んでいた。目の前に居るのは馬鹿でかい、サイクロプスというやつか。一つ目の大きな怪物だった。
「クロス・フレア!!」
剣を持った少女の手から十字の炎が飛ぶ。それがサイクロプスに直撃するが。
───グルルル
あまり効いているようには見えなかった。
サイクロプスはそのままその巨大なこん棒で戦士の少女を吹き飛ばす。
「ぐあっ!!」
「セシルさん!!」
戦士の少女は地面を何回もバウンドして転がる。
「ホーリー・ヴェール!!」
ローブの少女が言うと戦士の少女が淡い光に包まれる。しかし、そこにサイクロプスはすかさずこん棒を振り下ろした。戦士の少女はギリギリでそれを避けた。
「はぁはぁ....」
「な、なんでこんなところにこんな上位のサイクロプスが....」
どうやら二人はピンチだった。
このままではやられそうだ。だが、どうすれば。さっきまで一般土木作業員だった俺がどうすれば。
そう思って片手に持っていた剣を握りしめた時だった。
急にだった。急に頭の中に動きが見えたのだ。
どうやって、あの中に割って入って、どうすればサイクロプスを倒せるか。すべて分かった。
「これがスキルってやつなのか?」
目の前では徐々に追い詰められていく二人の少女。
「やれば良いんだろ!」
俺は剣を抜く。そして、そのまま駆け出した。そして、サイクロプスの前に立つ。
「な! なんだお前は!」
「ダメです! このサイクロプスは普通じゃありません! レジェンドランクが相手にする上位個体です!」
後ろで二人が叫んでいるがとりあえず今は気にしないで。
目の前のサイクロプスを見る。あまりにでかい。ゲームで見たことはあるけど実物はでかい、そしてすごく怖い。
だが、
───ガァアアアアアア!!!
サイクロプスが吠えてこん棒を叩きつけてきた。
「逃げろ!!!」
後ろで少女が叫ぶが、
「ちっ」
俺は振り下ろされる目にも止まらない丸太みたいなこん棒、それを必要最小限の力でいなした。俺の真横に落ちるこん棒。
「えっ? いなし....」
後ろで驚愕の声が聞こえるが、とりあえずそのまま続ける。なんだ、見ればサイクロプスも驚いて固まっている。
隙だらけだ。
俺はそのままこん棒を蹴り、サイクロプスの腕を蹴り、あっという間にサイクロプスの首元まで迫ると、
「しっ!」
その剣を振りぬいた。
───グギャアアア!!!
サイクロプスが叫ぶ。しかし、叫ぶ首は落下中だった。そのままドスンとでかい音を立てて地面に落下。体も力を失くして後ろに倒れた。大きな振動が俺たちを襲う。そして、サイクロプスは黒い霧になって消えていった。
「そ、そんな。上位サイクロプスをこんなにあっさり.....」
後ろには目を点にして立ち尽くす戦士の少女が居た。
「すごい、すごいすごいすごい!!! こんなに簡単にサイクロプスを! あなたは何者なんですか!! 危ないところを助けていただきありがとうございます!!!」
後ろからローブの少女がものすごい勢いで飛びついてきた。両腕をぶんぶん振り回される俺。
「さ、笹島ミキト」
俺は答えた。
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