第9章:Apples Peak Season《アップルス・ピーク・シーズン》 ~林檎の最盛期~

プロローグからコールドタイト発動まで

【開幕:クラスタのポーション判定 1d3>2】

※HPポーション×1

MPハイポーション×2


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【祝星歴728年――3層ミダス城教化の間四ノ月/陽黎月(ようれいげつ)】


コノレタナ【そこは、暗澹としたドス黒い空気に満ちた異界であった。】


コノレタナ【教化によって呑まれた無辜の命たちが、囁きかけてくる。足を踏み入れる度に、犠牲者の怨嗟が呪いとなって全身に染み渡っていく。呼吸のたびに私はそれを受け入れていく。】


コノレタナ【次第に、ぼそぼそと呪詛を紡ぐ声の一旦が私のものだと理解してしまった。腹に抱えた絶望の重みが私を引きずり込むようでありながら、それでいて確信的な期待を寄せている。】


コノレタナ【流れる涙が、悲しみによるものか歓びによるものか判断できなかった。主体となる精神が内側から食い破られていく、喰らい、命を永らえた代償を今ここで支払わねばならない。名も忘れた郷里と、私を象る人々が脳裏を掠めた。】


コノレタナ「《遂にこの時が来たんだ――》」


コノレタナ【ぢゅぶり、弛んだ腐肉めいた泥濘の中に沈んでゆく、底のない地獄へと――闇と瘴気に慣れきった肉体が怯えている。】


コノレタナ【心が悲鳴をあげている、私だけではない、この肉体に宿る無数の生命が無慙無愧の所業に、雄叫びのような悲鳴をあげていた。それでいて、首座――竜教へと捧ぐべく肉体の疼きは止まらない、その疼きには逆らえない。】


コノレタナ【絶望しかなかった――しかし、その絶望すら末期のわたしは歓んだ。いや、末期なんてなかった。そんなものはとうに過ぎている。】


コノレタナ【屍人の身体だ、これは。それに付随した精神が主だって人格を象っていたに過ぎない。この女性はとうの昔にオルメガで亡くなっている。】


コノレタナ【すなわち、私は誰なのか――今わの際で、己に問うていた。――深みに嵌まる肉体が、四方から強烈な圧をかけられ捻じれひしゃげていく四肢と共に、未だ機能の残った声帯から低く醜悪な悲鳴が奏でられる。】


コノレタナ【ぢゅ、ぼ――肉の蓋が閉じられる。終わりの音、ありとあらゆる蹂躙の果て――その肉体は異界の核となった。】


コノレタナ【呪詛返しの極大の方法。――を――す為、――私が――】


【祝星歴728年――3層ミダス城四ノ月/陽黎月(ようれいげつ)】


【ドラシール教の古城、ミダス城。太古の時代から続く歴史が、石の壁に彫り込まれ、古の宗教的なシンボルが織り交ぜられている。その一片一片が、信仰の彩を宿すなか、和装の男は拍動の如く、蠢き始めた教化の間を前に訝しげに己のセフィラへと詰問を投げかけた。】


【疑問ではない、それほど愚鈍ではない。ただの事実の確認でしかなかった。この営みですら無為にすら思えてくる程、愚問ではあると思えた。】


王国のマルクト「此のほどのアレが作る呪文書は支離滅裂だった――……いよいよを以てあの大魔法の行使を契機に心身の整合性が取れなくなったようだったのでな。」


カノエ「ほうか――……(一抹の蟠りが静かなる火花のように心を掠め、冷たい影が感情の渦中に立ち込める。深く息を吸い込み、努めて平静を装った末の一言であった)」


王国のマルクト「――……不服ですか、カノエ。(目聡く感情の機微を読み取れば口角を持ち上げて投げかけ)」


カノエ「…………………………」


カノエ「――――まさか」


王国のマルクト「奴原が自ら望んだことだ。ジクジクと膿のように溜まった怨嗟の炎をその胎盤をもって吐き出させる、およそ屍姦そのものでしょうがね。……教化の間を使い自らを炉とするなど……狂気の沙汰だ」


王国のマルクト「……なに、賢しい小娘だったが、骨の髄まで残らぬ程にしゃぶり尽くしてやった、これは……はっ、存外に気分が良い。」


カノエ「《最早、何者ともわからぬが、容赦しろとは言わん――……じゃが、これがげにおんしの望んだことか。》」


カノエ「《……自らの未練を絶ち、その肉体を焚べることが果たして……》」


首座司教ユカリア「彼女は十分、我々に尽くしてくれました。せめて、その御霊の鎮魂を祈ろうではありませんか――」


カノエ「けっ……生き血を啜った張本人がようほざいたもんじゃ。儂らがのうのうと生きちゅう限り、彼奴の魂魄も浮かばれん。(涼し気な様子のユカリアを一瞥しては、唾棄するかの如くのたまう。釈然としない様子で眼差しを泳がせ)」


王国のマルクト「……いいや、畏敬すら覚える程に礼讃しているのだ。その功徳、星の頂きまで届こう――……教化の間を核に、今やアレは柱となった。それ即ち、礎を盤石にするものである。」


首座司教ユカリア「元来、教化はドラシール教の教典に伝わる一時的な対人エンチャントに過ぎません。赤子への祝福や、それに類するものでした。――……それらの効果範囲を拡げ、作用の助長、精神的な調伏を及ぼすように歳月をかけてきましたが……」


王国のマルクト「アレが奇しくも完成形といったところだろう」


カノエ「祈りを呪いに転化させるとは……悪趣味の産物じゃ(諦観にも似た声が搾り出た。古城の最奥、最古の間として人の肉を喰い続けてきた間が今、たしかに蠢動している。ぴちゃぴちゃと粘性を伴った水音と共に、得体の知れないナニモノかを産み出し続けている。)」


首座司教ユカリア「ふふっ――違いありませんね。さて、では私達も初めましょうか……これは、むしろ遅すぎたくらいですが……。」


首座司教ユカリア「氷河潮流コールド・タイドを狼煙として、世界樹を掌握する。3層全土を難攻不落の城塞と変え、王国の正当性を挫き、打倒します。一切を呑み、星の頂きをも喰らってみせましょう」


【首座司教の一言一挙手一投足が、まるで星の摂理に触れているかのような尊厳を放っていた。竜教にとって彼女の存在はまさに神の恩寵を地上にもたらしたものであり、彼女が立つ場所は神聖なる場となり、全てがその威光に包まれるかのようだった。】


【星に、形而上の神に巣食った怪物がその鎌首をもたげて花開いていく。祈りは侵され、願いは冒涜された。】


【玉座の頂きへと恭しい所作をもって達したユカリアは、列席する信奉者を前に相対する。白いローブがなびき、その身に宿る神聖な力がローブを通して透けて見えるかのようだった。彼女の足取りは軽やかで、まるで大地が彼女を歓迎しているかのようであった】


【ユカリアはそのきめこまやかなはくじのてをてんたかくかかげた――】


モダ助祭「――首座様、どうかその御力をもってこの世界を鎮め、お治め下さいませ。御身のその御威光で我らが地を照らし上げ、凄惨に留めていただく事が、我らの望みで御座います。」


西方使徒・ナヴェラ「神の恩寵が樹と共にあり、祈りが我らを救いますよう、未だ泛ばれぬ御霊が鎭まりますよう――」


東方使徒・ガトゥーザ「あなたの導きを仰ぎ、この謙虚なる心に、あなたの啓示をお与え下さい。」


教化近衛兵「貴方の慈悲に包まれ、我らの罪を許し給え。迷い込んだ闇から、私たちをお救いください。」


教化リカント「どうか、私たちに希望を与え、困難なる旅路で導き給え。あなたの光に照らされ、心は永遠の平和へと導かれんことを。」


教化近衛兵(エリート)「我らの祈りが風に乗り、星々の間を舞い、あなたの御下へと届きますよう。我らの心の中に潜む善悪を悟り、誠実な生き方を歩む力を下さいませ。」


教化近衛兵(エリート)「我らの愛する者たちも、どうか守ってください。彼らの心に平安と幸福が宿りますように。」


教化近衛兵「神よ、我らは微細な一部でしかありません。無限の宇宙に埋もれた微塵のような存在ですが、どうかお赦しを。」


教化近衛兵「神よ、私は卑しい者ですが、どうか私の弱さを受け入れ、導いてください。私が正しい道を歩む手助けをください。」


【首座の御手が空から差し込む光の矢を解き放ち、それは大気を裂いて大地に注がれた。煌めく極彩色の光は、闇を引き裂くようにして広がり、星々をも凌ぐ輝きをもたらした。】


【光の矢が地に触れると、まるで泉が湧き上がるかのように、鮮烈な氷河の波濤となって大地に染み渡り始めた。一挙一動に、猛り狂った風雪がその躍動を見せ、まるで世界全体が神秘的な絵画に包まれたかのようであった。】


【氷河の潮流が果てしなく広がる。自然も魔物も、遺跡も何もかもを呑み込んで――】


【この時点において、首座司教ユカリアは名実と共に最も強大なニオファイトであった。但し、彼女の実戦回数は10にも満たない。そして、出生後彼女が喰らった星の民は、教化において落命した人間も含めると、中央、四方大陸中、のべ7千万人を超える。】


【ユカリアは此の星に巣食う物の怪の最たるものであった。】


【祝星歴728年――3層王領オーランドの宿舎四ノ月/陽黎月(ようれいげつ)】


【兄弟との決着が付いて3日後――変わらず王領の一角の宿舎では軟禁状態が続いていたものの、今朝方、アディシェスの来訪と共にエリダヌス一族も含めルキフ連盟自治区の防衛戦にあたった主要人物の立ち会いのもと、アディシェス本人による審問が行われた。】


【トルパドル深林群での影との攻防、不穏なドラシール教の動向とルキフ連盟自治区に対する奇襲。肥大化していく教化兵の存在と、転移による撹乱、およそ星の民では再現不可能と思われる大魔法、ことの詳細をつまびらやかに話すことになる】


【曇り空の広がる昼下がり、ようやく一連の経緯を説明し遂せれば、小休止とあいなった。】


【くだんの戦いで生き延びたカウプスやラナメールは、此の場に介してこそ居たものの精神的な消耗のため目に見えて憔悴しきっている。ニサッタやピリカらも同様であった。】


【オーランド一行の上位存在であるダアトも未だ寝台に伏せたまま眠り続けており、未だ沈鬱な空気が漂っている。そんな中での今後の方策を練らねばならなかった。】


アディシェス=フレン=リーン「実入りのある話が聞けた、君たちオーランドの一行がルキフ連盟自治区に加担してくれたことを感謝すべきかな?――……少なくともニオファイトが逗留していなければ自治区の全滅は免れようがなかったろう。(小休止へと入れば、愉快げな響きを滲ませてオーランドの一行へと語りかける。カウプスらを一瞥すれば、瞳を閉じて)」


ボッツ「へへっ、オイラたちに感謝してくれよなぁ~!金髪の兄ちゃん!」


カウプス=エリダヌス「私から説明できることは以上になります。先に報告をしておりますが、グイオントースに保管されていた遺失物も今や何一つ手元にはありません――(掠れた声に窶れた表情。未だ折れてこそいないものの、その面差しは以前よりも剣呑としていて)」


カウプス=エリダヌス「妹は先の戦いで疲弊しております。午後からの詰問には席を外させて頂きたく……」


ラナメール=エリダヌス「カウプス兄さん――……(貴族の娘とは無縁にも思われる呆けた様相であった。胡乱な双眸で宙空に視線を彷徨わせながらも、視線は定まることのない。それだけ、先の戦いが彼女に与えた心理的影響は大きかった。)」


ダリル「カウプス後は俺達に任せろ。(肩に手を置いて沈黙していた男はバトンタッチするかのようにスッと身を前に出せば)」


アディシェス=フレン=リーン「――……好きにすると良い。君たちから聞き出せることも打ち止めのようだ。(カウプスの提言に頷いてみせながらも、小休止の間隙、面差しを改めて全員を見遣れば)それで、次は勝機がありそうかい?肌感で構わない、僕も十全のユカリアとは対峙したことがないのでね、ニオファイトとして当事者の忌憚のない意見を聞いておきたい。」


クロ「よしっ……(アディシェスとの審問の話し合いの後、宿舎で当てがわれた自室に戻り、休息の後、新調した装備に着替え、姿見鏡で自分の姿を確認する。自分ではかなり印象が変わった姿に見える。深毛の毛先を軽く金色に染め、コクマーの封嵐玉を加工して作った首飾りに、腕には獣頭種(リカント)に合わせた巨大なガントレットに足にはグリーブ。深毛の尻尾を覆う長い鞭の様な装飾なんかもついている。見た目だけは本当に強そうだ、中身が伴わないといけないなっと、頬をポリポリと掻き。あの兄妹とのすれ違い、確執の勝負の後、自身の心境の変化、そして今度こそ、仲間、家族を何があっても信じるという事を表す為に、とりあえず形や姿から分かり易く変わろうという試みで、前々からユゥクと一緒に、考案や試行錯誤をしていた、新調装備がやっとで完成し、今まで倒した魔物の素材や、ルキフの首領、ロフォレ・シェリダンの遺産ともいえる古代遺物の鎧、などなどを各所にふんだんに使った、ユゥクと俺の共同制作とも言える装備を、この機会にお披露目というわけだ)」


クロ「今までよく戦ってくれたっスね……、お疲れ様っス……(っと、ボロボロになっていた古いシーフマントと、補修を繰り返して継ぎ接ぎだらけだった服装などの装備を、愛おしそうに撫でた後、意を決して、室の暖炉の火に焚て別れを告げる。新しいシーフマント、いや、これまでの素早さ重視とは違い、多少防御面を考慮した最早フルアーマーとでもいっていい鈍重なマントを羽織り)」


クロ「さて、これからよろしく頼むっスよ、新しい相棒――っ!(っと、壁に立てかけてあった、『パンファギア』、否、聖都ロダティオン防衛の時に戦った『魔竜・ニズヘグル』の素材を使い、ユゥクが新たに改良、打ち直して完成した生涯の最高傑作と言える大弓、『暴喰(パンファギア)・真打』、『パンファギア・ワン・オブ・サウザンド(千丁に一丁の弓)』とでも名付ければいいだろうか、その新しい相棒となる大弓を手に取り背に収納すれば、自室から廊下に出て皆が集まっているリビンングへと向かう。あの後、ユゥクとの新装備の打ち合わせもあったり自責の念もあったりなど、何だかんだ兄弟姉妹(きょうだい)との会話は少ししかしていない、これを機に兄弟姉妹(きょうだい)に変わって心を入れ替えたんだという意味でも、この姿と行動で表していこうと一歩を踏み出し)ここから、オレッチは変わるんだ――……っ!(アディシェスの話だと刻一刻と戦況の状況は変わっている。この新装備と兄妹と共に戦場を翔けよう)」


クロ「(談話室(リビング)へと静かに入れば、調度アディシェスとの会話が再開しており、どうやらドラシール教の主教ユカリア一味との勝算を聞いているらしい。とりあえず、自分が口出ししてあのややこしい確執が生まれたのだ。兄弟姉妹(きょうだい)のなりゆきに絶対的な信頼を置いて、自分は口を出さず自分のできる範囲でやるべき時に力を発揮しようと、壁に背を預け)………。」


トトポヤ「皆さん、お茶をお持ちしました――。(それぞれの席や佇立している人間には皿ごとハーブティーを配ってゆく。官給品の茶葉ということもあってルキフ自治区に居た頃よりも、香気や味は随分と増している。)」


タニヤマン「まぁ…報告してくれただけでもありがたいからな。お前ら下がっていいぞ。後の処理はこっちに任せろ(あからさまに憔悴しきっているエリダヌス家の面々に声を掛ければ、正気の有無を問うアディシェスに向き直り)伊達や酔狂で俺たちを拾ったわけではあるまい。勝てるさ。ただ…激突してなおヤツの力は未知数だ。何の策も無く突っ込めばグイオントースの時の二の舞もありうる。楽観視はできん」


クラスタ「(眠っているダアトの傍で床に膝を丸めて座りながらチラリとアディシェス達へ視線を向ける。内容にあまり興味はなく再び魔導書の解読作業に没頭する。ここ数日、先日の戦いのことや自分のこれから。頭の中で様々な思考が渦巻きまともに睡眠もとれていない。ほつれた髪を面倒くさそうたくし上げ、ローブを深々とかぶって)」


クラスタ「さあね。勝てるかはともかく、ボクはユカリアくんを殺すしドラシール教を止めるだけさ(魔導書を読む手を止めずにアディシェスの言葉に相槌をうてば)」


ダリル「無論、でなければ此処で牙と研いでいる意味がない。(男の姿は新たな覚悟や心境というのもあったのだろう、クロとの一件の翌日、長髪だった髪を脇差でバッサリその場で切り落とし断髪した後、先の闘いでボロボロになっていた軍服をどこから調達してきたのか一新してこの場の話し合いに参加すれば)」


ニサッタ「《悔しいけど――雑兵以外に勝ち目がなかった。……俺の腕じゃあの大ホールの戦いには加われば足手まといになってしまう程に…》」


アディシェス=フレン=リーン「結構――……まだ戦意は喪失していないようで何よりだ。だが、再三念を押させてもらうが、ユカリアの首を穫るまでは僕の意向に従ってもらう。(一行の意見を聞き入れれば愉快げに頷いて見せる。反芻するように言葉を投げかけながらも、配されたハーブティーを口にして)」


タニヤマン「言われんでもわかっとるわい。貴様こそこちらの出した条件を忘れとらんだろうな?(いつすっとぼけられるかもわからんからこうしてちょくちょく釘を打つのである。ハーブティーを口にしながら相手の出方を窺いつつも)従えと宣う以上はこちらの納得するような策があるのだろうな?(と続けて問いを投げかけ)」


アディシェス=フレン=リーン「ユカリアを殺したいのだろう、クラスタ。僕に手を貸せば損はさせない――……君の変調は僕にとっても心が痛い、早く君の笑顔を取り戻さねばね。(自身の胸に指先をあてがうように、クラスタへと述べればターニャへと視線を傾けて)ああ、無論、約束は違えるつもりはないよ。――……コルタナという娘には手を出さない、だろう?」


クラスタ「……好きにすればいい(アディシェスから指揮系統を預かると言われれば本を捲りながら頷く。もとよりここで離反行動を起こしても事態が良くなることはない。勝つためには必要なことである以上、殊更異議を唱える気もなく)」


クロ「(トトポヤにお茶を貰えば)さんきゅっス、トトポヤちゃん。トトポヤちゃん、ちゃんと休んでる?疲れた顔してるっスけど……(っと、お茶に口をつけながら体調を気遣い)」


トトポヤ「は、はい、なんとか大丈夫です……正直、あの夜みたいな事態には陥りたくないですし、この先、不安でいっぱいですけどね……。ターニャさんから杖は頂きましたけど、本当に扱えるのかも分からなくて……(クロに身を案じられれば、素直に胸中を打ち明け)」


クロ「トトポヤちゃんも気を追いすぎないでね、オレッチはそれで失敗したからさ(っと、トトポヤの肩を軽くポンっと叩き)なーに、もしもの時はオレッチ……、いや、オレッチ達、兄弟姉妹(きょうだい)、全員が何とかするからさ!大船に乗った気持ちで任せてっスよ――っ!(っと、気負っているトトポヤを元気づけるように、ニカっと笑い)」


トトポヤ「クロさん、有難うございます――……あの後は何事もなくて、本当に良かった。(一連の決着について言及しながらも、青年の気遣いに微笑んで見せる。)兎に角……今は、精神的に追い込まれている方が多いので、そちらのほうが心配です。クラスタさんも塞ぎ込んでしまっていますし……」


ダリル「カウプス、ラナメール。(そう心労と憔悴が見える二人に改めて声を掛けるようにして男は両者の前に出れば)ピエラの件は俺が腹を切ってでも詫びよう、弁明することは何もない、俺が弱かっただけだ。(そう腰を折る様にして深く謝罪の言葉を述べれば)ただ、今は俺の妻………イーリィを救うのにこの身を捧げることを許してくれ。(そう呟き正面に向きなおる。その瞳には煮え滾る様に燃える闘志が宿っており)」


ダリル「だから待っていろ、絶対に救い出して見せる。(そう確信を得ているかのようにはっきりと男は言い放てば)」


カウプス=エリダヌス「ダリル……感謝しているよ。君たちがいなければ、僕たちも今ここには居ない。僕は平気だ……姉さんのこともピエラの事も――……(陰の差した面差しでダリルへと振り返る、ラナメールを庇うように部屋を後にしようとしながらも、黒々とした双眸に怨嗟を宿らせて)教皇のした行為は、ただの虐殺だ。僕とて、断じて赦しはしない。――その機が来れば僕も戦列に加わらせてもらうぞ。」


ダリル「ああ、期待している。(そう去り際の男の言葉に反応する様に口元を上げるようにして覚悟を受け取れば)」


ユゥク「採寸合っていてよかったな、クロの事を長く護ってくれればいいのだけど(2人の会話を傍目に新しい装いになった獣頭種の男性の背中へと視線を投げる。少しでも彼が生き残れるようにと願いを込めた一着を感慨深く見やっては、はっとして用件のある男性へと)……ダリルさん、ダリルさん。手入れの為、お預かりしていた和剣をお返ししたいのですが……。」


クロ「(去り際のカウプスとラナメールに対し)カウプス、ラナメールちゃん……、オレッチが言う事はお門違いなのかもしれないが、あまり自身を追い詰めない方がいい…、ゆっくり休んでくれっス(っと、言葉をかけ)」


クラスタ「ゆっくり休みたまえよ(部屋を出ていくラナメールとカウプスへ一瞥して小さく手を振る。再び読書へと手を伸ばそうとしたところでアディシェスから声をかけられる。胡散臭そうに視線を彼へと流し)……世界樹を踏破する。それを実現するための覚悟がボクは甘かっただけだ、キミの寒気のする世辞はいらないよ。それよりも、これからの指針を教えてくれないかね」


ダリル「御託はいい、助けられた手前一度は犬になってやる…具体的な今後の方針をとっとと述べろ。(今にも喉笛に噛みつきそうな軍用犬なごとくギラギラとした殺気を両目に宿らせながら男は目の前の優雅に物を語っている男に言葉を投げれば)」


アディシェス=フレン=リーン「――……良い心構えだ、身が唆るよ――……個人的に僕は、君の手が借りたい、クラスタ。ユカリアを殺すため、あの魔王の世界樹踏破を妨げるべく、僕に協力してもらいたいのだが――……返答はすぐにとは言わない、考えておいて欲しいな。(辛辣な答えに対しても笑みを深めるばかりで、くつくつの喉を鳴らす。小休止のなかで、今後の方針を尋ねられれば、ふぅっと一息ついて)早急だな、君たちは。……久方ぶりに友との語らいなんだ、時間を遊ばせるのも悪くあるまい?」


ダリル「ユゥク、手間をかけたな。(そう自身の獲物を預けていた獣頭種の女性から声を掛けられれば振り向いて獲物を受け取る為に手を差し出せば)お前から見てどうだった、俺の刀は。(そう純粋な感想を聞く様に男は投げかければ)」


カウプス=エリダヌス「みんな、ありがとう――……少しだけ、少しだけ気持ちの整理をさせてくれ。(一行へと再度振り返り、全員へと謝罪にも似た礼をのべる)」


クロ「(ユゥクから新装備の着心地はどうかと言われれば)バッチシっスよ!流石、オレッチの自慢のユゥクっス!(っと、彼女の獣耳を巻き込む様に、ヨシヨシと頭を撫で回し)これでオレッチは前に進めるっスよ……(っと、精一杯感謝を述べ)」


タニヤマン「(口では分かったと言っているが…絶対なんかする気だなこいつ…やっぱ引き続き警戒しとこう)誰が友だ。俺たちは利害が一致したから一応は貴様の指示を聞いてやってるんだ。それを忘れるな」


クラスタ「アディシェスくん、キミに協力することで星を救えるのなら協力する(アディシェスから協力を求められれば、しばしの逡巡のち小さく頷く)ただし、キミが大義にかこつけて必要以上に星の民を害するというのなら、ボクはすぐにでもキミの首に手をかける。それがボクの大切な人達をあわせて手にかけるとしても、だ。――それだけは覚えていてくれたまえ」


ププレ=フレン=リーン「クラスタお姉ちゃん……(あの一件からまるで人が変わったように冷淡な彩が載ったクラスタを見やっては、やや近付きづらそうに傍へと寄る。寄り添うように腰掛けて)」


クラスタ「ププレくん、そんな顔をしないでくれたまえ、ボクはまだボクだ(ププレが心配そうに傍へ寄ってくる。そっと頭を撫でて寄り添いながら言葉を紡ぎ)ボクはどんなことがあっても星を守る。自分の約束を果たす。安心したまえよ」


ププレ=フレン=リーン「……お姉ちゃん、あまり自分を追い詰めたら駄目だよ……。お姉ちゃんまで、あの女みたいになっちゃうよ……。(今までと変わらないと紡ぐクラスタへと努めて柔らかな声で応えてみせる。その手を添うようにしては面差しを覗き込み)」


クラスタ「ありがとうププレくん、やっぱりキミは優しいな(ププレから懸念の声を聞けば、そっと抱擁する。以前は人の心情など気にもとめない子だったはずだ。それがこうやって気を使えるようになったのは過去の少女を知る自分としては嬉しくもあり)――ププレくん、いずれキミにも分かるさ。星を背負うものの責任と、貫くための覚悟を」


クロ「(ユゥクから装備を受け取っている近くにいたダリルに)ダリル、お前も装備を新調したんっスね。あの長ったらしい髪も切ったのか(っと、決着後の三日間、あまり会話らしい会話をしてなかったが、これを気に改善していこうと、話かけ)」


ユゥク「どういたしまして、こほん――ご師事を受けていた方から譲り受けたモノと言うことなので、意匠や基調はそのままでより剛性と強度に富んだ皮巻きに、柄糸は滑りにくく、手溜まりを確保し易いグノーラント産の物を使用しています。(礼を言われれば、片腕で器用にその包を解き、真新しいながらにも今までの彩が残った一振りを顕にし得意げに説明し)」


ダリル「流石職人堅気だ、感謝する。今度機会があったら俺の脇差を見せてやろう。(そう満足そうに早口に語る彼女を見て、口元を上げながら受け取れば)」


ユゥク「限られた範囲、限られた素材と時間で武具を活かすのが技師の腕の見せ所とリニーニャの師には教わりました。和國の武器には不慣れな為、拵え自体としては不出来と存じますが、私の技術がダリルさんの一助になってくれれば幸いです。(そう説明終えれば、改めてダリルへと向き合って頭を下げる。何かが吹っ切れた様子のクロへと向き直っては緩く微笑んでみせ)クロ――……前に向かって歩けるようになって、良かった……。いつでも私の元に戻ってきていいからね。」


ダリル「ああ、クロ、お前も気合が入ってるじゃないか。(そう久しい弟の会話に口元を上げるようにして小突く様に胸を押せば)」


クロ「フフッ、ちょっと毛先も金髪に染めてみたんっスよ(っと、長耳を両手で掬い、染めた先を見せびらかし)前世の人間の頃から染めてみたいとは思ってたんっスけど、まさか、この姿になって染めるとは思わなかったっスね(っと、冗談交じりに苦笑し)お前もオレッチほどイケメンじゃないっスけど、短い髪も似合ってるじゃないっスか(っと、ダリルと同じく、信頼し合う様に、胸を軽く小突く)」


ダリル「クロ、先の一件で俺たちの兄弟の間は簡単には解決しないだろう。(そう胸に拳を置いたまま男は静かに語る様に獣頭種の男に声を静かに掛ければ)ただ、一生ではない、時は人を癒してくれる………根気強くお前のやれることやれ。(そう最後は皺の寄っていた顔を崩すにそう言葉を掛ければ)期待している。」


ダリル「少なくとも俺はお前の味方だ、何かあったら存分に頼れ。(そう最後は肩にポンっと手を置いて答えれば)」


クロ「(先の仲違いの一件について真面目に返答されれば)ああっ、分かってるっス……。これからのオレッチの行動でそれを示していく、あの二人にはな……(っと、クラスタとターニャを一瞥し)ダリル、俺をずっと見ていてくれ――。そして、俺が間違えそうになったら、また容赦なく俺を叱ってくれよ(っと、ありがとうっと、ダリルの肩を叩き)」


アディシェス=フレン=リーン「僕の今の目的はあの首座司教を討つことだけだ。結果的に星の民を巻き込むことがあったとしても、それは本意ではない、とだけ言っておこうか。――……ふふ、僕は良き友だと思っているのだけれどね。(弁明と言わんばかりにクラスタへと紡ぎ遂せては、ターニャへと続け)」


タニヤマン「きっしょ」


クラスタ「アディシェスくん、建前は不要だ。結果的に民を巻き込むことがあるのは、"今のボク”は理解しているしそのつもりだ(そう、この世界を救うためにすべてを守ろうとしてきた。だがそのせいで自分は失敗したのだ。改めなければならない)そう、自分を貫くために自分の保身を求める。それは甘えだ(ボソリとつぶやいて暖炉へ視線を流し)」


アディシェス=フレン=リーン「――怪物と対峙するものは、いずれ自身も怪物となる、皮肉なものだ。気が変わったら、僕に個人的に声をかけてくると良い、君の力を増す一翼となることは確かだよ、クラスタ。(複雑な胸中にあるであろう女性を俯瞰すれば、心底愉快げに口角を持ち上げて)」


タニヤマン「おい…前にも言ったが…妹を口説くのはやめろ(不穏極まりないことを宣うアディシェスとクラスタの間に割り込むように口を挟めば警戒するようにその相貌ににらみを利かせ。今の憔悴しきったクラスタにこいつの言葉は危険だと判断し)それにこのままお前とつらを突き合わせるのは不愉快だ。いい加減話を進めてもらっていいか」


【そうして、小休止の合間、会話を続けていけば、不意にターニャが所有している空のマナ結晶が蒼く輝きはじめる。これまで、がらんどうであった空間に陽が差し込んだかのように瞬いてはその存在を主張するようであった】


タニヤマン「(といつまでも話を薦めないアディシェスに苛立ちを覚えた刹那、懐に忍ばせていたマナ結晶が輝きを放てば)なんだ!?何が起きている!?(まばゆい光を放つそれをなんとか制御しようと)おとなしくしろこいつ!」


クラスタ「マナ結晶が、光ってる?(ふとターニャへ渡したマナ結晶が光はじめる。輝きに目を細めつつターニャへ近づけば注意深くマジマシと観察して)……ずっと空っぽだったのに……」


ププレ=フレン=リーン「……クラスタお姉ちゃん――……信じてるよ。(漠然とした言葉を投げかけては、抱擁に応えて見せる。薄闇の中、暖色の蝋燭だけが瞬くなか、不意にターニャの衣装内が輝けば目を丸くして)うわぁ!?びっくりしたーっ!?」


ダリル「―――………。(突如として煌々と輝きだしたマナ結晶に刀の鯉口に手を掛けながらも眼を向け)」


ユゥク「な、ななにっ……なんの光ッ……!?(突如として輝き出した結晶、室内が薄暗いこともあって眦を決してしまっては)」


トトポヤ「ひゃ、ひゃぁ!?何が、何が起こってるんですかっ……?この光っ……」


クロ「(ダリルと会話をしていた瞬間、ターニャの方から、眩しい光が照らされれば)うお!?なんっスか!?!?(ターニャの方を確認してみれば、ターニャの所持していたマナ結晶が輝きだしており)だっ、大丈夫っスか!ターニャ!!」


アディシェス=フレン=リーン「彼女との合意があれば問題はないだろう――君が彼女の保護者ではあるまい?事理弁識能力は備えている大人だ、彼女は。(無実を謳うようにいけしゃあしゃあとのたまっては、不意にマナ結晶が輝くさまに眼を瞬かせて)ほう……」


ププレ=フレン=リーン「そういえば、そーだった。タニヤマンちゃん、その結晶のことおとーさんに聞いてみれば?」


タニヤマン「(いや…そうだ!クラスタの指摘通りこいつは伽藍洞だったはず…だとすればなんだこの現象は?オーバーヒート?無意識に堆積していた俺のマナが発露した?あるいは…誰かのSOS…?)おいアディシェス、その反応はこれが何で今何が起きているか知ってるんじゃないか?(癪だが…ププレの言うようにアディシェスにこのマナ結晶…そしてこの現象のことを問えば)」


アディシェス=フレン=リーン「ふむ……この輝きは――……貸してもらえるかい?誓って下手な真似はしない、すぐに返すさ。(ゆるりと立ち上がっては、ターニャの至近へと近づいて輝くマナ結晶を前に手を差し出す。未だ確執は確かなため、疑念を拭うように一言足して)」


タニヤマン「………………すぐ返せよ(数舜の逡巡の後渋々マナ結晶を手渡す。ここで俺の信頼を削ぐようなことはしないだろうとの判断だ。それすなわち王都側の敗北を意味するからだ)」


アディシェス=フレン=リーン「よし、いい子だ……――(預かったマナ結晶らしき物体を手に取れば、蒼白く輝きを放つそれを双眸を細めて観察し、しじまを挟めば、数拍ごとに神妙な面持ちで唸声をあげつつも角度を変えてその瞬きを覗き込む。時折、ほぅっと感嘆しては、ゆるりとターニャへとしたり顔で碧の視線を投げ)」


クロ「(ターニャとアディシェスとのやりとりを傍観しつつ)なっ、何が始まるんです!?(っと、第三次世界大戦だと、言葉が続きそうな台詞を口に出し)」

クラスタ「……(マナ結晶を預かりマジマジと観察するアディシェス。普段の彼からあまりみない様子に思わずフードを深くかぶって)それはボクも知らない。何かわかるのかね」


アディシェス=フレン=リーン「すまない、僕でも解らないな。」


クラスタ「…………」

ダリル「………。」


タニヤマン「貴様!!(ぶちギレつつもマナ結晶を取り上げれば)」


クラスタ「とにかく、推察でもいいからわかることをいいなよ」


秘匿のダアト「――……マナ結晶ではない、それは。(ぼそりと今まであの戦いから眠りに落ちていた上位存在が夜露のような声を零す。寝台から上肢だけを起こした姿勢、盲しいた瞳で淡い輝きを放つ結晶を見つめて)」


ダリル「ダアト………!!!(突如目覚めた自身の上位種に身を乗り出す様にして顔を向ければ)」


クロ「(会話に割り込むように、重症だったダアトが起き上がり、言葉を発っしれば)ダアトさん!(っと、ダアトの復活に喜びの声を上げ)」


秘匿のダアト「マナ結晶を媒体として、何者かの精神が転写されている。この機を見て活性化したのは、偶然とは思えんが――……お前たちの世界にも似た話があるように、死後に強まる思念や怨念、その類のものだろうにも思える。(青年から投げかけられる視線に頷いてみせながらも、湯水の如く見解を述べ)」


秘匿のダアト「……苦労をかけたな」


クロ「つまり……どういうことだってばっス?(っと、ダアトの解説に何も分かってないかの様に、アホみたいな疑問符を浮かべ)」


タニヤマン「マナ結晶ではないなら…これは何なんだ?(ダアトの元に駆け寄ればマナ結晶をよく見えるように差し出し、病み上がりの彼女の紡いだ言葉を自分の中で咀嚼すれば)……──魂のようなものか…?」


クラスタ「……つまり、ユーレイや怨霊の類ということかね」


ダリル「いつもの憎まれ口はどうした………?似合わんぞ。(そう男は自身の上位種にそう言葉を投げかけながらそう言葉を紡げば)」


秘匿のダアト「莫迦者、目覚めた矢先に懇切丁寧に話を噛み砕いてやっているというのに――……(一瞬で思考放棄するクロへと苛立った様子で嘆息を零す。咀嚼して、言葉を零す両名へと緩く頷いてみせ)生き人形や、それらの類の話は転生前に一度でも耳にしたことがあるだろう?――形而上学的な現象ということだ。」


秘匿のダアト「ふん、憎まれ口を叩く余力もない母親を労え――……そういうことだな、有り体にいえばだが……他に反応はないか?ターニャ、なにか、刺激を与えてみろ。外的干渉で反応を示すやも知れん」


ダリル「フッ、そうでなくっちゃな………よく舞い戻った。(そう男は噛みしめる様に上位種の言葉を受け取り口元を上げれば)」


クロ「とりあえず、ダアトさん、目覚めてお喉も渇いている事でしょう……、どうぞ、どうぞっス……(っと、難しい事は兄弟姉妹(きょうだい)達に任せ、すみません、すみませんっと、低姿勢で、両腕と両長耳を器用に使いながら、水差しから、コップに水を注いで渡し)」


アディシェス=フレン=リーン「目覚めたか――……盲しいた双眸に跛足……よくも今まで生き延びてきたものだ。(オーランドの上位存在が目覚めれば、ほうっと感嘆してその様子を眺めては)……成る程、この結晶は単なる器に過ぎない、というわけか。」


秘匿のダアト「礼を言う――あの窮地をよく脱したものだ……正直、まだ身体は十全には動きそうにない。(クロからコップを受け取ってこくりと、一口嚥下しては)当然だ、世界樹の頂きからの景色をまだ拝んでない故な」


タニヤマン「何かって言われてもな…うーーーーん…えい(何かしてみろとアドバイスされればマナ結晶(仮)に対し軽くデコピンをかましてやる。もちろん傷つかないように優しめにだ)」


謎の声「みぎゃーーーーーーーーーーーー!!?(ターニャが結晶をデコピンすれば、結晶内から素っ頓狂な女性の声が響く、そのまままるで意思を持っているかのように小刻みに跳ねはじめ)」


コルタナの炉「あにすんのよ!!!?はーーっ!!?これ、ちょ、どーなってるわけ!?」


クラスタ「……!?(ターニャがデコピンをした瞬間、突然マナ結晶から声が響けば、ビクリと肩を震わせて)……いったいなんだね」


タニヤマン「大げさだなぁ…………え?(愛杖もよくしゃべっていたものだからつい流しそうになったが…石がしゃべっている!!いやさその刹那に響いた幼馴染の声に目を丸くすれば)えぇぇえぇぇぇぇぇぇ!!!?」


トトポヤ「しゃ、しゃべったぁああーーー!?(いきなり素っ頓狂な声をあげる石に思わず腰を抜かし)」


ダリル「―――!!!(突如結晶から鳴り響いた悲鳴に反応する様に刀に手を掛けたが、聞き覚えのある声に困惑する様に眉毛がピクリと動けば)」



クロ「(ターニャとダアトの会話を聞きながら)お腹も空いた事でしょう……、林檎をむきむき……(っと、ダアトの傍にあった果物籠にある林檎を両耳を手の様に使いつつ、狩猟ナイフで器用にシャリシャリと剥いていき、可愛い兎林檎を作れば、ダアトの前の皿の上にを置き)」


クラスタ「……!?(マナ結晶から突拍子もないコルタナの声が聞こえてくれば、流石の自分でも驚きに身を顰めて)こ、コルコルの声……?」


クロ「(結晶から声が発っせられれば)ちょっ!何がどうなってるんっスか――っ!?その声はコル姉!?(っと、混乱し)」


ダリル「何故コルタナの声が………。(そう自然と言葉が漏れれば)」


コルタナの炉「……ドラシール教に捕まってッ……パパと変な部屋に連れられて――……それから、えっとっ……くそ……何もっ、思い出せないな……(しどろもどろになりながらも、結晶からは聞き慣れた、古馴染みの声が漏れる。何か逡巡しているような声を漏らしては)文字通り手も足も出ないんですけど……」


コルタナの炉「あんたらが助けたんでしょうけど、助けるなら、もうちょっとマシな形で助けられなかったわけ……!?」


ダリル「お前から俺らは姿が見えているし声が聞こえているのか………?(そう言葉を発する結晶に声を掛ければ)」


コルタナの炉「みぎゃーーーーーーーー!!?あんた、ダリル!?!??何年経ってんの!!?」


ダリル「久しいなコルタナ、お前からすれば俺も老けただろう。(そう帽子を取るようにして胸に当て当時のコルタナであろう結晶に語り掛けるように言葉を掛ければ)」


タニヤマン「えっと…そこに住んでるの?(あまりの事態に混乱し素っ頓狂な言葉を投げかければ)」


コルタナの炉「ひぇええええ……その声って、もしかしてあんたターニャなわけ……?随分、大人になったわねぇ……珍妙な姿は相変わらずみたいだけど……(一転して、見えていることを示唆するかの如く放心と感嘆が入り混じった声が漏れる。彼らが会ったことのあるコルタナとは掛け離れているほどに正常な物言いで)」


クロ「この声……、あのドラシール教で会った時の印象とは違う、8年前のコル姉の声色そのまんまだ…、なにがどうなってるんっスか……(っと、混乱で頭を抱えながら、なりゆきを見守り)


コルタナの炉「みゃーーーーーっ!!?クロ、あんたでっかくなり過ぎじゃない!!?獣頭種ってやっぱり成長が著しいのね……!?」


クロ「(8年前と同じ、コルタナの声色と返答に嬉しそうに)ああ、身体ばっかデカくなったっスよ、本当に……(っと、嬉しそうに笑い)」


ダリル「………やはり当時のコルタナだな。(そう最近会った彼女ではなく当時のままであろう声を発する彼女に動揺しながら声が出れば)」


クラスタ「……(マナ結晶から漏れる声は、まぎれもなくコルタナの声だ。昔の彼女の声が聞こえてくる。ローブを脱ぎ取り、彼女の声に聞き齧るように見据えて)コルコル……?」


コルタナの炉「わー!!クラスタ、クラスタよね……!綺麗になった、立派に成長したのね……ひと目見てわかったわ……!(クラスタの声に反応しては、一層輝きを増して嬉しげな声を発し)」


タニヤマン「マジでお前なんだなコルタナ……………(掌の中から聞こえる声に思わず声が上擦る。毎日のように夢で聞いたあの声だ。思わずマナ結晶を優しくぎゅっと抱きしめれば…即座に冷静に戻り)………いや…マジでなんでそんなことになってるわけ?これが精神の転写ってやつなのか?」


コルタナの炉「ターニャ……会いたかったわ……。あれから、程なくして貴方たちが助けてくれたのね。わー!?くすぐったいから、密着させすぎないでくんない!?(結晶を抱きしめられれば本当にくすぐったいのか、気恥ずかしいのか判別付かない様子で声をあげ)………………さあ?私も何が何やら……」


クロ「(一応、この結晶のコルタナと、先日、教会本部で戦ったコルタナが同一人物かと確認する為に)コル姉、俺達はこの前、教会本部でお互い戦ったばかりっスけど、何か覚えてるっスか?」


コルタナの炉「いやいやいや……王子様とは程遠いけど、これはこれで悪くないわよ、ダリル……(ダリルの声かけに満更でもない様子で微笑みながらもクロの声掛けに対して)へ?知らないわよ、そんなの。……あんたら、国教相手に戦ってんの?オーランドの田舎者たちが?」


ダリル「どうやら本当に当時の記憶のまま時が止まっているようだな………。(そう結晶から発せられる言葉とアディシェスの言葉から相当複雑な状況ということは感じ取ることができ)」

クロ「(コルタナの何の作為も演技もない返答に、このコルタナは8年前のコルタナの姿の心なんだなと感じ)いや、変な事を聞いたっス、とりあえず気にしないでくれ(っと、8年前のままの彼女を困惑させる様な事はやめようと、この会話は打ち切り、後は、縁が深い、ターニャやクラスタがうまく纏めてくれるだろうと)」


アディシェス=フレン=リーン「教化の間は僕も見たことがある――……恐らくは、防衛反射の類か……死に瀕して精神の解れを免れるための忌避行為……自らのバックアップとして己の一部を石に託したか。しかし、この世界にはもうひとりのコルタナも居るというならば……まるで、スワンプマンだな……。(一行の会話を眺めては顎先へと指をあてがって)」


アディシェス=フレン=リーン「ある男が沼にハイキングに出かける。――この男は不運にも沼の傍で突然雷に打たれて死んでしまうが、その時、もうひとつ別の雷がすぐ傍に落ち、沼の汚泥に不思議な化学反応を引き起こし、死んだ男と全く同一形状の人物を生み出してしまう。……これが我々の世界のスワンプマンの概要だ。」


アディシェス=フレン=リーン「この落雷によって生まれた新しい存在は原子レベルまで死んだ瞬間の男と同一の構造をしており、見かけも全く同一だ……。僕らの場合、現状2人のコルタナという女性がこのルナヴェスに生きていることになるな――……肉体こそ持ち得ないが、精神的な不整合はないのだろう?(会話を傍らで聞きながらも、あくまで興味深そうな様子で声をなげる)」


ダリル「余計なことは口走るな、口を閉じてろ。(そう興味津々と言ったスワンプマンを語る男を黙らせる様に男は釘を刺せば)」


アディシェス=フレン=リーン「……同じパーティの悩みは共有するべきだと思うのだがね、ダリル。安心したまえ、僕も余計な言葉を投げるつもりはないよ(ダリルに言葉を制されれば、くつくつと喉を鳴らし)」


タニヤマン「…とりあえず話を整理しよう。俺たちの前に立ちはだかったコルタナとこいつはどうやら別もんだということはわかった。ダアトとアの字の言うように精神を転写してこの状態になったのだろう。仮にそれが真実だとして今こいつの肉体を使ってるコルタナは何だ?(並行同位体とでも呼べばいいのだろうか。現在二人のコルタナが同時に存在していることになる。混乱しそうになるが…)どちらかというとテセウスの船のような気もするが…ダアト…他になんかわからんか?(ここはひとつ詳しそうな者に質問を投げることにしよう。病み上がりに悪いが…)」


クラスタ「うぇ……ひっぐ……(彼女の声を聞いてポロポロと涙がこぼれる。軽いノリの飄々とした言葉遣い。そうだ、これは昔のコルタナだ。そう思った瞬間、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。前日の戦いでコルタナがダアトへ放った狂撃。その行為に内心ショックを受けていたんだろうと思う。裏切られた。彼女は敵だったのだと。それはもしかしたら違う理由があるかもしれないという一種の安堵感が自分の中に広がるのを感じた)」


コルタナの炉「どうしたの、クラスタ――私だけ置いてけぼりになっちゃったけど、またこうして無事に会えたじゃない。あの夜の事は今でも忘れられないけど……みんな変わらず元気そうなのが救いだわ。(涙を零すクラスタへと宥めるような声音で諭してゆく。壊れていない、当時の彼女そのままの語調であった)」


クラスタ「ちがう、ちがうよコルコル……(ああ、今なら分かる気がする。現実で会った先日のコルタナの言葉が、重みが)ボクは……もう少し早くこの言葉を聞きたかったよ……(それだけ告げると涙を拭きフードを被る。もう今は彼女に向き会うことは出来ない。このまま触れ合えばきっと、自分が弱くなってしまうから。弱くなってしまえば、またみんなを殺してしまうから)」


コルタナの炉「ごめんね……クラスタ。私がこうなっちゃったのも、本当はきっと一杯手を尽くしてくれた結果なんだよね……。また昔みたいに、とはすぐにはいかないんだろうけど……私はオーランドに居たときみたいに、貴方と本を読んだり……色んなことをしてみたいわ……。」


秘匿のダアト「……同一の思考実験と呼べるものが混在していることになる。お前たちがルキフ自治区で戦ったコルタナはまさしくテセウスの船と呼んでも違いはなかろう。……とどのつまり、お前たちがどちらを真と見るか偽と見るかにつきる。(ターニャの問いかけに、まったく此れからの方策に関わらないことである故に一瞬、押し黙るものの、親心と言わんばかりに嘆息をこぼし)」



クロ「とりあえず、ダアトさん、傷の方はもう大丈夫なんっスか?(っと、片長耳を片腕の様に使い、切った兎林檎をフォークに刺し、食べる?っと、差出し)」


秘匿のダアト「これくらいが丁度いいか――竜種は大食らいだが、老いているのでね。(クロの気遣いに、ふぅっと自らの肉体を呪いつつも述べて林檎を食み始め)」


クロ「(クラスタが安堵で涙を流しているのを見守る。彼女も色々と張り詰めていたのだろう、その一端を作っていたのは俺でもある、反省せねばならない。しかし、この結晶のコルタナの存在で、あの教会のコルタナの裏切りは、故意あっての裏切りではなく、別の要因の裏切りであった事に安心を得たのだ、これで少し塞ぎ込んでいた彼女も、一歩前に進めるだろう)………。」


クロ「ダアトさん、あの時は守れずにすまなかったっス……(っと、林檎を食べるダアトを看護しながら、あのコルタナの閃光魔法で貫かれたダアトの姿が脳裏に過ぎり)」


タニヤマン「なるほど………俺にはグイオントースで会ったあいつもこのコルタナも真も偽もないように思える…。時間という障壁に阻まれているだけで同じような環境で成長すればこいつもああなるんじゃないか…?(哲学的な話になってきたが…ようは環境が人を作るという話だ。そうでなければあっちのコルタナの態度が嘘偽りになってしまう。自分にはとてもそうは思えない。甘いのかもしれないが…)」


秘匿のダアト「そうだな――どちらも真と見ようとも、お前の自由だ、タニヤマン。私も同じような意見だよ、彼女はまだ穢されていないだけ、壊されていないだけだ。……それだけのことに過ぎない。(思い詰めすぎるなよ、と言わんばかりに努めて言葉を柔らかくさせて)」


コルタナの炉「まー、でもオーランドを襲ったやつと、私たちを攫ったドラシール教は許さないけどね。私が力になれるなら、なんでもするわよ。手も足も出ないケド」


アディシェス=フレン=リーン「コルタナ、初めまして――……あの夜、君と父を背後から絶命せしめたのは僕だ、以後よろしく頼むよ(そんなことをダリルにのたまった矢先に自己紹介をしはじめ)」


ダリル「この糞野郎………!!!!(そう、釘を刺したのにも関わらずこの場を乱す言葉を平然と言った男に掴みかかる様に男は胸倉を握りしめれば)」


コルタナの炉「――――…………(一瞬、言葉を失いながらもアディシェスの呑気な自己紹介に爆発したように結晶が跳ね)コロス!!!!!!ダリルこいつ叩き斬っていいわよ!!!」


クロ「(先ほどダリルに釘を刺されたのに、コルタナを揺さぶる様な台詞を口にしたアディシェスに糞デカ溜息を漏らし)こいつ本当にガガイのガイかよ……(っと、ダリルが激昂して、アディシェスの胸倉を掴み)やめとけ!ダリル……、こいつに何を言っても無駄っスよ……(同じく激昂するコル姉の結晶に)落ち着けって!とりあえず、ターニャ何とかしろっス!」


コルタナの炉「クロ!!とめないで!!この姿でもアイススパイクの一発くらい撃てるわよ!!!!(クロの制止も虚しくぎゃーすか結晶が喚き)」


ダリル「今の状況が分かっていながら………よくもそんな台詞を言えたものだな?(深紅に帯びた禍々しいオーラを纏う刀を首元に当てながら男は今にも切り落とさんばかりにそう告げれば)」


クロ「落ち着けって、ダリル!お前が怒ってるせいで、結晶のコル姉まで呼応して怒ってる――っ!冷静になれっス!(っと、アディシェスの掴んでる胸倉の手に、自分の手を添えて、静止し)」


ダリル「この野郎は絶対に許さん………!!!!!絶対にだッッッ!!!!!!(兄弟に静止されて一度距離を取ったが、当時の記憶がフラッシュバックしているのか今にも噛みつかんばかりに血眼で狂犬のごとく吠えれば)」


アディシェス=フレン=リーン「やれやれオーランドの人間は気が短いな、短絡的な判断は身を滅ぼす結果に繋がるよ、ダリル――(大人しく胸ぐらを掴まれ委ねながらも、表情一つ変えずに微笑んでみせる。わかったわかったと、両手で制止すれば、半歩下がり)解った、これ以上彼女を揺さぶるのは止すとしよう。」


クラスタ「やめたまえよダリル……(コルタナにのせられ激高するダリルを制止する)ボクらは今、王政と小競り合いをする立場にない。……憤るのはほどほどにしたまえ(すっとアディシェスとダリルの間に入り制止しようとすれば)とはいえ、怒りたくなるのは最もだ。罵詈雑言くらいは好きに言うといいさ」

タニヤマン「とりあえず…今手持ちの情報ではこいつをどうこうできんか。いずれにしろコルタナを取り戻すことは必須に思える。あいつの肉体はこいつのものだろう。契約内容に変化なしだ(とアディシェスに向き直れば絶賛修羅場中であり、頭を抱えつつも)えーなんかすごいことになってるねクロちゃん………おいダリル、そいつを殺すのは全部終わってからだ。とりあえずコルタナも落ち着け。クラスタ、一旦コルタナはお前に預ける。年頃の女といっしょの部屋で寝るわけにはいかんからな。お前が世話しろ」


コルタナの炉「ターニャも主犯を前になにをあっさりしちゃってるわけ――!!?この元凶のバカ金髪を火炙りにしなさいよ、バカーーーー!!!あんた、私が殺されてもこんな涼しい顔してたんじゃないでしょーね!?」


クラスタ「……あいにくボクは魔導書の解析に忙しいのだだよ。恋焦がれた年相応の男女、二人で遠距離恋愛の寝落ち電話よろしくやればいいじゃないか(自分がお世話しろと言われれば、ズイっとマナ結晶の受け取りを拒否する)」


クロ「(ダリルとアディシェスの諍いに区切りが付いたところで、安堵の溜息を尽きつつ)アディシェス……、兄弟姉妹(きょうだい)の不和を起こしてたオレッチが言えた事じゃないのかもしれねーっスけど……。お前は本当に余計な事しかしやがらねーっスね、少しは人の心ってやつがないんっスか?(っと、アディシェスに愚痴を漏らし)」


アディシェス=フレン=リーン「ははは……まったく飽きさせてくれないな、君たちは。気を使わせてしまったね、クラスタ、許しておくれよ。僕も多忙故、家族の会話には飢えていてね。……その気迫がありながら、教皇相手に敗走したのだから世話がない。なんなら、ここで決着を付けるかい?(血眼のダリルへと涼し気な面差しで相対し)」


【さながら、それは冷気の爆風であった――。】


【祝星歴728年陽黎月8ノ日、ミダス城を中心とした途方もないマナの奔流が3層を波紋のように駆け抜けてゆく。木々や岩山は本来の形を象ったまま凍てつき、鳥獣や魔物、清流から塩湖に至るまでを呑み込み、大戦期を経て続いた王国と竜教の決別を意味する氷河潮流コールド・タイドが3層の瞬く間に凍土へと塗り替えた】


【白銀の吹雪の中に、一度は威厳を誇っていた建造物も、次第にその輪郭が霞んでいく。屋根の上に積もる雪が重く、時折り風に攫われる様子が、まるで巨大な白い怪物が建物を抱きしめているかのようだった。】


【3層全土を襲う凍てつくマナの波動は、程なくして指針を定めるこの場にも達し――凄まじい轟音と震動、宿舎全体ごとなぎ倒されんばかりの衝撃と同時に、窓が暴風によって突き破られれば外気が一気に屋内へと流れ込み】


アディシェス=フレン=リーン「無論、人の心は持ち合わせ――おやおや、随分と行動が早いな。もうしばらくは猶予があると踏んでいたのだが――……(糸髪をさらう程の寒波の流入に、冷ややかな笑みを張り付かせたまま迎え入れ)……さて、おまちかねの指針を伝えよう、トルパドル深林群とこの王領を放棄し、我々は一時2層に転進する。」


ダリル「………ッッッ!!!!!(血が上っていた男の頭を一瞬で冷め上がらせるような莫大なマナの奔流がこの場一帯を包み込めば男はすぐさま体制を取る様に身構えれば)」


クラスタ「(突然それはきた。冷気を含んだ暴風が母屋を襲う。)――……シールドガーデン(すぐさまグリモアを取り出し詠唱を開始する。マナの暴力をなるべく軽減するために何重にも大地の壁を出現させれば)」


クロ「(談話室で会話をしていたその時、急に大きな衝撃が宿舎を襲い、何が起こったのかと)うっ――おっ!?デカいっスッッッ!!一体なんっスか!?」


アディシェス=フレン=リーン「竜教はこのルナヴェスに根差した教義だ、些細な大義では信奉者と民意は覆られない。――レオスタッド第一王子には尊い犠牲となってもらう。僅かながらに民意の支持を得るにはこれしかないのでね。(錬金術の石壁によって、寒波を防げば素直に感嘆し)やるじゃないか、クラスタ」


コルタナの炉「はぁ、私だってなんでこんなヤツなんかに携帯して欲しくないんですけど!!?って、ひぇえええええええ~~~~!?!なになに、何が起こってるわけ!?というか、今思えばここはどこなわけ!?」


◆装備品取得

【コルタナの炉/MP+10魔術判定ダメージに+4d6魔術命中+2シナリオ進行によって性能追加/淡く蒼い光を放つマナ結晶を媒体としたコルタナの炉】


ダリル「レオスタッドを囮にして俺達だけ2層に逃げ延びるということか。(そう突如として告げられた方針に男はそう言葉を投げれば)」


タニヤマン「だめだ俺の言うこと一個も聞かんわこいつら。一回斬られといてくれ(コルタナの精神も肉体も無事と分かった今もはやアディシェスにあんまり興味ないのである。まぁ死んでくれたほうが嬉しいが)クラスタ…(今の彼女には何か目標、目的が必要だと感じて提案したが…どうやら彼女の心の傷は根深いようだ)じゃあ…今日はクラスタの部屋で三人で寝よっか♡(とあほな提案を口にした刹那空間そのものが凍てつくような感覚に襲われる。刹那轟音と共に本当に世界が凍り付いたように白に飲まれる。クラスタのおかげで大したダメージはないが…)お前その口ぶりだとあらかじめ予期していたな?クソが(訳知り顔のアディシェスの指示は適切に思える。だがそうは問屋が卸さない)すぐに転身してもいいが被害範囲が知りたい。お前の弟を使わせてもらうぞアディシェス。切り捨てるには惜しい。それに俺たちの仲間を同行させている。合流すれば戦力の増強になる」


クロ「クラスタ、助かったっス……(一瞬、動揺したが、錬金術で障壁を展開してくれたクラスタに冷静に感謝を述べ。アディシェスの言葉に)レオスタッドを犠牲に?正気っスか?まがりなりとも身内だろ?(っと、アディシェスなら言いかねないが、一応聞いておこうと)」


アディシェス=フレン=リーン「そうだ、亡国のために棄民らと共に身を擲った第一王子の献身は、きっと民意を掴むだろうさ――……解ってくれるかい、ダリル。……イーリィを切ったときよりもきっと精神的には楽だろう?(簡素な言葉で告げてくるダリルへと肉薄して、目線を合わせるように酷薄な笑みで紡ぎ、ターニャの言動に首を緩く左右に振り)……まったく、勝手なものだ。」


クラスタ「(ターニャから三人川の字で寝ようと提案すれば)……やだ(暫しの沈黙のあとふるふると首をふれば、アディシェスから賛美とレオスタットを犠牲にする旨の言葉を聞き)それは、ここの王領にいる皆を犠牲にするということかね(レオスタットにそう問いかける)」


ダリル「フッ………犬になるとは言ったがな…(そう男の言葉に帽子の鍔をと唱えながら男は言葉を発し)」


ダリル「犬畜生になる気など毛頭ないッッッ………!!!!!!貴様の言うことなど聞いてやるか戯けッッッ!!!!!!!(そう感情が爆発する様に男ははっきりと怒号の言葉を突き付ければ)」


クロ「(アディシェスの返答に、先ほどあると言おうとしていたが、断言できる、本当にこいつは人の心がない)シビラちゃん……(レオスタッドと一緒にいる、オーランド領の領主の娘だった大切な女の子が頭に過ぎり)」


アディシェス=フレン=リーン「身内?あのような愚物の原生民に情を寄せるとでも思ったのかい、クロ――……嘆かわしいな、僕のことをもう少し理解してくれていると思ったが……。(クロへと答える矢先に、クラスタに方策の否定的な意見をだされれば、顎先に指をあてがう。少なくとも、この3層は最早限界である。転身の判断は崩せない――折衷案とあれば)……迅速な行動ができるニオファイトのみで救出にあたるのであれば承諾しよう、それ以上は飲めない。」


クラスタ「これくらいは朝飯前さ、クロくん(クロから助かったと言葉を述べられればわずかに微笑んで答える。)アディシェスくん、ボクは…………(コルタナの声を聞いたからだろうか。判断を仰がれれば答えに淀む。)――……(いつもなら即断即決の場面であっても、声を出せず俯いてしまい)」


コルタナの炉「……まるで災害みたいなマナの奔流ね。これもドラシール教の仕業だったりするわけ?(先程の激高した状態から一転して、平静を取り戻した声音で告げる。)似てるな……私とマナの気質が……」


クロ「(ダリルの言葉に、ダリルならそう言ってくれると思ったと、喜んで言葉を発し)ダリルの言うとおりだ、お前がレオスタッド達を見捨てても、オレッチ達は見捨てないっス―――っ!!助けにいこう――っ!!(っと、クラスタ、ターニャに向き直り)」


ダリル「転身などしない、シビラとレオスタッドを救出に行く。(そう男は眼前にいる男性の言うことなど耳に持たないかのように言葉を告げると)」


タニヤマン「いいだろう。どちらにせよカウプス達は2層に退避させたいと思っていた。渡りに船だ。現場には俺達だけで向かい合流後すぐさま転身する(不安要素は残るがシビラたちの身の安全が最優先だこの条件を飲むほかないだろう。皆もそれでいいな?と聞くのは簡単だがそれすらクラスタを傷つけることになるかもしれない。多少強引にでも連れ出すことにしよう)」


勝利のネツァク「拙速が鍵だ――、疾くカタを付けろ。無駄話をしている猶予はないぞ、ミダス城からの波濤とみるならば、トルパドル深林群はいち早くこの災厄に呑まれている。(これまで傍観していた上位存在の一人が顔を出しては)ププレ、お前は私と来い。お前たちの上位存在は我々が避難させる、いいな?」


ププレ=フレン=リーン「えーーーっ!?私もおとーさんや、クラスタお姉ちゃんと戦いたいーーー!!!(行く気まんまんだったのにも関わらず、制止されれば不平不満を口にして)」


ダリル「ププレ………ダアトを頼む。(そういつも何かと取っ組み合う男だが、この状況で曲がりなりとも背を預け合った彼女に託すように男は真撃な表情でそう静かに告げれば)」


クロ「(ダアトさんを一人預けるのに若干の不安はあるが、現状でも危害を加える素振りはなかった、完全に信頼しているわけじゃないが、現状選択肢も多くはない、任せるしかないだろう)分かったっス、ダアトさんの事、よろしく頼むっス(っと、アディシェスの上位存在に頷き)」


クラスタ「……(すでに決断する力は無かった。寝る間に考える思考がまた襲ってくる。本当にこの決断は正解なのだろうか。もしこれで失敗したら、どれだけの人が死ぬのだろうか……人をの死を数で計算してしまう。どっちの決断を支持すれば数が残るだろうかと計算をしてしまう。10、100……10万……100万。……ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる)あっ……(気分が悪くなってきたところでターニャに手を引かれ我に返る)えっと……うん……(茫然とターニャの指示内容に従うように頷き)」


タニヤマン「すまんなクラスタ…きついだろうがキミの力が必要だ。辛くなったらいつでも俺に話してくれ(膝を地面に付きあからさまに不調そうなクラスタと同じ目線の高さで語り掛ければ優しく糸髪を撫で)」


アディシェス=フレン=リーン「自分を確りもつんだ、クラスタ。君はユカリアを殺すまで折れるつもりはないのだろう?(ダリルの憤然とした態度を受けては思考の泥にハマっているクラスタへと一言紡ぐ、ネツァクにも背中を押されれば最早、後はどれだけ疾く行動に移すかだけであった)……さて、赴くとしようか!君たちも病み上がりの肉体と相違無い、無茶はしてくれるな!」


コルタナの炉「クラスタ……ごめんね、私が……こんなんなっちゃったから……(何処か物憂いげなクラスタに贖罪めいた声音で紡ぎ)」


コルタナの炉「あんたが気の利いた言葉いわないから、こんなことになっちゃったんじゃないの!?バカターニャ…!!(ぼそぼそとターニャに携帯されながら小声で不平を漏らし)」


アディシェス=フレン=リーン「やれやれ、よく喋る石だ……遮音袋にでも仕舞っておいた方が良いのではないかい?(ターニャの傍らでぽつりと零し)」


クロ「(色々な思考に陥って、少し病み気味なクラスタに対し)オレッチが言えた義理じゃないっスけど……、クラスタ、皆を頼れっス、オレッチじゃなくてもいい。オレッチはお前らに助けられた、だから、今度はオレッチがお前らを助けるっス(っと、サムズアップして言葉をかけ)」


タニヤマン「しょーがないだろ!色々繊細な時期なんだよクラスタは!!(言うに事欠いてこっちにケチ付けてくる石ころにわざわざ顔を近づけて同じくぼそぼそ声で返せば)」


コルタナの炉「まぁ、女の子だもんね、クラスタは……。(非常事態ということもあって、何故か一応の納得をみせ)」


トトポヤ「み、みなさん、っ、き、気をつけて……!シビラさんや、レオスタッド王子をよろしくおねがいしますねっ……!」


ププレ=フレン=リーン「ふん……解ったわよ、ダリルおじちゃん……。ダリルおじちゃんもあまり根詰めすぎちゃ駄目だからね、ほら、はやくいってよ!!クラスタお姉ちゃんを頼んだよ!(ダリルに声をかけられれば、あのルキフの一幕を思い出す。自身が転移を即座に起動させなかったら、イーリィは間に合ったかも知れないと考えると言葉が詰まりそうになって、思わずぶっきらぼうに背中を押して)」


クロ「アディシェス、レオスタッドを殺す気だったお前がついてくるんっスか?まさか、その場のどさくさに紛れてレオスタッドを消す気じゃないっスよね?(っと、疑いの視線を向け)」


ダリル「言われるまでもないッッッ!!!!(自身を散々煽った男の声に返す様に男は声を張り上げれば)感謝する、ププレ。」


クラスタ「えっ……あっ……(ターニャから言葉を紡がれれば、ハッとする。眼前には心配そうなターニャの顔がある)ターニャ、何を言ってるのかね。ボクは何も辛くないさ。ありがとう。えっと、その……みんな友達だもんね?(ぐるぐると回る思考の最中。ターニャやクロの言葉に笑みを浮かべながら駆け出す)頑張ろう」


アディシェス=フレン=リーン「無論、そのつもりだ!――止めたいのなら、力ずくで来ると良い、クロ!競争だ!(なんの悪びれもなく、駆け出しながらも、獣頭種の男性へと首肯してみせ)」


クロ「こいつ堂々と……、殺ろうとしても止めてやるから覚悟しろっス――っ!!(っと、こちらも堂々と返答を返し、レオスタッドとシビラの元へと駆け出した)」


ダリル「本当に減らず口が減らない野郎だ………ッッッ!!!!!(そう嬉々と言う男を止めるがごとく同じく駆け出せば)」


コルタナの炉「現状はすべて把握していないけど、シビラは救けないと――……ターニャ、気合を入れなさいよ。私のマナ、ありがたく使わせてあげるわ。」


クロ「(クラスタぎこちない態度と返答に、近くにいたターニャに)オレッチも十分に気を遣って様子を見てるっスけど……、ターニャ、クラスタの様子を見ていてやってくれ、色々と様子がおかしい……(っと、小声で囁き)」


タニヤマン「もちろんだ。クロお前の心意気に応えよう(クロの言葉に力強く頷く)さて…俺も武装していくか」


コルタナの炉「行くわよ!!みんな!いつものオーランドのパーティなら、こんな事態へっちゃらでしょ!!(底抜けに呑気な掛け声をあげては、ターニャに携帯されたままで全員へと鼓舞し)」


タニヤマン「コルタナ…最初にお前に見せる魔法がこれでよかった…(ぼそりと聞こえないほどの声量で呟けば)」


ターニャ「誰も傷つけないショーのようなものだが…見ていてくれ……──シェアッ!!(言えば懐から紫色に輝くマナ結晶を取り出す。クズ石を集め繋ぎ合わせただけの粗雑な代物だ。そのがらくたが虹色の光を放てば)」


ターニャ「(虹色の輝きを振り払えば白銀の装衣に身を包んでいる。お得意の早着替えだ。光と音で誤魔化してるだけ。だがそれでいい。笑ってくれたらそれでいい。キミに見せる魔法はこういうのでいい)この装衣こそ…俺の武装だ。お前たちと並び立つための力だ。……さぁ行くぞ!!(コルタナの炉を魔法で自らのそばに浮かせ最高速度で飛び立たんと)」


コルタナの炉「みぎゃーーーーー!!?なんなの、あんたっ、どんどん人間離れしてない!?(虹色の光が瞬けば、結晶のなかで瞠目したようにする。あのエリダヌスの闘技場で見せた簡易的な全属性の魔術の想起させる瞬きに頬を和らげ)ま、まぁ、悪くないんじゃない……元がいいからね、あんた……(ふーん、と視線をそらして満更でもない様子で応えては戦場へと)」


タニヤマン「うん知ってる(元がいいという一言だけをくみ取りアホなことを宣えば)」


コルタナの炉「さあ、行くわよ!!ターニャ!!あんたの成長見といてあげるわ!」

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