第4話 1章エピローグ

 【祝星歴719年――北方大陸九ノ月/夕昏月】


【北方大陸の一角、既に心胆から凍えるほどの冷涼たる風が走る大陸の奥深い森に一台の馬車が珍しくも所狭しと客を載せて歩を進めていた。外気が一弾と冷気を孕むのとは対象的に、場所の内部には熱気が渦巻いている。】


【他でもなく、つい先刻馬車を襲撃した魔物をモノの数瞬で屠ってしまう冒険者との相席なのだから、乗り合わせた客らは堪らない。そも――人口分布的に冒険者を含め来訪者の少ない北方大陸は、外部の人間を珍しがる気があった。】


馬車主「ウチらが雇った連中が出るまでもなくけりを付けるなんて、兄さん、中央じゃ少しは名の通った冒険者じゃないのかい。――この時期、整備された街道で魔物と鉢合わせるなんて珍しいんだけどねぇ。いや、助かったよ――……」


女の子「ホント!剣術も魔法も使えるなんて、おとぎ話の勇者サマみたいっ!!――ねぇ?お兄ちゃん、これからまた何処に行くの?」


年若い男性「――……剣も魔法も使える冒険者はそう珍しくないよ。ほら、さっき外に出ていた時に咲いていたユキリンドウで編んだ花飾りだ、君にあげよう。(傍らの少女の言葉を咀嚼するよう緩く頷いてみせる。年若い少年にしては幾分か落ち着き払った語調で精微な花飾りを手渡せば、掌を少女の頭へと軽く載せ)」


年若い男性「――……僕はね、会わないといけない人がいるんだ。」


【次回へ続く】

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